)” の例文
旧字:
その一等端は桑畑になつて、そこいらまではどこか町中の通りらしく平坦な道路は、急に幅もばまり、石ころが路面にあらはれてゐた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
けやきのまあたらしい飯台はんだいをとりまいて徳利をはや三十本。小鉢やら丼やら、ところもにおきならべ、無闇に景気をつけている。
水平線が見る間に足の下になるかと、思うと、二、三分もしないうちに、谷からばめられた空を仰ぐように、下へ引きずりこまれていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
高野街道をすこし戻って、西へ入ると、山はいよいよばみ、谷は深く、たそがれの模糊もこを探り探り、道とも見えぬような所ばかり分けて行くのだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紙漉橋の袂に鉄砲垣を折りめぐらして、生節なまぶしの冠木を見越しの雑裁うえごみ林樾こずえを深く(中略)春は塀外の桜、庭もに散り込みて、打延る両岸の枝頭の色は大曲のはてまで一目に残余なごり無く
巣鴨菊 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
車夫くるまや鶴子つるこおぶってもらい、余等はすべ足元あしもとに気をつけ/\鉄道線路を踏切って、山田のくろ関跡せきあとの方へと上る。道もに散るの歌にちなんで、芳野桜よしのざくらを沢山植えてある。若木わかきばかりだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
午食を使って間もなく、踏みぬいた草鞋わらじきかえた。次第にばまり細くなる流れを逆にさかのぼっていた。この尾根を越えてしまえば目ざしている土地に出ることが出来るであろう。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
はじのあさみどりなる、内あかく紫くろき、かさ厚く七重八重なる、葉牡丹は大いにうれし。牡丹とも見ずや葉牡丹、やすきその株ながら、株立つとこの庭もに、豊かなり乏しともなし。
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
名にし負える荻はところく繁り合いて、上葉うわばの風は静かに打ち寄するさざなみを砕きぬ。ここは湖水のみぎわなり。争い立てる峰々は残りなく影をひたして、ぎ行く舟は遠くその上を押し分けて行く。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
色々の器械がところきまで詰め込んである。
墓の道ばめられたる参りけり
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
みち
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その店先に、釣鈎や釣竿、餌筥えばこなどをところもにとりひろげ、ぬうとかけているのが顎十郎。所在なさに、とうとう釣りでもはじめる気と見える。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鬼無きなし国府こくぶあたりから、ようやく、山近くばみ合ってくる。綾川の南の丘を指さして「鼓ヶ岡が見えます」と、川六の主人がいう。碑らしいものが冬木立の中腹に望まれる。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みちに高きづくりおともなく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ところもに置き散らしたなかに、下賤な面がまえの男女が五人ほどごろごろ寝ッ転がっている。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
物見車ものみぐるまところきほどなり。若きも老いも、尼法師、あやしき山賤やまがつまで、(中略)おのおの目押しのごひ、鼻すすりあへる気色ども、げに憂き世のきはめは、今に尽しつる心地ぞする。〔増鏡〕
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道もにこぼれきたり。
第二海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
広縁の前に大きな植木棚があって、その上に、丸葉の、筒葉の、熨斗のし葉の、みだれ葉の、とりどりさまざまな万年青おもとの鉢がかれこれ二三十、ところもにずらりと置きならべられてある。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)