つら)” の例文
の名句をつらねたから、始皇は之に動かされ、已に歸國の途中に在つた李斯を召還して、逐客の令を撤囘したことがある。
秦始皇帝 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
道を転じて静緒は雲帯橋うんたいきようの在るかたへ導けり。橋に出づれば正面の書院を望むべく、はや所狭ところせまきまで盃盤はいばんつらねたるも見えて、夫は席に着きゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ただ疑い思うところをつらねてさらに説の正確を他日に期したいまでである。発表が極めて曖昧なる態度であることは、大方諸賢の御容赦に与りたい。
「エタ」名義考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
あらたに監獄を出たるものが一醉飽を欲するは人の免れぬ情であらうが、名門鉅族の人は、美酒佳肴前につらなるも、のみ何とも思はざるが如くである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其法養の趣旨を述べるのが表白ヘウビヤクである。此も唱導と言ふが、中心は此処にない。唯、表白は祭文化、宴曲化し、美辞や警句をつらねるので、会衆に喜ばれた。
国事に奔走する憂国の志士の心事も——無論少数の除外はあるが——後世の伝記家が痛烈なる文字をつらねて形容する如き朝から晩まで真剣勝負のマジメなものではないであろう。
泰勝院殿は甲冑かっちゅう刀剣ゆみやりの類をつらねて御見せなされ、蒲生殿意外におぼされながら、一応御覧あり、さて実は茶器拝見致したく参上したる次第なりと申され、泰勝院殿御笑いなされ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
宗室そうしつくわいして、長夜ちやうやえんるにあたりては、金瓶きんべい銀榼ぎんかふ百餘ひやくよつらね、瑪瑙めなう酒盞しゆさん水晶すゐしやうはち瑠璃るりわん琥珀こはくさら、いづれもこうなる中國ちうごくいまかつてこれあらず、みな西域せいゐきよりもたらところ
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
懸茶屋かけぢゃやには絹被きぬかつぎの芋慈姑くわい串団子くしだんごつら栄螺さざえの壼焼などをもひさぐ。百眼売ひゃくまなこうりつけひげ蝶〻ちょうちょう花簪はなかんざし売風船売などあるいは屋台を据ゑあるいは立ちながらに売る。花見の客の雑沓狼藉ざっとうろうぜきは筆にも記しがたし。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一昨年(大正五年)十二月の『風俗』に、林若樹君が「不思議な薬品」てふ一文を出し、本邦現存最古の医書丹波たんば康頼の『医心方』から引きつらねた奇薬の名の内に、馬乳、白馬茎、狐と狗の陰茎あり。
(一) 孔子は子供の時、俎豆そとうつら礼容れいようを設けて遊んだ。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
とかくする盃盤はいばんつらねられたれど、満枝も貫一も三ばいを過し得ぬ下戸げこなり。女は清めし猪口ちよくいだして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
善言・美辞をつらねて、荘重な呪言の外形を整へ、遺漏なく言ひ誤りのない物となつたのは、此神の力だとする。此神を一に八意思金ヤゴヽロオモヒカネ神と言ふのも、さうした行き届いた発想を讃美しての名である。
蒲生殿参られ候に、泰勝院殿は甲冑かっちゅう刀剣弓鎗の類をつらねて御見せなされ、蒲生殿意外におぼされながら、一応御覧あり、さて実は茶器拝見致したく参上したる次第なりと申され、泰勝院殿御笑いなされ
やがて裁判長は被告に向かいて二、三の訊問ありけるのち、弁護士は渠のえんすすがんために、滔々とうとう数千言をつらねて、ほとんど余すところあらざりき。裁判長は事実を隠蔽いんぺいせざらんように白糸をさとせり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)