水車みずぐるま)” の例文
そのうち、やっと起きあがった警官けいかん加勢かせいにかけつけ、りょううでを水車みずぐるまのようにふりまわして、目に見えぬてきにおどりかかっていった。
私は、まだ、その一つの水車みずぐるまが森の中にまわって、白い花が咲いて、赤い鳥の飛んでいた絵などは、目に残っています……。
白い門のある家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
体量二十貫の同氏の全身を縦横上下に水車みずぐるまの如く振り廻しつつ引き離そうとするので、流石さすがの甘粕氏も必死となり、振り離されまいとのみ努力するうち
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし、だいいち水を落すべき樋がぼろぼろに朽ちていて水車みずぐるまの羽根の白い黴のところからきのこが生え上っているのだから一向に水なんかありそうにも思えない。
時間 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そのまたこわらしい髯首がしばらくの間眼まぐろしく水車みずぐるまの如くに廻転まわっている内に次第々々に小いさく成ッて……やがて相恰そうごうが変ッて……何時の間にか薔薇ばら花掻頭はなかんざし
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あくる日岨道そばみちを伝いますと、山から取った水樋みずどよが、空を走って、水車みずぐるまさっかかります、真紅まっかな木の葉が宙を飛んで流れましたっけ、誰の血なんでございましょう。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
酒の名は、水車みずぐるまと呼ばれた。子供が十四人あった。男の子が六人。女の子が八人。長男は世事に鈍く、したがって逸平の指図どおりに商売を第一として生きていた。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
小広い平地があって、竹林ちくりんのしげったすみに、一けん茅葺屋根かやぶきやねがみえ、裏手うらてをながるる水勢のしぶきのうちに、ゴットン、ゴットン……水車みずぐるま悠長ゆうちょう諧調かいちょうがきこえる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭を貫く流れはかどの前を通ずるみちを横ぎりて直ちに林に入り、林をずれば土地にわかにくぼみて一軒の茅屋くさやその屋根のみを現わし水車みずぐるまめぐれり、このあたりには水車場すいしゃば多し
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
……三番は、平河町ひらかわちょう騎射きしゃ人形、……四番は、山王町の剣に水車みずぐるま、……八番は、駿河町するがちょう春日龍神かすがりゅうじん、……十七番は、小網町こあみちょうの漁船の山車、……四十番が霊岸島れいがんじま八乙女やおとめ人形‥…
船の中の狂乱は、一瞬ごとにその旋回度を増して、山水やまみずに空廻りする水車みずぐるまのような勢い。
「忘れ得ぬ人々」に書いた作者の感慨、武蔵野の郊外をザッと降って通る林の時雨しぐれ水車みずぐるまの月に光る橋のほとりに下宿した若い教員、それらはすべて自分の感じによく似ていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
水車みずぐるまを踏めば廻るばかりである。いつまで踏んでも踏み切れるものではない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おキミは、素早すばやく側の窓を開くと、窓の下に腰をかがめ、右手を水車みずぐるまのように廻すと、何か黒いものをパッと窓外になげた。なにか街路の上で爆発するらしい音がして、スーウと青い光がひらめいた。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水車みずぐるまくる/\めぐりあふことは人目つゝみのせきぐちもなし
おまえのガラスの水車みずぐるま
水仙月の四日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
家の外には雪がちらちらと降って、前の小川の水は独り寂寞せきばくを破ってささやいて流れている他、村のはずれに廻っている水車みずぐるまの音が静かな林や、田の中を通って其処まで聞えて来る。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と揃って、異口同音くちぐちに呼ばわりながら、水車みずぐるまを舞込むごとく、次第びきに、ぐるぐるぐる。……幕へと消える時は、何ものか居て、操りの糸を引手繰ひったぐるようにさっと隠れた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして先ず自分の思いついた画題は水車みずぐるま、この水車はその以前鉛筆で書いたことがあるので、チョークの手始めに今一度これを写生してやろうと、堤を辿たどって上流の方へと、足を向けた。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
吾輩はこのに早く主人夫婦を起してやりたいものだとようやく気が付いたが、さてどうしたら起きるやら、一向いっこう要領を得ん考のみが頭の中に水車みずぐるまの勢で廻転するのみで、何等の分別も出ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……一町ばかりしもに、そこに第一の水車みずぐるまが見えます。四五間さきに水車、また第三の水車、第四、第五と続いたのが見えます。ながれの折曲る処に、第六のが半輪の月形に覗いていました。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
軒の蜘蛛くもの大きなのに、はらりと乗って、水車みずぐるまに霧がかかった風情に見える。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お茶と水とは附いて廻る、駿河台するがだい水車みずぐるまかかったか、と云う。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろ水車みずぐるまのごとくステッキを振廻していた訓導が
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)