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ふりがな文庫
“
爪弾
(
つまはじ
)” の例文
旧字:
爪彈
爪弾
(
つまはじ
)
きされたことは想像に
難
(
かた
)
くなく、極端な無抵抗主義が因をなして、「腰抜け」という、有難からぬ
綽名
(
あだな
)
まで頂戴したのでしょう。
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それにしても、四郎はあの
爪弾
(
つまはじ
)
きの松吉を莫迦に信用しているらしいが、今に松吉の悪心に引懸って、財産も何も
滅茶滅茶
(
めっちゃめっちゃ
)
にされちまうぞ
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すべてを
爪弾
(
つまはじ
)
きした甲野さんは杖の先で、とんと
石橋
(
せっきょう
)
を
敲
(
たた
)
いて、ぞっとしたように肩を縮める。宗近君はぬっと立ち上がる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
仮令
(
たとえ
)
親戚から離れ、人から
爪弾
(
つまはじ
)
きせられ、全く自分一人に生きなければ成らないような時が来ようとも、彼としてはそれも
已
(
や
)
むを得なかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
兄弟とはいえ好人物の助三郎とは違い、人にも
爪弾
(
つまはじ
)
きされていたという栄太の死顔を、鼻の先へやぞうを作ったまま勘次は鋭く見下ろしていた。
釘抜藤吉捕物覚書:01 のの字の刀痕
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
これ位の情操と誇りを持たずして、どうして人に
爪弾
(
つまはじ
)
きされる男芸者という職におのれの良心に許されて身が勤まろうか。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
心ある人は主膳の得意を
爪弾
(
つまはじ
)
きしていました。主膳自らもこのごろは、酒に
耽
(
ふけ
)
ることが一層甚だしくなって、酒乱の度も追々
嵩
(
こう
)
じてくるのであります。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ですから、自分などは、大坂城中でも、第一の臆病者と、いつも同じ小姓部屋出身の荒武者どもから
爪弾
(
つまはじ
)
きです」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鞭影
(
べんえい
)
への恐怖、言いかえれば世の中から
爪弾
(
つまはじ
)
きされはせぬかという懸念、牢屋への憎悪、そんなものを人は良心の
呵責
(
かしゃく
)
と呼んで落ちついているようである。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もし、三日や四日で見つかると、前々から申し合せてあったものと見て、二人の間がらは、島人全体から疑われることになる。もちろん
爪弾
(
つまはじ
)
きをするのだ。
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
定めて心変りよと
爪弾
(
つまはじ
)
きせらるるならんと
口惜
(
くちお
)
しさ悲しさに胸は張り
裂
(
さ
)
くる思いにて、
夜
(
よ
)
もおちおち眠られず。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
と、支那人に
爪弾
(
つまはじ
)
きされたものだ、が皇軍が入城してからは、酔っぱらいやごろつきも姿をかくしてしまい、殊に夜などはひっそりとしずまりかえっていた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
僧都 いや、いや、黒潮と赤潮が、
密
(
そ
)
と
爪弾
(
つまはじ
)
きしましたばかり。人命を断つほどではござりませなんだ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
才のあるなしよりは自分の信奉するツルゲーネフやドストエフスキーやゴンチャローフの態度と違った行き方をして生活の方便とするを内心
窃
(
ひそか
)
に
爪弾
(
つまはじ
)
きしていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
十八名が全部当選したというお話がありましたが、それらの人々は常日頃から人々に
爪弾
(
つまはじ
)
きにされて居った人たちが多いのに、どうして普通で当選が出来ましょう。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
と俥屋は
爪弾
(
つまはじ
)
きをしたが、細君は溝へ落ちて貰ってこんなに嬉しかったことはなかった。
一年の計
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
大将は
爪弾
(
つまはじ
)
きがされて、妻に対する
憎悪
(
ぞうお
)
の念ばかりが心につのった。先刻愛を感じていた気持ちなどは跡かたもなくなったが、現在は荒だてるのに都合のよろしくない時である。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
と皆に
爪弾
(
つまはじ
)
きされ、さすがに盛長も恥じたのか、扇で顔をかくして京を歩いたという。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
床の間にありし大形の——
袴
(
はかま
)
はきたる女生徒の多くうつれる写真をとりて、糸のごとき目にまばたきもせず見つめしが、やがてその
一人
(
ひとり
)
の顔と覚しきあたりをしきりに
爪弾
(
つまはじ
)
きしつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
其間
(
そのあいだ
)
別に変った事も無かったが、一旦山𤢖と親しんだという風説が、甚だ
此
(
こ
)
の
青年
(
わかもの
)
に
禍
(
わざわい
)
して、彼は附近の人々から
爪弾
(
つまはじ
)
きされた。若い者の
寄合
(
よりあい
)
にも重蔵一人は殆ど
除外
(
のけもの
)
となって
了
(
しま
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「もうあの人たちも知つて居るのだ、みんなが己を
爪弾
(
つまはじ
)
きして居るのだ。」
私
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
秋晴や
一片雲
(
いちへんうん
)
も
爪弾
(
つまはじ
)
き
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
黒助
兄哥
(
あにい
)
、怨みのある石見様は隠居した上、御親類中から
爪弾
(
つまはじ
)
きされて、行方不明になってしまった。
敵
(
かたき
)
は討ったも同じことだろう。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
母も死ぬ三日前に
愛想
(
あいそ
)
をつかした——おやじも年中持て余している——町内では乱暴者の悪太郎と
爪弾
(
つまはじ
)
きをする——このおれを無暗に
珍重
(
ちんちょう
)
してくれた。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と洩らすほど、近正も、同族の中から
爪弾
(
つまはじ
)
きされ、多年、不遇におかれていた。不遇が結びつけた仲なのである。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
捨てられ、
卑
(
いや
)
しめられ、
爪弾
(
つまはじ
)
きせられ、同じ人間の仲間入すら出来ないやうな、つたない同族の運命を考へれば考へるほど、
猶々
(
なほ/\
)
斯の若い
生命
(
いのち
)
が惜まるゝ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
常に弓矢を取って乗りまわっているので、土地の者には
爪弾
(
つまはじ
)
きされていました。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分こそ親類じゅうの
爪弾
(
つまはじ
)
き、大の不実者、人間の屑のように言われているのを棚にあげ——アアこうなることとわかっていたら、ふだんからもうすこし不義理をつつしみ、年始暑寒にも顔を出して
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と
爪弾
(
つまはじ
)
きをして見せて、式部をいじめた。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「おれも
柴田家
(
しばたけ
)
から
爪弾
(
つまはじ
)
きをされてみれば、なんとか、ここで
行
(
ゆ
)
く
末
(
すえ
)
の方針を立てなければならない
場合
(
ばあい
)
だが」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
爪
常用漢字
中学
部首:⽖
4画
弾
常用漢字
中学
部首:⼸
12画
“爪”で始まる語句
爪
爪先
爪立
爪尖
爪繰
爪牙
爪先上
爪紅
爪音
爪皮