蕎麥屋そばや)” の例文
新字:蕎麦屋
「變なことがありますよ、——あの町内の蕎麥屋そばやで訊くと、昨夜ゆうべお舟のところで、確かに蕎麥を三つ取つたと言ふんで——」
はまなべ、あをやぎの時節じせつでなし、鰌汁どぢやうじる可恐おそろしい、せい/″\門前もんぜんあたりの蕎麥屋そばやか、境内けいだい團子屋だんごやで、雜煮ざふにのぬきでびんごと正宗まさむねかんであらう。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると、この夏頃から、松公といふ、色白の若い蕎麥屋そばや出前でまへ口説くどき落して、かね(大工の名)の目を忍んで、チヨイ/\うちへ引張込むやうになつた。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
木曽路きそぢとほるもので、その蕎麥屋そばやらないものはないと、伯父をぢさんがとうさんたちはなしてれました。そこは蕎麥屋そばやともおもへないやうなうちでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
筋向うの大學の御用商人とかいふ男が醉拂つて細君を呶鳴る聲、器物を投げつける烈しい物音がひとしきり高かつた。暫らくすると支那蕎麥屋そばやの笛が聞えて來た。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
信州白骨しらほね温泉は乘鞍嶽北側の中腹、海拔五千尺ほどの處に在る。温泉宿が四軒、蕎麥屋そばやが二軒、荒物屋が一軒、合せて七軒だけでその山上の一部落をなしてをるのである。
くにも、蕎麥屋そばやはひるにも紋着もんつきだつたことがある、こゝだけでもはるあめ、また朧夜おぼろよ一時代いちじだい面影おもかげおもはれる。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くはしく言へば、進藤孫三郎の家を出て、左右に別れた二人は、和泉橋の先の柳森稻荷の蕎麥屋そばやののれんの中で、人知れず身裝みなりを變へたのを、さすがの曲者も氣が付かなかつたのでせう。
寢覺ねざめといふところには名高なだか蕎麥屋そばやがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
道理だうりで、そこらの地内ちない横町よこちやうはひつても、つきとほしのかうがいで、つまつて、羽子はねいてるのが、こゑけはしなかつた。割前勘定わりまへかんぢやうすなは蕎麥屋そばやだ。とつても、まつうちだ。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眺めたり、蕎麥屋そばやの前でクン/\鼻を鳴らしたり、お前の樣子は尋常ぢやないぜ
六四 寢覺ねざめ蕎麥屋そばや
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
第一だいいちこのいへは、むかし蕎麥屋そばやで、なつ三階さんがいのものほしでビールをませた時分じぶんから引續ひきつゞいた馴染なじみなのである。——座敷ざしきも、おもむきかはつたが、そのまゝ以前いぜんおもかげしのばれる。……めいぶつのがくがあるはずだ。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蕎麥屋そばやでも小料理屋でもいゝ、昨夜あたりお舟のところへ何か出前物を持込まなかつたか、持込んだ時、お舟と和助がたしかにゐたか、それを訊き出すんだ、——それから、酒屋も訊いて見るんだぜ