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遁走
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とんそう
ふりがな文庫
“
遁走
(
とんそう
)” の例文
疑りもする、信じもする、信じようとし思いこもうとし、体当り、
遁走
(
とんそう
)
、まったく悪戦苦闘である。こんなにして、なぜ生きるんだ。
教祖の文学:――小林秀雄論――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
飛び廻る自動車も、忙しそうに歩く行人も、右往左往に
悲叫
(
ひきょう
)
遁走
(
とんそう
)
する、あらゆる生物の、混乱の姿ででもあるかのように取られた。
火と氷のシャスタ山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
これも僕の見かけた中に小さい雄の河童が一匹、雌の河童を追いかけていました。雌の河童は例のとおり、誘惑的
遁走
(
とんそう
)
をしているのです。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして僕の部屋にネコが入ってくると、間髪を入れず手近の孫の手をつかみ、ネコの頭をコツンと殴る。ネコはキャッと叫んで
遁走
(
とんそう
)
する。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
遁走
(
とんそう
)
曲でも、速歩舞踏曲でも、また、アダム、バッハ、プッチーニ、モーツァルト、マルシュネル、なんでも構わない。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
左右に
遁走
(
とんそう
)
する敵を見棄て、「いざ浜路殿!」と引っ抱えた。しっかり
縋
(
すが
)
る浜路の手、首にかかってグンニャリとなる。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いまは
見栄
(
みえ
)
もなく敗走していた池田方の士卒は、
志段味
(
しだみ
)
、
篠木
(
しのき
)
、
柏井
(
かしわい
)
——と
支離滅裂
(
しりめつれつ
)
になって、
遁走
(
とんそう
)
したが、
矢田川
(
やだがわ
)
を越え得たものは、みな助かった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
痒
(
かゆ
)
さあまりて遂に月賦の催促などして居られなくなるを以て、そこを
覘
(
ねら
)
ってこっちは雲を霞と
遁走
(
とんそう
)
するのである。
発明小僧
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
それがあたかも彼に
遁走
(
とんそう
)
することを故意に許したような追跡だったので、司教は一時あまり好意を持たなかった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しからば犯人ジャックが、それほど
遁走
(
とんそう
)
潜行に妙を得た超人間であったかというに、事実は正反対で、ただかれは、一個偉大なずぶの
素人
(
しろうと
)
にすぎなかった。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
一八九六年、六月のなかば、ロンドン博物館附属動物園の事務所に、日本猿の
遁走
(
とんそう
)
が報ぜられた。行方が知れぬのである。しかも、一匹でなかった。二匹である。
猿ヶ島
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は
卑弥呼
(
ひみこ
)
が
遁走
(
とんそう
)
した三日目の真昼に、森を脱け出た河原の岸で、馬の
嘶
(
いなな
)
きを聞きつけた。彼は
芒
(
すすき
)
を分けてその方へ近づくと、馬の傍で、足を洗っている不弥の女の姿が見えた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
猛犬にあいたるとき、右手の
拇指
(
おやゆび
)
より、
子
(
ね
)
、
丑
(
うし
)
、
寅
(
とら
)
、
卯
(
う
)
と唱えつつ順次に指を屈し、小指を口にてかみ、「寅の尾を踏んだ」と言うときは、いかなる猛犬も尾を巻きて
遁走
(
とんそう
)
するという。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
ぼくは
遁走
(
とんそう
)
をあきらめてかれらの命令どおりにした、数日前、ぼくらは
堤
(
つつみ
)
をさかのぼって茂林のなかに進んだ、とぼくらは、枝にひっかかったえたいの知れない
油布
(
あぶらぬの
)
でつくったらしい
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
市平もまた、田園
遁走
(
とんそう
)
までの四五年を、父親の後を引き継いでいたのであった。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「B国艦隊は小笠原島占領の考えなきもののごとく、南に向って
遁走
(
とんそう
)
せり。兵力は『
竜
(
ドラゴン
)
』以下約百五十隻なり。昭和遊撃隊は、ただちに追跡し、かれらの行動を監視(見はり)せんとす。」
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
そら逃げろ、持てるだけのものを持って
遁走
(
とんそう
)
しろ、他国ものには決して見つからぬあの裏山の間道に駈けこめ——かようなわけで、見るもぶざまな周章
狼狽
(
ろうばい
)
——そうら、いよいよ小船をおろした、と
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
ある時、これも内攻に
草臥
(
くたび
)
れた痴川が孤独からの野獣の狂躁で脱出してきて、麻油を誘い伊豆を誘い小笠原を誘い、とある山底の湯宿へ
遁走
(
とんそう
)
した。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
予は予自身に対して、名状し難き
憤怒
(
ふんぬ
)
を感ぜざるを得ず。その憤怒たるや、
恰
(
あたか
)
も一度
遁走
(
とんそう
)
せし兵士が、自己の
怯懦
(
けふだ
)
に対して感ずる
羞恥
(
しうち
)
の情に似たるが如し。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
藪
(
やぶ
