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穏
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おとな
ふりがな文庫
“
穏
(
おとな
)” の例文
旧字:
穩
そうして、突かれた紙帳は、
穏
(
おとな
)
しく内側へ萎み、裾が、ワングリと開き、
鉄漿
(
おはぐろ
)
をつけた妖怪の口のような形となり、細い白い手が出た。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
呍咐
(
いひつか
)
つた通り云ふと、
穏
(
おとな
)
しく帰つたのよ。それからお主婦さんと私と二人で散々
揄揶
(
からか
)
つてやつたら、マア野村さん酷い事云つたの。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
が或る日この犬は突然発狂して、いつもは
穏
(
おとな
)
しい犬だったのに、街中の犬に噛みつき、とうとう犬殺しに殺されてしまった。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
右近将監
(
うこんしょうげん
)
様の
御曹司
(
おんぞうし
)
、風流洒落の貴公子として、
穏
(
おとな
)
しく殿がおわすなら、私も京伝や蜀山人の伴侶、雅号蝸牛の舎の貝十郎として
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それに又渠は、其国訛りを出すと妙に言葉が
穏
(
おとな
)
しく聞える様な気がするので、目上の者の前へ出ると殊更「ねす」を沢山使ふ癖があつた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
山内謙三は、チヨコナンと人形の様に坐つて、時々死んだ様に力のない咳をし乍ら、
狡
(
ずる
)
さうな眼を輝かして
穏
(
おとな
)
しく聞いてゐる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
あまり相手が
穏
(
おとな
)
しいため、彼らは次第につまらなくなった。そこで彼らは城主を見棄て、また
以前
(
まえ
)
の隠れん坊をやり出した。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
生命
(
いのち
)
まで取るとはいわないだろう。……まあまあ
穏
(
おとな
)
しくしていることだ。……そうして、そうだ、どっちへ行くかおおかたの見当を付けてやろう
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『怎したけな?』と囁いてみたが返事がなくて一層
歔欷
(
すすりな
)
く。と、
平常
(
ひごろ
)
から此女の
穏
(
おとな
)
しく優しかつたのが、俄かに
可憐
(
いぢらし
)
くなつて来て、丑之助は
再
(
また
)
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
蝮はしかし
穏
(
おとな
)
しく、銭形模様の美しい体を、五寸ばかり懐中から抜き出して、
陽
(
ひ
)
の中でその体をテラテラ光らせ、口から緋色の舌を吐いてみせた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「お定ツ子は
穏
(
おとな
)
しくて
可
(
え
)
え
喃
(
なあ
)
。」と言はれる度、今も昔も顔を染めては、「
俺
(
おら
)
知らねえす。」と人の後に隠れる。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
解らないなら解らないように
穏
(
おとな
)
しく引っ込んでいるがよい。それともたって知りたいなら、いと
容易
(
たやす
)
いことじゃ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
楽な方へ楽な方へと廻つてばかりゐたのに比べて、齢の若いとは言ひながら、松子の何の不安も
無気
(
なげ
)
に
穏
(
おとな
)
しく自分の新しい境遇に処して行かうとする明い心は
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
で、
穏
(
おとな
)
しく暮らさなければいけない。これこれ狼さん狼さん、むやみと人なぞへ喰い付くなよ。そうして何んだ、兎さんなぞを、追っかけ廻してはいけないよ。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『今井さん、
穏
(
おとな
)
しく
貴方
(
あんた
)
と一緒に先に来れば可かつた。』へとへとに疲れたやうな目賀田の声がした。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「諏訪家の若殿頼正なら、若殿らしく
穏
(
おとな
)
しくただ上品に構えてさえいれば、こんな目にも逢うまいものを」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さればといつて、別に話すでもなく、細めた洋燈の光に、互に顔を見ては
穏
(
おとな
)
しく
微笑
(
ほほゑみ
)
を交換してゐた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と、蛇は
穏
(
おとな
)
しく、びくの中で眠ってしまう、蝮であろうとやまかがしであろうと、一度お仙の手にかかったら、その
獰猛
(
どうもう
)
な性質がにわかに穏しくなるのであった。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は聞えぬ位に「ハイ」と答へて
叩頭
(
おじぎ
)
をすると、先生は私の頭を撫でて、「お前は余り
穏
(
おとな
)
し過ぎる。」と言つた、そして卓子の上のお盆から、麦煎餅を三枚取つて下すつたが
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
可愛い色鳥! ……バタバタもがき
羽搏
(
はばた
)
いて、
鶏冠
(
とさか
)
嘴
(
くちばし
)
など怪我せぬよう! ……さあ
穏
(
おとな
)
しく巣に籠もれ!
