蜂蜜はちみつ)” の例文
そういうバターと蜂蜜はちみつとをねったような本が沢山あって、それらを自由に読むことが出来れば、子供たちはたいへん仕合わせである。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
善光寺平には、又小布施をぶせと呼ぶ、栗の名所があります。私があるとき、町の店屋に入つて、蜂蜜はちみつを買はうとした事がありました。
果物の木の在所 (新字旧仮名) / 津村信夫(著)
閼伽あかの具はことに小さく作られてあって、白玉はくぎょく青玉せいぎょくで蓮の花の形にした幾つかの小香炉こうろには蜂蜜はちみつの甘い香を退けた荷葉香かようこうべられてある。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
すわり方にゆるぎのない頸つき、昔のように漂渺とした顔の唇には蜂蜜はちみつほどの甘みのある片笑いで、やや尻下りの大きな眼を正眼に煙らせて来た。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
内障眼というがたい眼病だ、僕も再度薬を盛りましたが治りません、真珠しんじゅ麝香じゃこう辰砂しんしゃ竜脳りゅうのう蜂蜜はちみつに練って付ければ宜しいが、それは金が掛るから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんでもないことだよ。それは、たまかたかたのあなのまわりにたくさん蜂蜜はちみつをぬっておいて、絹糸きぬいとありを一ぴきゆわいつけて、べつあなかられてやるのです。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「じゃあおれも一しょにいこう。そうだ、ついでに蜂蜜はちみつを持ってってやろうか。唇がひどくあれとったからな」
日めくり (新字新仮名) / 壺井栄(著)
手紙には新蔵しんぞう蜂蜜はちみつをくれたから、焼酎しょうちゅうを混ぜて、毎晩杯に一杯ずつ飲んでいるとある。新蔵は家の小作人で、毎年冬になると年貢米ねんぐまいを二十俵ずつ持ってくる。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつか蜂蜜はちみつが採れたといって、大きなかめに一杯、香ばしい匂いのする蜜を、下僕にかつがせて来て呉れた。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
少年は、ひまさえあれば、白い石の上に淡飴色うすあめいろ蜂蜜はちみつを垂らして、それでひるがおの花をいていた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
うへなうあま蜂蜜はちみつ旨過うますぎていやらしく、うてようといふにぶる。ぢゃによって、こひほどよう。ほどよいこひながつゞく、はやきにぐるはなほおそきにぐるがごとしぢゃ。
藍は藍がかりし雪の色(即ち明快なる藍)および空の黒さ(即ち濁りし藍)及び桃花とうかを照す月色げっしょく(即ち紅味を帯びたる藍)なり。黄色こうしょく蜂蜜はちみつの色(即ちあかる黄色きいろ)の如し。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やがて彼が馥郁ふくいくとかおる麦畑に通りかかり、蜂蜜はちみつの香を吸いこみながら見わたすと、うっとりするような期待が彼の心に忍びこんで、うまいホットケーキにバタをたっぷりつけ
「おい、君もやりたまへ。蜂蜜はちみつにほひもするから。」
黒ぶだう (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
きょうは蜂蜜はちみつをたべた。
胆石 (新字新仮名) / 中勘助(著)
それがナ貴君あなたのお眼は外障眼がいしょうがんと違い内障眼ないしょうがんと云ってがたい症ですから真珠しんじゅ麝香じゃこう竜脳りゅうのう真砂しんしゃ四味しみを細末にして、これを蜂蜜はちみつで練って付ける、これが宜しいが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
葡萄ぶどうと香料、砂糖と蜂蜜はちみつとは、パイやスープといっしょに並べられるのだ。
駅馬車 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)