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老耄
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ろうもう
ふりがな文庫
“
老耄
(
ろうもう
)” の例文
老耄
(
ろうもう
)
していた。日が当ると
茫漠
(
ぼうばく
)
とした影が
平
(
たいら
)
な
地面
(
じべた
)
に落ちるけれど曇っているので鼠色の幕を垂れたような空に、濃く浮き出ていた。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
東片町時代には大分
老耄
(
ろうもう
)
して
居睡
(
いねむり
)
ばかりしていたが、この婆さん猫が時々二葉亭の膝へ
這上
(
はいあが
)
って
甘垂
(
あまった
)
れ声をして
倦怠
(
けったる
)
そうに
戯
(
じゃ
)
れていた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
当時、そのロシアに住んでいた者は、物心づいた子供から、
老耄
(
ろうもう
)
の一つ手前に達した年寄りまで、それぞれ一生の
逸話
(
アネクドート
)
を拾った。
街
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
………自分がいかに
老耄
(
ろうもう
)
し、血のめぐりが悪くなっているからと云って、あんなにまでされて気が付かずにいられようか。………
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ドイツは、その
老耄
(
ろうもう
)
なまた幼稚な芸術を、解き放された畜生ともったいぶった気取りやの小娘との芸術を、
歓
(
よろこ
)
び楽しんでいた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
そして
疾病
(
しっぺい
)
と
老耄
(
ろうもう
)
とはかえって人生の苦を救う方便だと思っている。自殺の勇断なき者を救う道はこの二者より外はない。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
……人は
老耄
(
ろうもう
)
した老人で、一人は十一二の子供である。……それが暢気そうに歩いて行くとは! 大胆と云えば大胆とも云え、無考えとも云える。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
槍などは
下手
(
へた
)
でも構わん。
昔
(
むか
)
し藩中に起った
異聞奇譚
(
いぶんきだん
)
を、
老耄
(
ろうもう
)
せずに覚えていてくれればいいのである。だまって聞いていると話が横道へそれそうだ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
たとえ
老耄
(
ろうもう
)
されたとしても、僅かな地境の争いなどを老中に訴え出るほど涌谷どのは無分別な人ではございません。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
先生より寧ろ遺憾は深いと思われる祖母は、
老耄
(
ろうもう
)
の上、少し気がおかしくなり、誰に向っても「噂を振り撒いたのはおまえだろう」と喰ってかゝった。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これらの不平はみんな、つまり自分がだんだん
老耄
(
ろうもう
)
して来て頭が古くなり、感激性が麻痺したせいかもしれない。
二科展院展急行瞥見
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
某
(
それがし
)
儀
(
ぎ
)
今年今月今日切腹して
相果
(
あいはて
)
候
(
そろ
)
事いかにも
唐突
(
とうとつ
)
の
至
(
いたり
)
にて、弥五右衛門
奴
(
め
)
老耄
(
ろうもう
)
したるか、乱心したるかと申候者も
可有之
(
これあるべく
)
候
(
そうら
)
えども、決して左様の事には
無之
(
これなく
)
候
(
そろ
)
。
興津弥五右衛門の遺書(初稿)
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
祖母は晩年には
老耄
(
ろうもう
)
して、私と母とを間違えるようでした。主人は確かで、至って安らかに終りました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
その中泉という
老耄
(
ろうもう
)
の画伯と、それから中泉のアトリエに通っている若い研究生たち、また草田の家に出入りしている
有象無象
(
うぞうむぞう
)
、寄ってたかって夫人の画を褒めちぎって
水仙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
祖母も病床に臥したまま動かれず、
老耄
(
ろうもう
)
して白痴のような
矛盾
(
むじゅん
)
したことを申しますし、一家は二人の看護で秩序を失っていました。それから二十日間姉は苦み続けました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
人違とは
如何
(
いか
)
なことでも! 五年や七年会はんでも
私
(
わし
)
は
未
(
ま
)
だそれほど
老耄
(
ろうもう
)
はせんのだ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「おやまあ嫌だ、あなたが着てお
出
(
いで
)
になったのに——おじいさん
老耄
(
ろうもう
)
なさった。」
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
孫の成長をたった一つの心楽しみに、
日雇
(
ひやとい
)
などをして
漸
(