)
も一つの足場であり、壁の一角も
肩墻
(
けんしょう
)
である。よるべき一軒の
破屋
(
あばらや
)
がないためにも、一個連隊が
遁走
(
とんそう
)
する。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そして、理解してることを証明するために、
喧嘩
(
けんか
)
腰でクリストフをながめながら、一つの
遁走
(
とんそう
)
曲を復吟した。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
他は
其場
(
そのば
)
より
遁走
(
とんそう
)
いたしました。これに対して○国人側も非常に怒り、復讐を誓って、唯今準備中であります。両国の外交問題は、
俄然
(
がぜん
)
険悪
(
けんあく
)
となりました。以上。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
義昭は、またあたふたと、紀州方面へ
遁走
(
とんそう
)
した。そして、熊野の僧や、
雑賀
(
さいか
)
の徒を、しきりと
煽動
(
せんどう
)
して
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その夜、歌舞伎座から、
遁走
(
とんそう
)
して、まる一年ぶりのひさごやでお酒を呑みビールを呑みお酒を呑み、またビールを呑み、二十個ほどの五十銭銀貨を湯水の如くに消費した。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何もかも自分の判断で割切りそして行動していると信じていたのだが、それもあやふやなもののように思われた。判っていることは、自分が今
原隊
(
げんたい
)
を離れて
遁走
(
とんそう
)
しているという事実だけであった。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そして庭の奥から、眼に見えない別邸の半ば開いてる窓から、ヨハン・セバスチアン・バッハの変ホ短調の
遁走
(
とんそう
)
曲を奏してるハーモニュームの響きが聞こえてきた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
午
(
ひる
)
まえに、あらかじめ誘降状を送っておいた
山岡美作守
(
やまおかみまさかのかみ
)
の兄弟はその使者を斬り、城を自爆し、瀬田大橋にも火を放って、家中とともに甲賀の山中へ
遁走
(
とんそう
)
していた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わが名はレギオン、我ら多きが故なりなどと
嘯
(
うそぶ
)
いて、キリストに叱られ、あわてて二千匹の豚の群に乗りうつり転げる如く
遁走
(
とんそう
)
し、崖から落ちて海に溺れたのも、こいつらである。
誰
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
忍術使いも忍びこませたが、切支丹の用語や作法を知らないので
忽
(
たちま
)
ち見破られて
遁走
(
とんそう
)
したという。智恵伊豆や甲賀者といえども甚しく敵を知らないウラミはどこまでも附きまとっていた。
安吾史譚:01 天草四郎
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
だが第三の惨劇で、いよいよこれ迄の
犯跡
(
はんせき
)
が
曝露
(
ばくろ
)
しそうになったのをみてとった彼等二人は、朝の太陽が東の地平線から顔を出す前にこのカフェから手をたづさえて
遁走
(
とんそう
)
してしまったのである。
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
数千匹の
黄蟹
(
きがに
)
が何者かに追われて必死に逃げまわるように、私の
酔眼
(
すいがん
)
にうつって来た。今宵は蟹のお祭りだ。今夜は風の宴だ。
遁走
(
とんそう
)
する蟹の大群の後方から、風がひょうひょうと音立てて吹きつけた。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
で結局二つの方法のうちどちらも、その
遁走
(
とんそう
)
は不可能であった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
海口
(
うみぐち
)
へ着くやいな、しぶきにぬれた
蓑笠
(
みのかさ
)
とともに、筏をすて、浜べづたいに、
蒲原
(
かんばら
)
の町へはいったすがたをみると、これぞまえの夜、鼻かけ
卜斎
(
ぼくさい
)
の屋敷から
遁走
(
とんそう
)
した
菊池半助
(
きくちはんすけ
)
。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「もの思う
葦
(
あし
)
。」と言い、「碧眼托鉢。」と言うも、これは、
遁走
(
とんそう
)
の一方便にすぎないのであって、作家たる男が、毎月、毎月、このような断片の言葉を吐き、吐きためているというのは
碧眼托鉢:――馬をさへ眺むる雪の朝かな――
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「敗北
遁走
(
とんそう
)
というわけかい」
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
曹仁、曹純、曹洪など、みな自分らの南郡へ向って逃げたが、途中、呉の
甘寧
(
かんねい
)
が道をさえぎっていたので、城内へ入ることもできず、遂に、
襄陽
(
じょうよう
)
方面へ
遁走
(
とんそう
)
するのほかなかった。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
全体で僅か七アルペントばかりにしかならぬ自分の地処の管理を頼んでおいた小作人が、農具を奪って
遁走
(
とんそう
)
したことを訴え、且つ、妻子が困っているといけないから帰国してその始末を致したいと
『井伏鱒二選集』後記
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
おおむね、
埋伏
(
まいふく
)
、視野、
遁走
(
とんそう
)
に都合のよい山岳をうしろにしている。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“遁走”の意味
《名詞》
遁走(とんそう)
逃げて走ること。逃走。
(出典:Wiktionary)
遁
漢検準1級
部首:⾡
13画
走
常用漢字
小2
部首:⾛
7画
“遁走”で始まる語句
遁走曲
遁走中
遁走法