じる)” の例文
ごちそうはさつまじるだった。あたたかい日ざしの中でそれをすすっていると、あせをかきそうだった。食後の蜜柑みかんが、舌にひやりとしてあまかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
もち・ダンゴ・強飯こわめし・何とかじるの類に、それぞれの名があり時が定まってその数も決して少なからず、一年を通ずればその種類が四五十もあった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昼間でも、太陽を忘れているような、生気せいきのない膳部番や、料理人や、老いたるお賄頭まかないがしらが、十年一日の如く、昆布こぶ煮出にだじるのにおいの中に住んでいる。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
胡瓜きゅうりもみに青紫蘇あおじそ。枝豆。到来物のたたみいわし。それに茄子なす新漬しんづけ。飯の時にとろろじる。すべてお玉の手料理の物で、金兵衛は夕飯に吉左衛門を招いた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
粕饅頭かすまんじゅうから、戎橋筋えびすばしすじそごう横「しる市」のどじょうじる皮鯨汁ころじる道頓堀どうとんぼり相合橋東詰あいおいばしひがしづめ出雲屋いずもや」のまむし、日本橋「たこ梅」のたこ、法善寺境内「正弁丹吾亭しょうべんたんごてい」の関東煮かんとだき
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
がさないようにばんをして、ばんにわたしがかえるまでにたぬきじるをこしらえておいておくれ。」
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
干葉ひばのゆでじる悪くさし」「掃けば跡からまゆみちるなり」「じじめきの中でより出するり頬赤ほあか
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
稲の穂花の白く浮いた田の水がどぶ川に落とされるころから、どじょうがよく捕れる。村ではどじょうじるが秋の最上の味として夕食の卓にのぼった。私もよくざると籠を持って出た。
かき・みかん・かに (新字新仮名) / 中島哀浪(著)
いわしの頭や菜っ葉じるをたべるかわりにくれてやろうと思いながら答えました。
山男の四月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
沼南の味も率気そっけもないなしじるのような政治論には余り感服しなかった上に、其処此処そこここで見掛けた夫人の顰蹙すべき娼婦的媚態びたいが妨げをして、沼南に対してもまた余りイイ感じを持たないで
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
サフランは石蒜せきさんとその寂しい運命を分け合っている。鶴見がまだ子供の時分、国から叔母が来ていたが、血の道の薬だといって濃い赤褐色のせんじるを飲んでいた。鶴見にはそれだけの思い出しかない。
牛肉はすまじるへ入れるよりも味噌汁へ入れた方が良いようですね
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
梅若菜まりこの宿しゅくのとろゝじる 芭蕉
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ごちそうは、これも恒例で、赤飯に、小さいながらも、おかしら付きの焼鯛やきだい、それにじると大根なますだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
大豆の炒粉いりこはキナコと謂って今も普通であるが、豆にはごじるや豆腐のために今一つの水浸けの法も行われている。炒り搗きを主とするのは麦類が多かった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「おや、おじいさん、おかいんなさい。さっきからたぬきじるをこしらえてっていましたよ。」
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
匹夫が贅沢ぜいたくに飽いたかのような勿体ない申し分でござるが、以後は朝夕とも、一汁一菜か、せめて二菜にとどめ、それもちさじるか、糠味噌汁ぬかみそじるなどの類にて仰せ付け下さるように
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だしじるのいれもの、猪口、それに白木の割箸わりばしまで、見た目も山家のものらしい。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夕食の食卓しょくたくは、これもやはり地域別に配列され、双方の塾生が一人おきに入りまじって座をめることになっていた。ごちそうはあたたかいさつまじるだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ざまをろ。おばあさんをだましてころして、おじいさんにばばあじるわせたむくいだ。」
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)