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亜鉛
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トタン
ふりがな文庫
“
亜鉛
(
トタン
)” の例文
旧字:
亞鉛
窓の外は隣家との境の
亜鉛
(
トタン
)
塀で、塀の上に伸び出てる桜の梢が見えていた。直接の日光が射さないせいか、室の空気が底冷たかった。
白血球
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
煤
(
すす
)
けた破れた障子と、外側に
廻
(
めぐ
)
らした
亜鉛
(
トタン
)
の垣との間はわずかに三尺ばかりしかなかった。女の苦しみ悶える声が
途
(
みち
)
の上に聞えた。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
亜鉛
(
トタン
)
屋根を抜けて真赤な焔の幕が舞い下りたと思った
刹那
(
せつな
)
、砲身も兵も建物も、がーんばりばりと大空に吹きあげられてしまったから。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
荷物部屋らしい
室
(
へや
)
の前に来ると、ここばかりは他の
室
(
へや
)
と違って、壁が
亜鉛
(
トタン
)
張りになっていて、やはり
亜鉛
(
トタン
)
張りの頑丈な
扉
(
ドア
)
が付いている。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この現実の灰色の
亜鉛
(
トタン
)
屋根ばかりの、それでいて尖った旧式の
装飾
(
かざり
)
頭をつけた棟の連続、汽船の煤煙、薄ら寒い輝かぬ海港、雲の群れて曇った空
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
はかないその一鉢さえ、
亜鉛
(
トタン
)
屋根の景色を背景にしては、毎朝開く花の色に相当深い愛着を持ったのであった。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
宗助は次の間にある
亜鉛
(
トタン
)
の落しのついた四角な
火鉢
(
ひばち
)
や、黄な安っぽい色をした
真鍮
(
しんちゅう
)
の
薬鑵
(
やかん
)
や、古びた流しの
傍
(
そば
)
に置かれた新らし過ぎる
手桶
(
ておけ
)
を眺めて、
門
(
かど
)
へ出た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
亜鉛
(
トタン
)
の板敷きに、べったり坐っているお銀は、少しずつ性がついて来た。笹村はじきに外へ連れ出した。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
忽ち新見の台所の炊事場の上に葺いてある
亜鉛
(
トタン
)
屋根の上を走る音がする。子供等はその方へ皆走つて行く。栄一の所へ飛び込んで来たものがある。それは林であつた。
死線を越えて:01 死線を越えて
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
わたくしは人に道をきく
煩
(
わずら
)
いもなく、構内の水溜りをまたぎまたぎ灯の下をくぐると、
家
(
いえ
)
と
亜鉛
(
トタン
)
の
羽目
(
はめ
)
とに
挟
(
はさ
)
まれた三尺幅くらいの路地で、右手はすぐ行止りであるが
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しまいには
亜鉛
(
トタン
)
の板で張った
四角
(
しかく
)
の箱を、カンカラといってまた背負いあるくようになっている。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
道を挟んで、牡丹と相向う処に、
亜鉛
(
トタン
)
と
柿
(
こけら
)
の継はぎなのが、ともに腐れ、屋根が落ち、柱の倒れた、以前掛茶屋か、
中食
(
ちゅうじき
)
であったらしい伏屋の
残骸
(
ざんがい
)
が、
蓬
(
よもぎ
)
の
裡
(
なか
)
にのめっていた。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
本所
(
ほんじょ
)
の寿座ができたのもやはりそのころのことだった。僕はある日の暮れがた、ある小学校の先輩と元町通りを
眺
(
なが
)
めていた。すると
亜鉛
(
トタン
)
の
海鼠板
(
なまこいた
)
を積んだ荷車が何台も通って行った。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
亜鉛
(
トタン
)
で作つた一人寝の
寝台
(
ねだい
)
を一つ据ゑた前に一脚の椅子と鏡とが備へてある。窓は
唯
(
た
)
だ一つ
寝台
(
ねだい
)
の上の
矮
(
ひく
)
い天井に附けられたばかりで、寝ながら
其
(
その
)
窓を
開
(
あ
)
けて空気を入れられるやうになつて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
私は猶予なく三尺ばかりの
亜鉛
(
トタン
)
壁をヒラリと飛び越すと、
恰
(
あたか
)
も係りの者であるかのように落ち着いた態度で、馬をいじり初めた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
歪形
(
いびつ
)
のペシャンコの
亜鉛
(
トタン
)
の洗面器が一つ放ったらかしで、
豆電灯
(
まめでんき
)
が
半熟
(
はんう
)
れの
鬼灯
(
ほおずき
)
そのまま、それも黄色い線だけがWに明ってるだけだから驚いた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
半
(
なか
)
ばやりかかった漆喰の
床
(
ゆか
)
と、チョコレート色の壁と、
亜鉛
(
トタン
)
板を張った天井と、簡単な鉄の
肋材
(
ろくざい
)
と、電灯と、たったそれだけの集った場所に過ぎない。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
陰惨な鼠色の
隈
(
くま
)
を取った
可恐
(
おそろし
)
い面のようで、家々の棟は、瓦の
牙
(
きば
)
を噛み、歯を重ねた、その上に
二処
(
ふたところ
)
、
三処
(
みところ
)
、
赤煉瓦
(
あかれんが
)
の軒と、
亜鉛
(
トタン
)
屋根の
引剥
(
ひっぺがし
)
が、高い空に、
赫
(
かっ
)
と赤い歯茎を
剥
(
む
)
いた
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
江東橋
(
かうとうばし
)
を渡つた向うもやはりバラツクばかりである。僕は円タクの窓越しに
赤錆
(
あかさび
)
をふいた
亜鉛
(
トタン
)
屋根だのペンキ塗りの
板目
(
はめ
)
だのを見ながら、確か明治四十三年にあつた
大水
(
おほみづ
)
のことを思ひ出した。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
厩
(
うまや
)
の処へ行って、
亜鉛
(
トタン
)
の壁を飛び越して中に這入って、馬の顔を撫でながら錠剤にした薬をお遣りになりました。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ああしかし、この恐るべき攻城砲が
亜鉛
(
トタン
)
屋根の下に隠されているなんてことを、誰が知っているだろうか。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
(小さい藍色の毛虫が黄色な花粉にまみれて冷めたい
亜鉛
(
トタン
)
のベンチに匐つてゐる…………)
桐の花とカステラ
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
料理
旅籠
(
はたご
)
は、
古家
(
ふるいえ
)
の
甍
(
いらか
)
を黒く、
亜鉛
(
トタン
)
屋根が三面に
薄
(
うっす
)
りと光って、あらぬ月の影を宿したように見えながら、
縁
(
えん
)
も
庇
(
ひさし
)
も、すぐあの蛇のような土橋に、庭に吸われて、小さな藤棚の
遁
(
に
)
げようとする方へ
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
亜鉛
(
トタン
)
張りの
家
(
うち
)
に這入ったが、母親はまだ睡っていたらしく、二人とも直ぐに外へ出て来た。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
灰色、灰色、灰、灰、灰、
亜鉛
(
トタン
)
、亜鉛、亜鉛
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
タッタ今通り抜けて来た枯木林の向うに透いて見える自分の家の
亜鉛
(
トタン
)
屋根を振り返った。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
亜
常用漢字
中学
部首:⼆
7画
鉛
常用漢字
中学
部首:⾦
13画
“亜鉛”で始まる語句
亜鉛葺
亜鉛板
亜鉛塀
亜鉛屋根
亜鉛張
亜鉛盥
亜鉛華
亜鉛鍍金