頭髮かみ)” の例文
新字:頭髪
腰までしかない洗晒あらひざらしの筒袖つゝそで、同じ服裝なりの子供等と共に裸足はだしで歩く事は慣れたもので、頭髮かみの延びた時は父が手づからつて呉れるのであつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
日出雄少年ひでをせうねん鐵工てつこうとなるより、立派りつぱ海軍士官かいぐんしくわんとなる仕度したくをせねばならんよ。』と武村兵曹たけむらへいそうひざなる少年せうねん房々ふさ/″\した頭髮かみでやりつゝ、わたくしむか
「お駒ちやん。……ハヽヽヽ。可愛らしい名やなア。」と、京子は眞向まつかふから大きな聲を浴せて、綺麗に結つたお駒の頭髮かみと愛くるしい頸筋のあたりとを見た。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
十年以前自分が高等學校を退校される時分には白筋の制帽に衣服きものはかまの汚れたのを殊更自慢に着けて居た書生が、今ではいづれも頭髮かみを分け八字髯をはやして居る。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
針金はりがねのやうなをちらりとつた落葉おちばひとひら/\がけぶりともかるのぼつた。落葉おちばぐにしろはひつてさらいくつかにわかれて與吉よきち頭髮かみから卯平うへい白髮かみつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
頭髮かみは長く伸して、何時くしを入れたのか解らぬ位。其がひたひにおツかぶさツてゐるから、恰で鳥の巣だ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「わしもはあ、そんならなんぼたすかるかもれあんせんが、お内儀かみさんとこささうつてわけにもがねえで」と勘次かんじみだれた頭髮かみてゝびるやうな容子ようすをしていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
少女は一週間ばかり腹膜炎を病むで亡くなツたといふのであるから、左程衰弱もしてゐない。また肉もけてゐなかツた。濃い、綺麗な頭髮かみは無雜作につくねてあツて、眼はひたとつぶれてゐる。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
京子は憎々し氣にお駒の頭髮かみを見入つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おつぎもしをらしく俯向うつむいた。島田しまだうたおつぎの頭髮かみかるいランプにひかつた。おつぎはとく勘次かんじゆるされて未明みめい鬼怒川きぬがはわたしえて朋輩同志ほうばいどうしとも髮結かみゆひもとつたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)