頓着とんちやく)” の例文
『えゝ、つててよ!』とあいちやんがさけびました、この最後さいご言葉ことばには頓着とんちやくせずに。『それは植物しよくぶつだわ。ちつとも人間にんげんのやうな恰好かつかうをしちやなくつてよ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
元気げんきすずめは、そんなうた頓着とんちやくなしで、自分じぶんのお宿やども忘わすれたやうにゆきと一しよをどつてあるきます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
踊子をどりこかつしたのどには自分等じぶんらてるほこりかゝるのも頓着とんちやくなく只管ひたすらそれを佳味うまかんずるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一體父は、余り物事に頓着とんちやくせぬ、おつとりした、大まかな質でありながら、金といふ一段になると、體中の神經がピリ/\響を立てて働くかと思はれるばかり、遣口やりくち猛烈まうれつとなる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
偶然ぐうぜんにも弦月丸げんげつまるかゝ信號しんがうには頓着とんちやくなく、ずん/″\とその進航しんかうつゞけため、策略はかりごとやぶれた海賊船かいぞくせんは、いま手段しゆだんめぐらしつゝ、しきりにわがふねあと追及ついきふするのではあるまいか
剛さんは如何どうなすつたでせう、今夜こよひはお帰りの日取なんだが、今頃までお帰りないのは、大方おほかた此の雨でお泊りのでせう、お一人なら雨や雪に頓着とんちやくなさるひとぢやないけれど、お友達と御一所ごいつしよでは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
劉の方では、勿論そんな事には頓着とんちやくしない。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さわがす段不屆なり因て奉行所へ召連行めしつれゆくにより然樣さやう心得よと申し渡しければ彼の者大いに怒り我は嘉川主税之助かがはちからのすけが悴藤五郎なり町奉行所などへ相越あひこすべきものに非ずと云て種々さま/″\惡口あくこうなしけれども役人は頓着とんちやくなく其儘引立連歸つれかへりて白洲しらす引据ひきすゑ置き大岡殿の前へいで樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何方かと謂へば、父子の反目に就いて些とも頓着とんちやくしなかツたといふ方が適當てきたうだ。好く謂ツたら嚴正げんせい中立態度ちうりつないどで、あへて子爵の味方をするのでも無ければ、また周三に同情を寄せるでも無かツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)