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無稽
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むけい
ふりがな文庫
“
無稽
(
むけい
)” の例文
こういう見方はしかし、実はそれほど
無稽
(
むけい
)
なものでないということは、すでに自分のみならず、他の人もしばしば論じたことである。
科学と文学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
又婦人は年若き男子に文通す可らずと言うが如き、
無稽
(
むけい
)
も亦甚し。人事忙しき文明世界に文通を禁じられて用を弁ず可きや。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
編集者や読者は、かれの作品を荒唐
無稽
(
むけい
)
な純空想の産物と考えていた。現実とはなんの関係もない作りごとと考えていた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それはまったく荒唐
無稽
(
むけい
)
な事柄の連続であって、おかしな結婚、死人、裁縫女、王侯、
滑稽
(
こっけい
)
なまた時には
猥褻
(
わいせつ
)
な事柄、などが問題になっていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
おそらくは
無望塔
(
むばうたふ
)
にやあらん。住僧の心には
死
(
しぬ
)
がいやさに
無望塔
(
のぞみなきたふ
)
なるべし。こゝに
無稽
(
むけい
)
の
一笑
(
いつせう
)
を
記
(
しる
)
して
博識
(
はくしき
)
の
確拠
(
かくきよ
)
を
竢
(
ま
)
つ。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
▼ もっと見る
「つまらない伝説ですよ、本所のおいてけ堀のたぐいで、どこにでもそんな
無稽
(
むけい
)
な話はあるもんです、だって」
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ヘッケルの時代にはもちろんのこと、それを読んだ私たちの高等学校時代の頃でも、それは精密科学の立場から見れば、全くの荒唐
無稽
(
むけい
)
な空想にすぎなかった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
更
(
さら
)
に
印度
(
いんど
)
に
行
(
ゆ
)
くと、
印度
(
いんど
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
化物
(
ばけもの
)
の
本場
(
ほんば
)
である。
印度
(
いんど
)
の
地形
(
ちけい
)
も
支那
(
しな
)
と
同
(
おな
)
じく
極
(
きは
)
めて
廣漠
(
かうばく
)
たるもので、
其
(
その
)
千
里
(
り
)
の
藪
(
やぶ
)
があるといふ
如
(
ごと
)
き、
必
(
かなら
)
ずしも
無稽
(
むけい
)
の
言
(
げん
)
ではない。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
そこにいろんな
無稽
(
むけい
)
の揷話が付随してくるのは当然で、ことに、犯罪者には、いよいよとなると自己を英雄化して飾ろうとする妙な共通心理があるものとみえる。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
多少、心ある者は、一笑に附して顧みざるべきほどの
無稽
(
むけい
)
の言葉であるにかかわらず、それを信ずるものが少なくなかったということは、今も昔も変ることがありません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
云うまでもなく、ディグスビイの
無稽
(
むけい
)
な妄想と僕の
杞憂
(
きゆう
)
とが、偶然一致したのかもしれません。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
尤
(
もっと
)
も太子に対し後世の仏家が附会した伝説は実に多く、中には仏教徒の自己弁護のためと思われるものも
尠
(
すくな
)
くない。しかし伝説のすべてを
無稽
(
むけい
)
とし迷信とするのは誤りであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
僕があなたを殺すんだつて、あなたを殺しかけてゐるつて? そんな言葉は使ふべきでない——亂暴な、女らしくない、
無稽
(
むけい
)
な言葉だ。それは不運な心の状態をあらはしてゐる。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
その大事を
目睫
(
もくしょう
)
にひかえて、先にもいったとおり、殿には
無稽
(
むけい
)
な伝説などに
囚
(
とら
)
われて、
心神衰耗
(
しんしんすいもう
)
の御容態、また折も折に、俵一八郎の死と築城中の出丸
櫓
(
やぐら
)
の崩壊とが暗合したので
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
陸地至るところに温泉の湧くことを思えば、それも
無稽
(
むけい
)
の説ということは出来まい。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そのような
無稽
(
むけい
)
な申し立て、此処では通らぬぞ、察するにその方、僧侶の身にあるまじき
殺生
(
せっしょう
)
を犯した故、死者の
妄執
(
もうしゅう
)
晴れやらず、それへ
止
(
とど
)
まっておるに相違あるまい、
処
(
ところ
)
の法に照らして
所刑
(
しおき
)
する
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
