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芳醇
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ほうじゅん
ふりがな文庫
“
芳醇
(
ほうじゅん
)” の例文
妙子のように美妙な
芳醇
(
ほうじゅん
)
な、如何なる香料も及ばない匂いを、肌から発散する人間があろうとは、全く想像も及ばなかったことです。
新奇談クラブ:02 第二夜 匂う踊り子
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
軟かい飯粒を、一粒一粒つまみあげて、静かに味わって喜ぶほど、彼女のうちにはこまやかな、
芳醇
(
ほうじゅん
)
な情緒が
漲
(
みなぎ
)
っていたのである。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
芳醇
(
ほうじゅん
)
な
薫
(
かお
)
りは昼の無念を掻き消し、五臓に
沁
(
し
)
みてゆく快感は、再び彼を晴々とさせた。新九郎は
怖々
(
こわごわ
)
ながら、盃の数を重ねて
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
強烈にして
芳醇
(
ほうじゅん
)
なる蒸発性物質が名探偵の鼻口を刺戟したらしく、彼は大きなくしゃみと共に生還したのであった。
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何か
芳醇
(
ほうじゅん
)
な酒のしみと
葉巻煙草
(
シガー
)
とのにおいが、この男固有の膚のにおいででもあるように強く葉子の鼻をかすめた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
物いへば
唇
(
くちびる
)
寒きを知る国民たり。ヴェルハアレンを感奮せしめたる
生血
(
なまち
)
滴
(
したた
)
る羊の
美肉
(
びにく
)
と
芳醇
(
ほうじゅん
)
の葡萄酒と
逞
(
たくま
)
しき婦女の
画
(
え
)
も何かはせん。ああ余は浮世絵を愛す。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
このごろ彼の胸にはっきり映り出した母の澄みとおった愛と、ひさびさでよみがえった乳母の
芳醇
(
ほうじゅん
)
な愛とが、彼の夢の中で烈しく熔けあっていたからである。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
そこにおいて長老たちから
芳醇
(
ほうじゅん
)
なる葡萄酒が供せられ、各自
轎
(
かご
)
に乗駕してこの都会の貴族邸へ、賓客として
舁
(
か
)
かれてまいることが
誌
(
しる
)
されているのであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その
芳醇
(
ほうじゅん
)
な香気を
嗅
(
か
)
がされ、なみなみと盛った杯を見せられては、矢張私は飲まずにはいられない。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
芳醇
(
ほうじゅん
)
な酒の香、かしましいお祝いの言葉、蜘蛛の巣の様にからみつく五色のテープ、耳を聾する音楽の響、それらのものが、いつまでも頭にこびりついて離れなかった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
紅屋で振舞った
昨夜
(
ゆうべ
)
の酒を、八郎が地酒だ、と
冷評
(
さま
)
したのを
口惜
(
くやし
)
がって、——地酒のしかも「
剣
(
つるぎ
)
」と銘のある
芳醇
(
ほうじゅん
)
なのを、途中で買って、それを
角樽
(
つのだる
)
で下げていたのであるから。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何処
(
どこ
)
から渡って来た銘酒か、何ともいい難い
芳醇
(
ほうじゅん
)
さと甘さとを持った液体が、舌の先から咽喉の奥に——それから胸の中に、じっとりと溶け流れると、すぐに目先がチラチラする程
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
新鮮な色彩が眼に、
芳醇
(
ほうじゅん
)
な香が鼻に、ほろ苦い味が舌に
孰
(
いず
)
れも
魅力
(
みりょく
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にする。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして畑地の上には、大地の表皮を破って生命の
芳醇
(
ほうじゅん
)
な気が通り過ぎていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
すぐさまそれを
燗
(
かん
)
にしてもらってちびりちびり試むると、その酒の
芳醇
(
ほうじゅん
)
なこと、こんなところへ来て、こんないい酒を恵まれようとは全く予想外のことでしたから、道庵の魂が頂天に飛びました。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
諸洞の蛮王の中には、
芳醇
(
ほうじゅん
)
な酒にも飽き、熟れたる果実や獣肉にも飽き、余りに事なき生活に体をもて余している連中もある。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
物いへば
唇
(
くちびる
)
寒きを知る国民たり。ヴェルハアレンを感奮せしめたる
生血
(
なまち
)
滴
(
したた
)
る羊の
美肉
(
びにく
)
と
芳醇
(
ほうじゅん
)
の
葡萄酒
(
ぶどうしゅ
)
と
逞
(
たくま
)
しき婦女の
画
(
え
)
も何かはせん。ああ余は浮世絵を愛す。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
いや、
酔払
(
よっぱら
)
ったんです。これもこの酒の
芳醇
(
ほうじゅん
)
なる
故
(
ゆえ
)
です。そこで先生、酒の実験はこのくらいにして、お約束ですから、かねがねお願いしてありました毒瓦斯研究の指導を
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
西洋酒の
芳醇
(
ほうじゅん
)
な甘い酒の香が、まだ酔いからさめきらない事務長の身のまわりを毒々しい
靄
(
もや
)
となって取り巻いていた。放縦という事務長の
心
(
しん
)
の臓は、今不用心に開かれている。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ほとんど盲目的だとも思われるほどの
芳醇
(
ほうじゅん
)
な愛や、彼の父俊亮の、
聰明
(
そうめい
)
で、しかも
素朴
(
そぼく
)
さを失わない奥深い愛が、いつも彼の背後から彼を支えていてくれなかったならば、そして、また
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
もっとも、ほかの世間は、余りにも
紛
(
まぎ
)
れるものが多すぎた。
寛永
(
かんえい
)
元和
(
げんな
)
の戦国期にわかれを告げて六十年余、江戸の文化は、
芳醇
(
ほうじゅん
)
な
新酒
(
しんしゅ
)
のように
醗酵
(
はっこう
)
して来た。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつでも葉子の情熱を引っつかんでゆすぶり立てるような倉地特有の膚の
香
(
にお
)
い、
芳醇
(
ほうじゅん
)
な酒や、
煙草
(
たばこ
)
からにおい出るようなその
香
(
にお
)
いを葉子は衣類をかき寄せて、それに顔を
埋
(
うず
)
めながら
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
宋君
(
そうくん
)
。ご存知でしょうが、ここで飲ませるのが、純粋な江州産の
銘酒
(
めいしゅ
)
ですよ。つまりこの
芳醇
(
ほうじゅん
)
ですな。天下の酒徒なら“
玉壺春
(
ぎょっこしゅん
)
”の名を知らぬものはありません。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此処
(
ここ
)
ではまた酒のような
芳醇
(
ほうじゅん
)
な香が私を襲った。
フランセスの顔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
呉海呉山の珍味は玉碗銀盤に盛られ、南国の
芳醇
(
ほうじゅん
)
は紅酒、青酒、
瑪瑙酒
(
めのうしゅ
)
など七つの杯に
七種
(
なないろ
)
つがれた。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのうちに、下男が、菜を
摘
(
つ
)
み足してくると、妙秀は、
粥
(
かゆ
)
を煮、
菜根
(
さいこん
)
を
炊
(
た
)
いて、これを光悦の手づくりらしい小皿に盛り、
瓶
(
かめ
)
の
芳醇
(
ほうじゅん
)
を開けて、ささやかな野の食事が始まる。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ウーム、実に
芳醇
(
ほうじゅん
)
な
御酒
(
ごしゅ
)
だ」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芳
常用漢字
中学
部首:⾋
7画
醇
漢検準1級
部首:⾣
15画
“芳”で始まる語句
芳
芳香
芳町
芳年
芳志
芳紀
芳賀
芳野
芳幾
芳芬