ぼら)” の例文
皎々こうこうとして、夏も覚えぬ。夜ふけのつゝみを、一行は舟を捨てて、なまずと、ぼらとが、寺詣てらまいりをするさまに、しよぼ/\と辿たどつて帰つた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
船にはきっと腰蓑こしみのを着けた船頭がいて網を打った。いなだのぼらだのが水際まで来て跳ねおどる様が小さな彼の眼に白金しろがねのような光を与えた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
九鬼嘉隆くきよしたかという贅肉ぜいにくもなく骨じまりの慥乎しっかとした色のくろい男だ。いわゆる潮みがきにかけられた皮膚と生きのいいぼらみたいな眼をもって
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻君「それも美味しゅうございましょう。私どもではこの頃近所の家からよくイナやぼらきたのを貰います。その主人が投網とあみが好きでよくイナや鰡を ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし、お杉の来ているのを知らない二人も、お杉につれて、章魚たこや、緋鯉ひごいや、鮟鱇あんこうや、ぼらの満ちている槽を覗き覗き、だんだん花屋の方へ廻っていった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
十二時過ぎに便所に行かうと思うて廊下に出ると、ぼらを竝べたやうに看病人と附添婦で一杯になつて居て、細い道が足元の方にあけてあるが、歩いて行くのに余程困難であつた。
十一月初旬から江戸前で釣れるぼらについてみると一番分かる。十二月下旬になって産卵のため外洋へ出る途中の東京湾口で釣れたものは味が落ちる。それは腹に子を持ったからである。
季節の味 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
この青鱚あおぎす釣りともうしますのは、寛文のころ、五大力仁平ごだいりきにへいという人が釣ったのがはじめだとされているんでございまして、春の鮒の乗ッ込釣り、秋のぼらのしび釣り、冬のたなご釣りと加えて
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「……そんなせりふはいちにんまえの女の云うこった、それより三河屋と魚政へでもいって来な、さっき見たら活のいいぼらがあったっけ、あいつの酢味噌と、なにか焼き物に椀というところでいこう」
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ぼら黒鯛ちんのいを
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
鰺の味噌焼と申して背から庖丁ほうちょうを入れて骨をった跡へ唐辛子の混ざった味噌を詰めて串へさして焼くのもあります。イナもぼらもこうして食べられます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ふなぼらなど、潟魚かたうおをぴちゃぴちゃねさせながら売っているのと、おし合って……その茨蟹いばらがに薄暮方うすくれがたの焚火のように目についたものですから、つれのおんなども、家内と、もう一人
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
元来我々同族間では目刺めざしの頭でもぼらへそでも一番先に見付けたものがこれを食う権利があるものとなっている。もし相手がこの規約を守らなければ腕力に訴えていくらいのものだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まぐろのいすご、鱸の腹膜ふくまく、このわた、からすみ、蜂の子、鮭の生卵、ぼらへそ岩魚いわなの胃袋、河豚ふぐ白精はくせいなど、舌に溶け込むようなおいしい肴の味を想い出しては、小盃の縁をなめるのである。
蜻蛉返り (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
なんのためか深張傘ふかばりがさをさして、一度いちど、やすものうり肴屋さかなやへ、お總菜そうざいぼらひにたから。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お魚のグレーと申してたいとかすずきとかさばとかぼらとかかれいとか比良目ひらめとか川魚かわうおならばこいとかますとかやまめとかさけとかいうようなもので肉に膠分にかわぶんの多い種類を択びまして海魚うみうおならば背から開いて骨を抜いて塩胡椒を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さばを、さば三番叟さんばそう、とすてきに威勢ゐせいよくる、おや/\、初鰹はつがつをいきほひだよ。いわし五月ごぐわつしゆんとす。さし網鰯あみいわしとて、すなのまゝ、ざる盤臺はんだいにころがる。うそにあらず、さばぼらほどのおほきさなり。あたひやすし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぼら土蔵焼どぞうやき 冬 第二百八十六 さば船場煮せんばに
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ぼら饅頭焼まんじゅうやき 冬 第二百八十六 さば船場煮せんばに
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
○カラスミはぼらの子なり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)