ようよ
)
うと暮していたが、その
婆
(
ばあ
)
さんがやがて
老耄
(
ろうもう
)
をして、いつでも手を打って一つ歌を歌っているのを、面白がって私たちは聴きに
往
(
い
)
った。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
なに十両私に下さるとは何たる
慈悲深
(
なさけぶけ
)
いお方ですかねえ、亥太郎は
交際
(
つきあい
)
が広いから牢へ差入れ物をしてくれる人は幾らもありますが、
老耄
(
ろうもう
)
している
親爺
(
おやじ
)
の所へ見舞に来て下さる方はありません
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「わしは近頃は
老耄
(
ろうもう
)
の上に念仏一方で、久しく
聖教
(
しょうぎょう
)
を見ないが」
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その執拗さで却って二人ながらに迫っている
老耄
(
ろうもう
)
を思わせるばかりに株がいい、土地がいいと諍っている。
猫車
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
酸敗し
老耄
(
ろうもう
)
した
落伍
(
らくご
)
者ども、王党の若小な痴人ども、残忍と
憎悪
(
ぞうお
)
とに満ちた忌むべき宣伝者ども、すべてそういう奴らが僕の行為を奪って、それを汚してしまうだろう。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
時は
昼夜
(
ちゅうや
)
を
舎
(
す
)
てず流れる。過去のない時代はない。——諸君誤解してはなりません。吾人は無論過去を有している。しかしその過去は
老耄
(
ろうもう
)
した過去か、幼稚な過去である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その後また幾年も経過して、烈しい世の中の動きにつれて、住所も安定しませんので、いよいよ
老耄
(
ろうもう
)
した私は、焼け残った本を少しずつ持って、あちこち流転を続けています。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
人世の
老耄
(
ろうもう
)
者、精力の消費者の食餌療法をするような家の職業には堪えられなかった。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
毎年庭の梅の散りかける頃になると、客間の床には、きまって何如璋の
揮毫
(
きごう
)
した
東坡
(
とうば
)
の絶句が懸けられるので、わたくしは
老耄
(
ろうもう
)
した今日に至ってもなお
能
(
よ
)
く左の二十八字を暗記している。
十九の秋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
虫の啼く、
粗壁
(
あらかべ
)
の出た、今一軒の家には老夫婦が住んでいた。
爺
(
じじい
)
は
老耄
(
ろうもう
)
して、
媼
(
ばばあ
)
は頭が真白であった。一人の息子が、町の時計屋に奉公していて、毎月、少しばかりの金を送って
寄来
(
よこ
)
した。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「寅寿はいま
翅
(
はね
)
も手足ももぎとられたかたちだが、なにこれで朽ち果てるほど
老耄
(
ろうもう
)
はしておらぬ、見ておいやれ、いまに思いがけぬところから……思いがけぬところから、な、まあ見ておいやれじゃ、はっははは」
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
けれども、そうは出来ない彼は、また自分の心がそれを望んでいるのだとは気づかない彼は、
老耄
(
ろうもう
)
が、もう来たと思った。が、それを拒むほど、彼は若くていたくもなかったのである。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
規矩男から彼の父親の晩年の
老耄
(
ろうもう
)
さ加減を聞いて知っているかの女は、夫人が言訳しているなと思った。年齢に大差ある結婚を、夫人がまだ身に
沁
(
し
)
みて飽き足らず思っているのを感じた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
既に
老耄
(
ろうもう
)
している
爺
(
じじい
)
は、この時ばかり気が確かであった。而して断言した。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
明
(
あかる
)
い
煖炉
(
だんろ
)
の
傍
(
そば
)
に坐りかける
老耄
(
ろうもう
)
した「月日」は
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
最後にいまわたくしの心に残るのは、
老耄
(
ろうもう
)
して十二三年も以前に見失った小猫の幻を追ったり、偶然にしろ、その
亡躯
(
なきがら
)
は嘗ての良人の住む岸の川へ漂って行ったという、そのことでした。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
物哀れな
老耄
(
ろうもう
)
した「月日」が
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
五官の
老耄
(
ろうもう
)
した中で、感覚が一番確かだつた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
“老耄”の意味
《名詞》
老耄(ろうもう)
老いぼれること。また、そのような人。
(出典:Wiktionary)
老
常用漢字
小4
部首:⽼
6画
耄
漢検1級
部首:⽼
10画
“老耄”で始まる語句
老耄奴
老耄婆