ろう)” の例文
旧字:
大門をはいれば中之町、取っ付きの左側が山田宗順のろう、それと向かい合った高楼はこの遊廓の支配役庄司甚右衛門のいえである。
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あんとか、ていとか、ろうとか風流な名をつけた豪商の寮や、料理屋が、こんもりした樹立ちのなかに、洒落しゃれた屋根を見せている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
範宴は、うしろに立って、びた山門の屋根だの、ろうさまだの、そこから枝をのばしている松の木ぶりだのを眺めて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二年の名誉を負うて立つ生蕃! 三年の王たるライオン! まさにこれ山雨きたらんとして風ろうに満つるのがい
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
江ノ島の江ノ島ろうの二階から、ローリーさんが規定の一点を過ぎる時の浮揚度、潮流の抵抗、湾入の方向、毎日の潮流の速度の変化などを、速度計や、ストップウオッチや
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
旅館ではなくて、別荘のような気持のするこのろうの二階から、有明海を隔てて、肥前の多良岳や、肥後の山々を望み、九十九つくも島に対する明麗めいれいな風光は、旅情を慰むるに十分である。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
すでに地獄谷にくだりみなろうにのぼれり。岩居はと京水とをともなひてかの火をせしむ。
つゝがなくうまいでしといふやうに言問ことゝひの前の人の山をくぐいでて見れば、うれしや、こゝ福岡楼ふくをかろうといふに朝日新聞社員休息所あさひしんぶんしやゐんきうそくじよふだあり、極楽ごくらく御先祖方ごせんぞがた御目おめかゝつたほどよろこびてろうのぼれば
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
春の池ろうある船の歩み遅々ちゝと行くに慣れたるみさぶらひ人
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
帝王は死にたるのちも守られぬ金碧きんぺきろう千年のはく
華やかに彼女に見えて来るものは、築地の上に盛り上がっている、広大なろうにともされている明るい燈火ともしびの色であった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昔、ろうの岸にあった古柳ふるやなぎの名残とかいう空井戸の側に、夜目にもしるきといいたい女が、つまを折って腰帯に結び、手拭の端をつまんで姉様冠あねさんかぶりをしなおしている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに地獄谷にくだりみなろうにのぼれり。岩居はと京水とをともなひてかの火をせしむ。
山雨さんうまさに到らんとして、かぜろうに満つ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
爛漫らんまんと、ろうに灯は入ったが、まだ三筋の柳町に、買手どもの影は見えない宵の口であった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
●さて一人の哥妓げいしや梯上はしごのうへにいでゝしきりに岩居がんきよぶ、よばれてろうにのぼれり。は京水とゝもに此よくす、楼上ろうしやうにははや三弦さみせんをひゞかせり。ゆあみしをはりて楼にのぼれば、すで杯盤はいばん狼藉らうぜきたり。
とあるような情勢にもあったので、都はまさに海嘯つなみの中の一ろうに似ていたのである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
●さて一人の哥妓げいしや梯上はしごのうへにいでゝしきりに岩居がんきよぶ、よばれてろうにのぼれり。は京水とゝもに此よくす、楼上ろうしやうにははや三弦さみせんをひゞかせり。ゆあみしをはりて楼にのぼれば、すで杯盤はいばん狼藉らうぜきたり。