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でう
何お
峯が
來たかと
安兵衛が
起上れば、
女房は
内職の
仕立物に
餘念なかりし
手をやめて、まあ/\
是れは
珍らしいと
手を
取らぬばかりに
喜ばれ、
見れば六
疊一
間に一
間の
戸棚只一つ
十六
日の
朝ぼらけ
昨日の
掃除のあと
清き、
納戸めきたる六
疊の
間に、
置炬燵して
旦那さま
奧さま
差向ひ、
今朝の
新聞おし
開きつゝ、
政界の
事、
文界の
事、
語るに
答へもつきなからず
無骨一
遍律義男の
身を
忘れての
介抱人の
目にあやしく、しのびやかの
咡き
頓て
無沙汰に
成るぞかし、
隱れの
方の六
疊をば
人奧樣の
癪部屋と
名付けて、
亂行あさましきやうに
取なせば
八
疊の
座敷に六
枚屏風たてゝ、お
枕もとには
桐胴の
火鉢にお
煎茶の
道具、
烟草盆は
紫檀にて
朱羅宇の
烟管そのさま
可笑しく、
枕ぶとんの
派手摸樣より
枕の
總の
紅ひも
常の
好みの
大方に
顯はれて