未来の可能性は、それがどんなに現在の凡人に
無稽
(
むけい
)
に見えても実は現在の可能性のほんのわずかの延長にしか過ぎないからである。
科学と文学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
おそらくは
無望塔
(
むばうたふ
)
にやあらん。住僧の心には
死
(
しぬ
)
がいやさに
無望塔
(
のぞみなきたふ
)
なるべし。こゝに
無稽
(
むけい
)
の
一笑
(
いつせう
)
を
記
(
しる
)
して
博識
(
はくしき
)
の
確拠
(
かくきよ
)
を
竢
(
ま
)
つ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
そういうことについて、彼女はまったく荒唐
無稽
(
むけい
)
なつきない話を作りだしていた。馬鹿な作り話だとは自分でも知っていたが、しかしそう認めたくなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
身体を犯すの病毒はこれを恐るること非常にして、精神を腐敗せしむるの不品行は、世間に同行者の多きがためにとて自らこれを犯して罪を免れんとす。
無稽
(
むけい
)
もまた甚だしというべし。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その
無稽
(
むけい
)
であることはいふまでもない。
日本建築の発達と地震
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
しかしそのような著しい地殻の古きずが現在の歪に対して時々過敏になりうるであろうと想像するのは単に
無稽
(
むけい
)
な空想とは言われないであろう。
怪異考
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
あらゆる考えを吸い尽す情欲の
渦巻
(
うず
)
。暗夜のうちに転々する陶酔せる世界の、狂暴
無稽
(
むけい
)
なる「法則」……。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
三千年前の
項羽
(
こうう
)
を
以
(
もっ
)
て今日の榎本氏を
責
(
せむ
)
るはほとんど
無稽
(
むけい
)
なるに
似
(
に
)
たれども、
万古不変
(
ばんこふへん
)
は人生の心情にして、氏が
維新
(
いしん
)
の
朝
(
ちょう
)
に青雲の志を
遂
(
と
)
げて
富貴
(
ふうき
)
得々
(
とくとく
)
たりといえども、時に
顧
(
かえり
)
みて
箱館
(
はこだて
)
の旧を思い
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そんな
無稽
(
むけい
)
な夢を描かなくても、科学とその応用がもっと進歩すれば、生きた歯を保存することも今より容易になり
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして話の相手どもを、その主義の荒唐
無稽
(
むけい
)
な激越な極端にまで押し進めて、意地悪い喜びを味わった。彼が
真面目
(
まじめ
)
に口をきいてるかどうかはさらにわからなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
なおはなはだしきは、医は意なりと公言して、医術は憶測に出ずるものかと誤まり
認
(
したた
)
め、
無稽
(
むけい
)
の漢薬を服して自得する者あり。その愚の極度にいたりては、売薬をなめて万病を医せんと欲する者あり。
物理学の要用
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
一見どんなに荒唐
無稽
(
むけい
)
に見える空想でも現在の可能性の延長として見たときに、それが不可能だという証明はできないという種類のものもずいぶんある。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
信じていて、幸福は彼女においては、全的な荒唐
無稽
(
むけい
)
な信仰であり、宗教的な信仰であった
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それで、この
国曳
(
くにび
)
きの神話でも、単に
無稽
(
むけい
)
な
神仙譚
(
しんせんだん
)
ばかりではなくて、何かしらその中に
或
(
あ
)
る事実の
胚芽
(
はいが
)
を含んでいるかもしれないという想像を起こさせるのである。
神話と地球物理学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そのうちでもっともおもなものは、荒唐
無稽
(
むけい
)
な恋愛であって——(彼はいつもそんなことを空想していた)——それが頭につきまとい、他のすべてのことにたいして盲目となり無関心となっていた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
あらゆる先入観念を捨て、あらゆる枝葉の利害を除いて最も本質的にこの問題を考えてみたならば、私がここに言っていることが必ずしも
無稽
(
むけい
)
なものでない事が了解されはしないかと思う。
一つの思考実験
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
理論上それほど
無稽
(
むけい
)
なものではあるまいと思われる。
比較言語学における統計的研究法の可能性について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“無稽”の意味
《名詞》
拠り所がないこと。根拠がないこと。
(出典:Wiktionary)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
稽
常用漢字
中学
部首:⽲
15画
“無稽”で始まる語句
無稽無稽