いわ)” の例文
イヽエくちにはいわぬけれど本統だよ、来てお泊りな、エ、お前今夜もあすの晩も大丈夫、イエ月の中に二三度は家を開るよ横浜へ行てサ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そのとき歌ちゃんといわれた芸妓は貞之進の方を向いて、あなたにも上ましょうかといったこそ幸い、飛附たいほど貰いたかったがそれも手が出ない。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
知れた事お辰が。誰と。冗談は置玉おきたまえ。あなたならで誰とゝいわれてカッと赤面し、乾きたる舌早く、御亭主こそ冗談は置玉おきたまえ、私約束したるおぼえなし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また口実にいわく、家に余財なきにあらず、身に余暇なきにあらざれども、如何いかんせん、才学を以て人を教うるに足るなし、子を学校に託するは身に才なきがためなりと。
教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かつて象山師に聞くことあり、いわく、交易は可なり交易は不可なり、余曰く、国力強盛にて外夷を駕馭がぎょするに余らば、居交易もまた可なり、いわんや出交易をや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
当家こちらのお弟子さんが危篤ゆえしらせるといわれ、妻女はさてはそれゆえ姿をあらわしたかと一層いっそう不便ふびんに思い、その使つかいともに病院へ車をとばしたがう間にあわず、彼は死んで横倒よこたわっていたのである
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
いわく何ぞ下り去らざると、山遂に珍重してれんかかげて出で、外面の黒きを見て、卻回きゃっかいして云く、門外黒しと。潭遂に紙燭を点じて山に度与どよせむとす。山接せむとするにあたって潭便すなわ吹滅ふきけす。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
会計ノ吏申稟しんひんシテいわク。およソ遠国ニ赴任スル者日ニ行クコト十里ニシテソノ地ニ到レバ則三十日以内ニヲ賜フノ例ナリ。コノ行ヤ生路ニシテカツ連雨泥濘ヲ以テ従者困憊こんぱいシ程限ヲ破ルコト二日ナリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
座蒲団火鉢茶菓それから手を突てお肴はと尋ねるに、袂の巻烟草を出しかけて、さて何といったものかと躊躇ためらって居ると、見繕いましょうかといわれたので
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
しいきくでもなけれど此儘このまま別れては何とやら仏作って魂入れずと云う様な者、話してよき事ならばきいた上でどうなりと有丈あるたけの力喜んで尽しましょうといわれておたつ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
故にいわく、多妻多男の法は今世こんせいを挙げて今人こんじん玩弄物がんろうぶつに供するの覚悟なれば可なりといえども、天下を万々歳の天下として今人をして後世に責任あらしめんとするときは
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いわれて倉子は凡そ一分間が程も其青きまなこげ目科の顔を見詰るのみなりしが
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
それは幽霊がいったのだろうともいわれず、右の鮨を残らず引受ひきうけ、近所へ配って回向えこうをしてやったそうだが、配る家が一軒も過不足なく、その数通りであったと云うは一寸ちょっと変っている怪談であろう。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
蘇東坡そとうばいわク、物薄クシテ情厚シト。コレ会ノ準トナス所以ナリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
イヤしからぬ野暮やぼいわるゝは都の御方おかたにも似ぬ、今時の若者わかいものがそれではならぬ、さりとては百両投出なげだして七蔵にグッともわせなかったさばき方と違っておぼこな事
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
冷かなるゆえん温かなるゆえんを我心で推測るに、何とも云えぬ気持がして、それで「あら儂のではお厭なの」といわれた詞が、ほとんど只の詞ではないように思われる。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
ある人いわく、父母の至情、たれかその子の上達を好まざる者あらんや、その人物たらんを欲し、その学者たらんを願い、ついに事実においてしからざるは、父母のこれを欲せざるにあらず
教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いったがその時は別にあやしいとも思わず、それは結構だ早く二階へ上っておいわれ当人が二階へ上って行く後姿うしろすがたを認めた頃、ドンドンと門を叩く者がある、下女をおこしてきかせるとこれは病院の使つかい
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
その口実にいわく、内外多用なるが故に子を教うるのいとまなしと。内外の用とは何事を指していうか。官の用か、商売の用か。その用のあたいは子を養教するの用に比較して綿密に軽重を量りたるか。
教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)