のっ)” の例文
旧字:
私は風邪を押していたので段々と疲労を覚えて困っていると、この日路傍に馬方がいて、『帰り馬で安いからのって下さい。』と勧めた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
その帆前船にのって太平海を渡るのであるから、それは/\毎日の暴風で、艀船はしけぶね四艘しそうあったが激浪げきろうめに二艘取られて仕舞しまうた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それにわしゃア馬が誠にきれえだ、たまには随分小荷駄こにだのっかって、草臥くたびれ休めに一里や二里乗る事もあるが、それでせえ嫌えだ、矢張やっぱり自分で歩く方がいだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで太平洋汽船会社の別の船に乗替えてパナマに行って蒸汽車に乗てあの地峡をえて向側に出てまた船にのっ丁度ちょうど三月十九日にニューヨークに着き……
咸臨丸その他 (新字新仮名) / 服部之総(著)
碾臼ひきうすの様に頑固で逞しい四対よんついの聯結主働輪の上に、まるで妊婦みもちおんなのオナカみたいな太ったかまのっけその又上に茶釜の様な煙突や、福助頭の様な蒸汽貯蔵鑵ドオムを頂いた
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
主人が酒道楽や女道楽にふけごとき人道以外の悪徳は別にしてちょいと二、三日の休暇に温泉へ行くといっても主人一人だ。遊覧汽車へのって往復するのも大概主人ばかりが多い。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
葉山森戸などへ三崎の方から帰ります、この辺のお百姓や、漁師たち、顔を知ったものが、途中から、のっけてくらっせえ、明いてる船じゃ、と渡場わたしばでも船つきでもござりませぬ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若冲の図は大抵精緻せいちな彩色ものが多いが、この鶴は世間に気兼きがねなしの一筆ひとふでがきで、一本足ですらりと立った上に、卵形たまごなりの胴がふわっとのっかっている様子は、はなはだ吾意わがいを得て、飄逸ひょういつおもむき
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬関より乗船れから船場屋寿久右衛門せんばやすぐえもんの処からのった船には、三月の事で皆上方かみがた見物、夫れは/\種々しゅじゅ様々な奴が乗て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
且つ頼母たのもしそうに、じっと見ながら、時々思出したように、隣の椅子の上に愛らしくのっかかった、かすりで揃の、あわせと筒袖の羽織を着せた、四ツばかりの男のに、極めて上手な
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬「さアのっかってくんなせえ、山道だから荷鞍へしっかりとつらまって、えゝかえ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
夜十二時すぎでもあったか、難波橋なにわばしの上に来たら、下流かわしもの方で茶船ちゃぶねのってジャラ/\三味線を鳴らして騒いで居る奴がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
中へ何を入れたか、だふりとして、ずしりと重量おもみあぶまして、筵の上に仇光あだびかりの陰気な光沢つやを持った鼠色のその革鞄には、以来、大海鼠おおなまこに手が生えて胸へのっかかる夢を見てうなされた。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬「ばアさま、お茶ア一杯いっぺえくんねえ、今の、お客を一人新高野しんこうやまでのっけて来た」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一、人の世を渡るはなお舟にのって海を渡るがごとし。舟中の人もとより舟と共に運動をともにすといえども、ややもすればみずから運動の遅速ちそく方向に心付こころづかざること多し。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あの頭の上へかごか何かのっけて売って歩くのだろう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)