トップ
>
白蝋
>
はくろう
ふりがな文庫
“
白蝋
(
はくろう
)” の例文
だが、その美しさも、いじらしさも、
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
で、橙の黄なる空の色が、
白蝋
(
はくろう
)
の白きに変る時分に、山々は一様に黒くなりました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
サンプリス修道女は
白蝋
(
はくろう
)
のようにまっ白な女であった。ペルペチュー修道女と並べると、細巻きの
蝋燭
(
ろうそく
)
に対する大蝋燭のように輝いていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
平生顔の色など変える人ではないけれど、今日はさすがに包みかねて、顔に血の
気
(
け
)
が失せほとんど
白蝋
(
はくろう
)
のごとき色になった。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
しっかと刀の柄をにぎったまま
白蝋
(
はくろう
)
のような横顔をのぞかせて、あのうつくしい若さまはうつぶせになって、こと切れているではありませんか。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「もうこれでよし」と、自信ありげに、
独
(
ひと
)
り
呟
(
つぶや
)
いた。ややあって、陳君の屍骸の
白蝋
(
はくろう
)
のような顔に、
一抹
(
いちまつ
)
の血がのぼると
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
▼ もっと見る
面
(
おもて
)
が
白蝋
(
はくろう
)
のように色澄んで、伏目で聞入ったお澄の、長い
睫毛
(
まつげ
)
のまたたくとともに、
床
(
とこ
)
に置いた大革鞄が、揺れて熊の動くように見えたのである。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その髪の毛を、掻きよせてみると、どうだろう、
白蝋
(
はくろう
)
みたいな女の頬は、ニッと、
笑靨
(
えくぼ
)
が
泛
(
う
)
かんでいるのだ、いかにも、死を満足しているように——。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夫人も綾子も、
白蝋
(
はくろう
)
のように青ざめていた。主人も妙な顔をして、物忘れでもしたようにぼんやりしていた。気のせいか天井の電燈がひどく薄暗くなっていた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
覆いを取ると、斬られて死んだ者によくある、
白蝋
(
はくろう
)
のような感じのする顔で、年の頃三十五六、神経質な口やかましい女ということは、八五郎にもよく受取れます。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
胸が豊かで、膝から下の足が素直に延びているお蘭の体は、湯から出ている胸から上は
瑪瑙色
(
めのういろ
)
に
映
(
は
)
えていたが、胸から下は、
白蝋
(
はくろう
)
のように蒼いまでに白く見えていた。
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白蝋
(
はくろう
)
のような頬にも、のびやかな眉にも、赤みの失せた唇にも、苦痛の色は
些
(
いささ
)
かもなく、まるで眠りながら微笑しているような、おちついた安らかな顔つきであった。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
よい
白蝋
(
はくろう
)
を煮とかして、壺ようの器に入れてあり、それに「単膏」という札が
貼
(
は
)
ってありました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
希臘
(
ギリシャ
)
の
彫刻
(
ちょうこく
)
で見た、ある
姿態
(
ポーゼー
)
のように、髪を後ざまに
垂
(
た
)
れ、
白蝋
(
はくろう
)
のように白い手を、後へ
真直
(
まっすぐ
)
に
反
(
そ
)
らしながら、石段を引ずり上げられる屍体は、確に
悲壮
(
ひそう
)
な
見物
(
みもの
)
であった。
死者を嗤う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
灯という灯はどれも
白蝋
(
はくろう
)
のヴェールをかけ、ネオンの色明りは遠い空でにじみ流れていた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
白蝋
(
はくろう
)
の御両頬には、あの夏木立の影も映らむばかりでございました。そんなにお美しくていらっしゃるのに、縁遠くて、一生
鉄漿
(
かね
)
をお附けせずにお暮しなさったのでございます。
葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ふと目に着いたものは
白蝋
(
はくろう
)
のような色をした彼女の肉体のある部分に、
真紅
(
しんく
)
に咲いたダリアの花のように、
茶碗
(
ちゃわん
)
大に
刳
(
く
)
り取られたままに、鮮血のにじむ
隙
(
すき
)
もない深い
痍
(
きず
)
であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
すんなりと伸びた
白蝋
(
はくろう
)
のような水着一つの美少女が、砂地に貼つけられたように寝ていると、そのむき出しにされた、日の眼も見ぬ福よかな腿のふくらみが、まだ濡れも乾かずに
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
弔砲
(
ちょうほう
)
が鳴つて、非常な盛儀であつた。あのまま息を引きとつた彼女の顔は、ガラスの
棺
(
ひつぎ
)
のなかで
白蝋
(
はくろう
)
のやうに静かであつた。僕は純白の花束を、人々の後ろから墓穴のなかへ投げてやつた。
わが心の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
その傍にはもう一つ小さい台があって、キラキラ光る大小さまざまのメスが並んでいた。解剖台の上には
白蝋
(
はくろう
)
のような屍体が横たわっているが、身長から云ってどうやら少年のものらしい。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
恐怖
(
きょうふ
)
と
好奇
(
こうき
)
の無言のうちに、四人は死体のほうへすすんだ。死体は十数メートル先にほの白く光っていた。みだれた
髪
(
かみ
)
が
白蝋
(
はくろう
)
の顔にへびのようにくっついている。ぞっと戦慄が身内を走った。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
つばきの葉を見るような、厚い革質のくすんだ
光沢
(
つや
)
があって、先端の丸い、細長い楕円形の葉を群がらしている。その裏返しになったところは、
白蝋
(
はくろう
)
を塗ったようで、赤児の頬の柔か味がある。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
見ればその青ざめた
白蝋
(
はくろう
)
のような頬に、一筋サッと真赤な糸が伸びて、そこから濡紙にインキが浸み渡りでもするように、見る見る血のりが頬を濡らして行く。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
兵書には
蝮蛇
(
まむし
)
、
茯苓
(
ぶくりょう
)
、
南天
(
なんてん
)
の実、
白蝋
(
はくろう
)
、虎の肉などを用い、一丸よく数日の
餓
(
うえ
)
を救うと言われている
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
きょうは膏薬の原料を拵えるというと、外へ火を持出して、
鍋
(
なべ
)
に
白蝋
(
はくろう
)
を入れて煮立てます。外にも何か
這入
(
はい
)
るのかも知れません。十分に溶けた時に鍋を下して、さめてから器に入れて置きます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
解消すると、この
白蝋
(
はくろう
)
のような顔が、忽ち紅潮してくれるだろう
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
水気をもったような顔も、
白蝋
(
はくろう
)
のように透き
徹
(
とお
)
って見えた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「
白蝋
(
はくろう
)
がいッぱい詰まっています」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
虎の
鼻面
(
はなづら
)
がすぐ眼の前に迫っても、声も立てなければ、身動きさえもしなかった。その
白蝋
(
はくろう
)
のように美しい肌の上に、一条の
血汐
(
ちしお
)
が、赤い
蛇
(
へび
)
となってからみついていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
たしなみの良い娘の死骸は、半身
紅
(
あけ
)
に染んで、二た眼と見られない痛々しい姿ですが、よく化粧した顔は
白蝋
(
はくろう
)
のように
蒼
(
あお
)
ずんで、なんとなく凄まじい美しさがあるのです。
銭形平次捕物控:123 矢取娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
遺骸
(
いがい
)
にはさっぱりした
羽二重
(
はぶたえ
)
の紋附が
著
(
き
)
せてありましたが、それはお兄様の遺物でした。納棺の時に、赤い美しい草花を沢山取って来て、
白蝋
(
はくろう
)
のような顔の廻りを埋めたのが痛々しく見えました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
その
白蝋
(
はくろう
)
のようなからだのうちに、ただ一か所美しくないところがあった。蘭子を殺したものは、美しくない部分であった。
喉
(
のど
)
のところにパックリと口をあいた赤黒い
傷痕
(
きずあと
)
。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“白蝋”の意味
《名詞》
日光に晒して精製した白い臘。
(出典:Wiktionary)
白
常用漢字
小1
部首:⽩
5画
蝋
漢検準1級
部首:⾍
14画
“白蝋”で始まる語句
白蝋石
白蝋粉
白蝋面
白蝋青隈