かほ)” の例文
これは意志いしぢゃ、おもんじておくりゃらば、顏色がんしょくうるはしうし、そのむづかしいかほめておくりゃれ。祝宴最中いはひもなか不似合ふにあひぢゃわい。
小男は我を顧みて、氣輕なる女なり、されどかほは醜からず、さは思ひ給はずやといふに、我はまことにおほせの如く、めでたき姿なりと讚めたゝへき。
ですから、ただ呆気あつけにとられまして、ただソーツと、父のかほを見上げましたが、父は嫌といふなら、いつてみよといはぬばかりの、意気込みでした。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
戸棚とだな押入おしいれほか捜さざる処もあらざりしに、つひあるじ見出みいださざる老婢は希有けうなるかほして又子亭はなれ入来いりきたれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此が、かほつきを替へて、大峰山上でする御嶽精進にもなつた。此は、平安中期にも既に見えた事だ。とりわけ、新達シンダチなど俗に謂ふ初登山の若者は、先達から苦しめられた。
「まあお珍らしいこと。」お糸さんは私のかほを見るなりさう云つた。本統に久しぶりであつた。どうした気の向き様か草香君と一緒に半年振り程に「桔梗」へ行つたのである。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
江戸書画角力は相識のかほもあり、此蕣角力あさがほすまふは名のりを見てもしらぬ花にてをかしからず候。前年御話申候や、わたくし家に久しく漳州しやうしうだねの牽牛花けんぎうくわあり。もと長崎土宜みやげに人がくれ候。卌年前也。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
虎のかほくらひ飽きたるさましてぞ愚かなりしかその眼とろめつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
焦燥が青黒いかほをもたげた。
傾ける殿堂 (新字旧仮名) / 上里春生(著)
したりかほなる猫の子よ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
車上には山賊四人を縛して載せたるが、その眼は猛獸の如く、炯々けい/\として人を射る。瞳黒くかほ美しきカラブリア人あり。銃を負ひて、車の兩邊を騎行せり。
それとも、まり手輕てがるったとおおもひなさるやうならば、わざこはかほをして、にくさうにいやはう、たとひお言寄いひよりなされても。さもなくば、世界せかいかけていやとははぬ。
さてはと推せし胸の内は瞋恚しんいに燃えて、可憎につくき人のく出でよかし、如何いかなるかほして我を見んとらん、と焦心せきごころに待つ間のいとどしうひさしかりしに、貫一はなかなかで来ずして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そのかほの向いた方の少し先の畑で、子供が一人しやがんで居たがやがて女の方へ走り出した。夕日はもう裏手の山へかくれて居た。向の山は頂が少しあかるいばかり、全体が黒ずんで来た。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
そのかほの向いた方の少し先の畑で、子供が一人しやがんで居たがやがて女の方へ走り出した。夕日はもう裏手の山へかくれて居た。向の山は頂が少しあかるいばかり、全體が黒ずんで來た。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
青臭いどころか、お前、天狗巌てんぐいわだ、七不思議だと云ふ者が有る、可恐おそろしい山の中に違無いぢやないか。そこへ彷徨のそのそひまさうなかほをして唯一箇たつたひとりつて来るなんぞは、能々よくよく間抜まぬけと思はなけりやならんよ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)