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それで信吾は、格別の用があつたでもないのか、案外
穏
(
おとな
)
しく帰ることになつたのだ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
土子土呂之介
(
つちことろのすけ
)
に剣を学び、天真正伝神道流では
万夫不当
(
ばんぷふとう
)
だということや、利休好みの茶の
十徳
(
じっとく
)
に同じ色の宗匠頭巾、白の革足袋に福草履、こういう
穏
(
おとな
)
しい
風采
(
みなり
)
をして
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『山内
様
(
さん
)
よ。』と、静子は
穏
(
おとな
)
しく答へて心持顔を曇らせる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一通の大道が町を貫き「聖壇」の下まで通じていたが、そこを歩いている牛馬の類、犬や鶏さえ
穏
(
おとな
)
しやかである。道に添って川が流れ、川岸には夏草が花咲いている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『真佐子さんは少し藪睨みですね。
穏
(
おとな
)
しい方でせう。』
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「小次郎、わしも
直
(
じ
)
きに帰る。お庭などあまり歩き廻らず、供待ちに
穏
(
おとな
)
しく待っているがよいぞ」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『それからまだ有りますよ。』多吉は
穏
(
おとな
)
しく言つた。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「わしをあの時
櫃
(
ひつ
)
の中へ入れて、菊女はこう云って行ったのだよ。『すぐに帰って参りますゆえ、わたくしが帰って参りますまで、
穏
(
おとな
)
しくしておいでなさいまし』って」
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
穏
(
おとな
)
しく膝組みで話し合ってね。そうして沢山の人の中には、お前達も
雑
(
まじ
)
っていなければならない。……それはとにかくお前達については、ご重役衆にお願いして置いた。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は
末児
(
すえこ
)
でございましたから
幼時
(
ちいさいとき
)
から可愛がられましたけれど、体が余り丈夫で無いのと性質が
穏
(
おとな
)
し過ぎましたので軍人好みの父からは不甲斐無い者に思われていました。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
仕方がねえから
穏
(
おとな
)
しくしていよう。……だがそれにしても泥棒どもは、どこに何をしているのだろう? 姿を見せないとは皮肉じゃあないか。ひどく薄っ気味が悪いなあ。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すぐに突き飛ばされ
意気地
(
いくじ
)
なくよろめいたが、一緒に小屋の片隅へ集まりそこへ
穏
(
おとな
)
しく
跪座
(
つくば
)
った。そうしてそこから焚火越しに山吹の顔を見守った。一人の女と五匹の狼。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
場所は庭の中の
亭
(
ちん
)
である。すぐ側に恋人が坐っている。美しい夕月の
宵
(
よい
)
である。二人の他には誰もいない。……しかし、彼女は処女であった。そうして性質は
穏
(
おとな
)
しかった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あっ、
不可
(
いけ
)
ない、十人とは無いや」
斯
(
こ
)
ういうことを心の中で、往々考える傲慢な私も、小酒井不木氏の前へ出ると、
穏
(
おとな
)
しい中年の紳士となり、カウスの先を揃えるのである。
小酒井不木氏スケッチ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「何を
愚図愚図
(
ぐずぐず
)
申しておるぞ!」長者は憎々しく怒鳴り立てた。「
穏
(
おとな
)
しく
各自
(
めいめい
)
の
室
(
へや
)
へ帰って、鳰鳥の行くのを待つがいい! 鳰鳥の言葉は
俺
(
わし
)
の言葉、決して抗弁はならぬぞよ!」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「たしかにそうだとは思ったが、何しろ様子が変っているだろう。
穏
(
おとな
)
し作りのお嬢さん、
迂闊
(
うっか
)
り呼び掛けて人
異
(
ちが
)
いだったら、こいつ
面目
(
めんぼく
)
がねえからな。それでここまでつけて来たのさ」
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
弥兵衛は町人の
伜
(
せがれ
)
であり、母一人に子一人の境遇、美貌であり品もあり
穏
(
おとな
)
しくもあったが、どっちかといえば病身で、
劇
(
はげ
)
しい商機にたずさわることが出来ず、家に小金があるところから
一枚絵の女
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すると老人は萎びた顔へ颯と血の色を浮かべたが、思い返えして
穏
(
おとな
)
しい声で
死の航海
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なだらかに通った高い鼻、軽くとざされた唇がやや受け口に見えるのが
穏
(
おとな
)
しやかにも
艶
(
あで
)
やかである。水のように澄んだ切れ長の眼が濃い睫毛に蔽われた
態
(
さま
)
は森に隠された湖水とも云えよう。
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
メッカチでビッコで馬ア悪いが、その代り
穏
(
おとな
)
しい牝馬で、振り落とすような事アねえ。……ソレ馬には乗って見ろ、女には添って見ろッていうじゃアねえか、坊さんだろうと女ほしかろう。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ジョン少年は
穏
(
おとな
)
しく、祭司バタチカンの側へ行き、坐って話を聞こうとした。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
上様に逢わせようといいさえすれば、いつまでも
穏
(
おとな
)
しいお浦だからであった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
頓狂者
(
とんきょうもの
)
の珍斎が、
盃
(
さかずき
)
の酒をこぼした罪で、二つない首を打ち落とされ、また、
一昨日
(
おととい
)
は三弥様が——ご
縹緻
(
きりょう
)
のよかったお小姓の、しかも
穏
(
おとな
)
しい三弥様が、捧げていたお刀を落としたというので
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「お化師匠」の事件では、
穏
(
おとな
)
しい「蛇」によって手蔓を得「筆屋の娘」の事件では、一本の「筆」によって手蔓を得又「少年少女の死」の、その上の部の事件では、「手拭」一筋から手蔓を得た。
半七雑感
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あまりお姉様が
穏
(
おとな
)
しく、お小言おっしゃらないからでございますわ」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「で、どうだな、海賊どもは、
穏
(
おとな
)
しかったかな、乱暴だったかな?」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「私達が
穏
(
おとな
)
しくしていれば、いつまでも現状はつづいて行きます」
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかし性質は
穏
(
おとな
)
しかった。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「飛んでもないことでございます。何んのそんなことがございますものか。兄は善人でございます。よい人間でございます。私と
異
(
ちが
)
って
穏
(
おとな
)
しくもあり、宿の人達には誰彼となく、可愛がられておりました。……だが、ここにたった一つ……」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
穏
常用漢字
中学
部首:⽲
16画
“穏”を含む語句
穏和
穏当
安穏
平穏
穏便
静穏
安穏寺
心穏
不穏
穏健
不穏当
穏田
穏顔
穏便沙汰
穏坊
穏子
穏密方
穏座
穏当人
穏戸
...