此年ことし)” の例文
「へえー」と細君があいのない返事をする。「此年ことしの春突然手紙を寄こして山高帽子とフロックコートを至急送れと云うんです。 ...
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
殊に此年ことしに入ってからはお母さんのき方が頻繁ひんぱんになった。絶えず機会を覗っているらしい。次のような問答は僕の度々洩れ聞くところだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此年ことし二三享徳きやうとくの夏、二四鎌倉の御所ごしよ成氏朝臣しげうぢあそん二五管領くわんれい上杉うへすぎと御中けて、みたちひやう火に跡なく滅びければ、御所は二六総州そうしうの御味方みかたへ落ちさせ給ふより、関の東たちまちに乱れて
かかるたはむれしてはばからず、女も為すままにまかせてとがめざる彼等の関繋かんけいそもそ如何いかに。事情ありて十年来鴫沢に寄寓きぐうせるこの間貫一はざまかんいちは、此年ことしの夏大学にるを待ちて、宮がめあはせらるべき人なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
奈何してツて、那麽あんな馬鹿はない。それや評判が悪いよ、此年ことしの春だつけかナア、下宿してゐた素人屋の娘を孕ませて大騒ぎをつたんだよ、友人なんか仲に入つて百五十円とか手切金を遣つたさうだ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「でも此年ことしになってから宮地さんが手がけて纒まらなかったのは一つもないそうでございますよ。此年は特別に当り年だと仰有っていましたわ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それ問題もんだいだ。なにしろ此年ことし一杯いつぱいまればことだから、まあよくかんがへるさ。おれもかんがへてかう」と宗助そうすけつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところで此年ことしはお父さんの苦労の季節が早く来た。正月の二日の晩に千代子が発熱して、四日には郁子が頭痛を訴えた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その時念のためこの次はいつごろになりますかと岡田さんにうかがいましたら、此年ことしの十月だというお返事であったので、心のうちに春から十月までの日数を大体ってみて
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お父さん、此年ことしはもう仕方ありませんが、来年から是非中学校へやって下さい。僕はもういやです」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
が、三年越しいる客ではあるし、遊んでいる人じゃなし、此年ことしの末にはどうかするからという当人の言訳を信用して、別段催促もしなかったところへ、今度の旅行になった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「二郎を早稲田へやるとお定めになったら、雅男に此年ことし受けさせても宜しいじゃございませんか?」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
だから此年ことしあきれて、うすしもわたかぜが、つらくはだ時分じぶんになつて、またすこ心持こゝろもちわるくなりしても、御米およね夫程それほどにもならなかつた。はじめのうちは宗助そうすけにさへらせなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「心配しているんだけれど、不景気の所為せいか、此年ことしは一向申込がない。困る」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此年ことしの正月頃から取り掛つたが、装置が中々なか/\面倒なのでまだ思ふ様な結果が出てません。夏は比較的堪へ易いが、寒夜になると、大変しのぎにくい。外套を着て襟巻をしてもつめたくて遣り切れない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「去年は知っている校長に牧君を売りつけたが、此年ことしは何とも言って来ない」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それぢや此年ことし暮迄くれまで二十何圓なんゑんづゝかしてるのも無理むりぢやないか」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此年ことしは夏からの約束で、郷里くに絹子きぬこさんが東京のお正月をする為めに一昨日おとといから来ている。大伯父さんとお祖父さんは兄弟で、双方のお父さんは従兄弟いとこ同志だから、絹子さんと僕は又従姉弟になる。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「もう間もなく此年ことしも暮れるが、決心がついたかい?」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此年ことしは三十年ぶりの暑さだってじゃないか」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「僕は此年ことしです」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)