長虫ながむし)” の例文
旧字:長蟲
その頃洛中らくちゅうで評判だったのは、この御姫様ともう御一方、これは虫が大御好きで、長虫ながむしまでも御飼いになったと云う、不思議な御姫様がございました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ことがけを、うへはうへ、いゝ塩梅あんばいうねつた様子やうすが、とんだものにつていなり、およくらゐ胴中どうなか長虫ながむしがとおもふと、かしらくさかくしてつきあかりに歴然あり/\とそれ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あ、びっくりした。足の裏がぬるっとして滑りそうだったから、てっきり長虫ながむしだろうと思ったが……。」
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
長虫ながむし使いではございますが、長虫のようにいつまでも、執念深いところはなく、あの山影宗三郎様を、妾のためにお諦めなされ……アレ、つまらない、何を申すやら
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
江戸の生れで、下町で育ったお年という女中は、長虫ながむしときたら、もう、ひとたまりもない。かばうはずのやつが、お小夜の背中にくいついてまっ青になって慄えている始末。
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
キリキリ廻れば、紅白だんだら染めの独楽こまだ。のたうち廻れば、今度こそ断末魔の長虫ながむしだ。
火星の運河 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
庭の右の隅になった楓の老木の根方に一ぴきの蛇がにょろにょろとっているところであった。それは三尺近くもある青黒い中に粉のようなあかい斑点のある尻尾の切れた長虫ながむしであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たとえば阿波の鷲敷わじきで、「の口やき」と称し、この日長虫ながむしの入らぬ呪いとして、灰を家の周囲にいていたなども、他の地方で節分の日に行う蚊の口焼きという行事とやや似ている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さかしき長虫ながむし通力立つうりきだてらばもの
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たと這出はひだしたところでぬら/\とられてはおよそ五分間ふんかんぐらゐすまでにがあらうとおも長虫ながむしえたのでむことをわしまたした、途端とたん下腹したはら突張つツぱつてぞツと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小脇に抱えたは例のびく長虫ながむしが詰まっているのだろう。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やあ小賢こさかしき長虫ながむし通力立つうりきだて
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
いきかぬうち情無なさけな長虫ながむしみちつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)