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絖
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ぬめ
ふりがな文庫
“
絖
(
ぬめ
)” の例文
横に
刎
(
は
)
ねて、ずり
下
(
おり
)
る子供の重みで、するりと半纏の襟が
辷
(
すべ
)
ると、肩から着くずれがして、
緋
(
ひ
)
を一文字に
衝
(
つッ
)
と引いた、
絖
(
ぬめ
)
のような肌が。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
犬養木堂は、憲政擁護の神様だつた頃は、人が頼むと、おいそれと気持よく
絖
(
ぬめ
)
なり、画箋紙なりへ達者な書をかいて呉れたものだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
絖
(
ぬめ
)
を漉したやうな日光が、
裏
(
うら
)
の藪から野菜畑、小庭の垣根などに、万遍なく差して、そこに枯れ/\に立つてゐる
唐辛
(
とうがらし
)
が
真赤
(
まつか
)
に
色
(
いろ
)
づいてゐた。
閾
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
私に
短冊
(
たんざく
)
を書けの、詩を書けのと云って来る人がある。そうしてその短冊やら
絖
(
ぬめ
)
やらをまだ承諾もしないうちに送って来る。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
折しも庵主の露月は、茶室がかった画室に閑座して、枠張の
絖
(
ぬめ
)
に向い一心に仕上げの筆を運んでいるところだったのです。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
白い
仮面
(
めん
)
のような女の顔——バラリと黒髪がかかって、
簾越
(
すだれご
)
しの月のように、やわらかい
絖
(
ぬめ
)
と
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の中に埋まっている。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
全身に化粧をほどこしているらしく、女のからだは
絖
(
ぬめ
)
のように白く光り、男のからだはキツネ色につやつやと光っていた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その紙も、紙とも付かねば皮とも付かぬ
絖
(
ぬめ
)
のようにピカピカとして、光沢のある薄い
堅靱
(
けんじん
)
なものであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
絖
(
ぬめ
)
のような白い薄膚の下から血の色が薄桃色に透けて、ちょうど遠山の春霞のような膚の色をしている。赤銅色のあの獅子噛面がどうしてこんな娘を生んだんだろう。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
とも知らず、金さえだせばと唐紙だ
絖
(
ぬめ
)
だと欲張った連中、規定の摺物を突きつけられて玄関でダア。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
石川杉弥は水色
絖
(
ぬめ
)
の小姓ばかまに波を打たせながら、こっそり深夜の表へ消え去っていきました。
右門捕物帖:07 村正騒動
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
喉元
(
のどもと
)
から胸へ流れる、嬌めかしい丸みの極まるところに、梅の
蕾
(
つぼみ
)
のような乳首をつけてふっくりと固く盛上る乳房——どこに一点の塵もなく、
絖
(
ぬめ
)
のように
艶々
(
つやつや
)
とした皮膚は
嫁取り二代記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
不図さう云ふ声が聴こえたので、酔眼を睜つて向ふのKさんの方を見ると、そこではKさんは誰か妓の一人が持つて来たらしい
絖
(
ぬめ
)
を拡げて、それに酔筆を揮はうとしてゐるところだつた。
酔狂録
(新字旧仮名)
/
吉井勇
(著)
多少骨っぽくなって、頭髪などもさらりと
粗
(
あら
)
っぽい感じがする。羽二重や、
絖
(
ぬめ
)
や、
芦手
(
あしで
)
模様や
匹田鹿
(
ひったが
)
の
子
(
こ
)
の手ざわりではなく、ゴリゴリする浜ちりめん、
透綾
(
すきや
)
、または
浴衣
(
ゆかた
)
の感触となった。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しなやかに細い多くの線をなして麗はしく輝やかしく
落下
(
おちくだ
)
る美しさは、恰も纖く裂いた
絖
(
ぬめ
)
を風に
晒
(
さら
)
して聚散させたを觀るやうな感じである。雄偉は華嚴にとゞめをさす、妍麗は霧降を首位とする。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
絖
(
ぬめ
)
やかな
凝脂
(
ぎょうし
)
は常にねっとりとその白い
肌目
(
きめ
)
からも毛穴からも男をそそる美味のような
女香
(
にょこう
)
をたえず発散する。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朝鮮の宴会で
絖
(
ぬめ
)
を持出された事まで云わなくてはならないから、好い加減に切り上げて、話を元へ戻して、
肥
(
ふと
)
った御神さんの始末をつけるが、余は切ない思いをして
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黒水晶のような眼、
絖
(
ぬめ
)
のように白く光る胸、しなやかな腕、ヒョイヒョイとこう飛びあがるようなその歩き方は、見る人の胸の中を熱くするような悩ましい様子なんだ。
ノンシャラン道中記:08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それだのに、今日の元気は大したものだ——そう言えば、それなる
絖
(
ぬめ
)
は、何ぞ新らしい仕事かナ
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
二十一という年が躯にも感情にも
溢
(
あふ
)
れているようにみえる。色が白くきめがこまやかで、肌はぜんたいに
絖
(
ぬめ
)
のような光沢をおびていた。その肌は斜めに見ると透きとおるように思える。
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二人寢
(
ふたりね
)
の
寛
(
ゆつた
)
りとした
立派
(
りつぱ
)
なもので、
一面
(
いちめん
)
に、
光
(
ひかり
)
を
持
(
も
)
つた、
滑
(
なめ
)
らかに
艶々
(
つや/\
)
した、
絖
(
ぬめ
)
か、
羽二重
(
はぶたへ
)
か、と
思
(
おも
)
ふ
淡
(
あは
)
い
朱鷺色
(
ときいろ
)
なのを
敷詰
(
しきつ
)
めた、
聊
(
いさゝ
)
か
古
(
ふる
)
びては
見
(
み
)
えました。が、それは
空
(
そら
)
が
曇
(
くも
)
つて
居
(
ゐ
)
た
所爲
(
せゐ
)
でせう。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
有り余るものは、
腐
(
す
)
えたる
脂粉
(
しふん
)
のにおいである。
絖
(
ぬめ
)
や
錦
(
にしき
)
や綾にくるまれた
棘
(
とげ
)
である。珠に飾られた
嫉視
(
しっし
)
や、
陥穽
(
かんせい
)
である。肉慾ばかり考えたがる彼女らの有閑である。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
水に晒したような
絖
(
ぬめ
)
のたつ白い皮膚は、どこといって日焼けもせず、華奢な手は、依然として敏感そうに、すらりとしたかたちを保っている。眼の艶もそのまま、声もそのまま。
蝶の絵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
呉羽之介は
絖
(
ぬめ
)
の上に生々と描かれた、いつぞや等覚院へ詣る途中、池の
端
(
はた
)
ではじめて露月に逢った時そのままの自分の若衆すがたをみつめつつ、まるで喪心したようになってしまいました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
肌理
(
きめ
)
の細かい、ふっくらとした
絖
(
ぬめ
)
のような白い肩が……。あわれ、もう胸元まで透けて。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ただ白髪に
痩
(
や
)
せた
鬢
(
びん
)
のあたりと、
絖
(
ぬめ
)
の
襟元
(
えりもと
)
をちらと見たに過ぎなかった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
絖
漢検1級
部首:⽷
12画
“絖”を含む語句
白絖
紫紺絖小姓袴
浅黄絖
白地絖
紫紺絖
絖地
絖絹
黒絖龍文