おしえ)” の例文
さりながら父の戒め、おりおり桜川町のうちに帰りて聞く母のおしえはここと、けなげにもなお攻城砲の前に陣取りて、日また日を忍びて過ぎぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
老人たるや肉喰と絹服けんふくとにあらずんば養うに足らずとは、古きよりおしえたり。実に然り。喰物は歯にて噛む事能わず。着類も重きに耐えざるなり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
この我がおしえおぼえて決してそむくことなかれとねんごろにいましめ諭して現世このよりければ、兄弟共に父の遺訓にしたがひて互ひに助けあひつつ安楽に日をくらしけり。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
女子の父母、我おしえなきことをいわずして舅夫の悪きことのみ思ふは誤なり。是皆女子の親の教なきゆゑなり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
思うに、彼らの学問は、机というものを知らず、ただ、生死の道の生命を手鑑てかがみとし、人間世態の現実をおしえかえりみ、天地自然を師となして体得されたものである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう品物から教えられるおしえは、質素が如何に美しさの大きな原因となり得るかということであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
さてその抽斎が生れて来た境界きょうがいはどうであるか。允成のにわおしえが信頼するに足るものであったことは、言をたぬであろう。オロスコピイは人の生れた時の星象せいしょうを観測する。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
十六夜日記いざよいにっき』『夜の鶴』『庭のおしえ』などがこのとき書かれたことは人の知る通りである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
あの『十六夜日記いざよいにっき』で名高い阿仏尼あぶつにが東国へ下る時に、そのむすめ紀内侍きのないしのこしたといわれる「にわおしえ」一名「乳母の文」にも、「庭の草はけづれども絶えぬものにて候ぞかし」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
唯迷惑の外なし、ここに火光、河の向に当つて、奇特を見るの間郎従四人たちまち死亡す、しかるに忠常彼の霊のおしえに依つて、恩賜の御剣をくだんの河に投入れ、命を全うして帰参すといふ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
言葉を換えて言えば反省、自己の過を知ること、己の短所を自覚すること、これがおおいに伸びんとする前に大に屈せねばならぬというおしえかなうことで、これがなければ国民は慢心するのみである。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かれは、とうとおしえを得たと思い、ひざまずいて拝んだ。いや、こんなふうにして、いちいち概念的な解釈をつけてみなければ気の済まないところに、俺の弱点があるのだ、と、渠は、もう一度思い直した。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
テゲアの地、敵に攻められた時、その王女ステロペ、ヘラクレスのおしえにより、自ら後ろ向いてメズサの前髪を敵に向って城壁上に三度さし上げると、敵極めて怖れ、ことごとく潰走したという。
あに頑愚無知とならざるを得んや。しかるにその親たる者、すでにその職を尽し、これをおしえる能わずして、その児の成長するにしたがい不良不知なるに至りては、その罪かえっておのれにあるを知らず。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
天より我に与へ給へる家のまずしきは我仕合しあわせのあしき故なりと思ひ、一度ひとたび嫁しては其家をいでざるを女の道とする事、いにしえ聖人のおしえ也。若し女の道に背き、去らるゝ時は一生の恥也。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
またわれわれが『論語』や『聖書』を読み万世不朽ふきゅうの金言と称せらるる教訓にれても、うまいことをいっている、このおしえたれそれに聞かしてやりたいものだと、おのれの身にあてはめて考えるよりは
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それいかりののしりやまざれば約々せわ/\しく腹立はらたつことおおくして家の内静ならず。悪しき事あらば折々言教いいおしえて誤をなおすべし。少のあやまちこらえいかるべからず、心の内にはあわれみほかには行規を堅くおしえて怠らぬ様に使ふべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)