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棘
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いばら
ふりがな文庫
“
棘
(
いばら
)” の例文
露にぬれた牧場の草を踏み分け、
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
と
棘
(
いばら
)
を払ひのけながら、メンデルの峠へ通じる自動車道の、とあるカーヴへ姿を現はしました。
けむり(ラヂオ物語)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そこには
棘
(
いばら
)
が茂って、
青麻頭
(
せいまとう
)
といわれている促織がかくれ、傍に一疋の
蟆
(
がま
)
が今にも躍りあがろうとしているようにしていた。
促織
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
縛られた
耶蘇
(
イエス
)
がピラトの前に引出されて罪に定められ、
棘
(
いばら
)
の
冕
(
かんむり
)
を冠せられ、其面に唾せられ、雨の樣な嘲笑を
浴
(
あ
)
びて、遂にゴルゴダの刑場に
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一径
(
いっけい
)
互
(
たがい
)
に
紆直
(
うちょく
)
し、
茅棘
(
ぼうきょく
)
亦
(
また
)
已
(
すで
)
に
繁
(
しげ
)
し、という句がありまするから、曲がりくねった
細径
(
ほそみち
)
の
茅
(
かや
)
や
棘
(
いばら
)
を分けて、むぐり込むのです。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
二人はあざやかに逃げ去りましたが、最後のひとりは戸惑いして、土手の
棘
(
いばら
)
に首を突ッ込み、まごまごしている様子なので
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
吾子が受領すべきは、
緇
(
くろ
)
き衣と大なる帽となり。かくて後は、
護摩
(
ごま
)
焚きて神に仕ふべきか、
棘
(
いばら
)
の道を走るべきか。そはかれが運命に任せてむ、とのたまふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
サント・シャペル会堂の黄金彫りの
尖頂
(
せんちょう
)
が、花咲ける
聖
(
きよ
)
き
棘
(
いばら
)
が、立ち込んだ屋並みから突き出ていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
棘
(
いばら
)
にかき破られてその血で白の花弁を紅に染めたというオスカー・ワイルドの小話を語り始めた。
フランセスの顔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
イエスを
戸外
(
そと
)
へ引き出した。
棘
(
いばら
)
の
冕
(
かんむり
)
を頭に冠せ、紫の袍を肩へ着せ、そうして一整に声を上げた。
銀三十枚
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
後天にのみ注げる眼はダルヰンが論を守りても事足るべけれどそれにて造化は盡されず。
棘
(
いばら
)
は誰か磨き成したる。羽は誰か
畫
(
ゑが
)
き成したる。棘の同じさまなるは姑く置かむ。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
キリストと共に
棘
(
いばら
)
の
冕
(
かんむり
)
を
冠
(
かむら
)
しめられて信者は彼と共に義の冕を戴くの特権に与かるのである。
聖書の読方:来世を背景として読むべし
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
棘
(
いばら
)
や木の枝が、こう、ご婦人の寝乱れ髪って工合に繁っていて、そのなかには
鶫
(
つぐみ
)
もいれば虎もいる。そいつを
藪
(
やぶ
)
のそとからぶっ放す……檻のなかの獣を撃つより楽なもんです。
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
葦
(
あし
)
に似た
禾本
(
かほん
)
科の植物類が丈深く密生して、多少
凸凹
(
でこぼこ
)
のある岸の平地から後方鳥喰崎の丘にかけて、
棘
(
いばら
)
のような細かい雑草や、ひねくれた灌木だの赤味を帯びた羊歯類の植物だのが
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
この中には前に挙げた「
黄昏
(
たそがれ
)
を横にながむる月細し」のごとく、完全なる無声の詩もあるが、一方にはまた「
棘
(
いばら
)
の中のギス」およびその次の句のような、耳に訴えようとした情景もある。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
故意に裏面に潜んでいる
棘
(
いばら
)
のような計謀を、露わに
曝
(
さら
)
け出したような気がしたけれども、しかし彼の巧妙な
朗誦法
(
エロキューション
)
は、妙に筋肉が硬ばり、血が凍りつくような不気味な空気を作ってしまった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
棘
(
いばら
)
のひかげへすみれぐさ
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
縛られた
耶蘇
(
イエス
)
がピラトの前に引出されて罪に定められ、
棘
(
いばら
)
の
冕
(
かんむり
)
を冠せられ、其
面
(
おもて
)
に唾せられ、雨の様な嘲笑を浴びて、遂にゴルゴタの刑場に
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それは、
七宝
(
しっぽう
)
の珠玉や金銀のかがやかしいものではなかった、
氷柱
(
つらら
)
の
簪
(
かんざし
)
と
棘
(
いばら
)
の
環
(
わ
)
にひとしいものである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鸚鵡
(
おうむ
)
のような一羽の
秦吉了
(
しんきちりょう
)
が飛んで来て
棘
(
いばら
)
の上にとまって、
翼
(
つばさ
)
をひろげて二人を
覆
(
おお
)
った。玉は下からその足を見た。一方の足には一本の爪がなかった。玉は不思議に思った。
阿英
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
二日過ぎて、ベルナルドオは我頸を
擁
(
いだ
)
き、我手を
把
(
と
)
りていふやう。アントニオよ。今こそは我心を語らめ。桂冠の我頭に觸れたる時は、われは
百千
(
もゝち
)
の
棘
(
いばら
)
もて刺さるゝ如くなりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
綿と
棘
(
いばら
)
とに身よそおいした
薊
(
あざみ
)
の
亡骸
(
なきがら
)
、針金のように地にのたばった霜枯れの蔓草、風にからからと鳴るその実、糞尿に汚れ返ったエイシャー種の九頭の乳牛、飴のような色に氷った水たまり
フランセスの顔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
先頃からそれがしもつらつら思うに、
枳棘叢中
(
ききょくそうちゅう
)
鸞鳳
(
らんほう
)
の
栖
(
す
)
む所に非ず——と昔からいいます。
棘
(
いばら
)
や
枳
(
からたち
)
のようなトゲの木の中には良い
鳳
(
とり
)
は自然栖んでいない——というのです。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
棘
(
いばら
)
に面を
傷
(
きずつけ
)
られ、梢に袖を裂かれつゝも、幾畝の葡萄畠を限れる低き石垣を乘り越え乘り越え、指すかたをも分かでモンテ、マリヨの丘を走り下るに、聖ピエトロの御寺の火は
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
しかも耳は鳴り、
唾液
(
だえき
)
は
渇
(
かわ
)
き、口中に
棘
(
いばら
)
を
咬
(
か
)
むようなお心地はあらせられぬか
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大熱のため口中は
渇
(
かわ
)
いて
棘
(
いばら
)
を含むがごとく、傷口は激痛して時々五体をふるわすほどだったが、豪毅な精神力はそれを抑えて、人には何気なく見えるほど平然と囲碁にまぎらわしているのだった。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“棘”の解説
棘(とげ、刺、朿)は、生物または人工物の表面における、固く頂点の鋭い円錐形の突起のこと。生物体または人工物を保護する役割で存在することが多い。また、比喩的に心に傷を与えるような言動に対して「棘のある」という言い方もする。前者の棘も後者の棘も、必要以上に多いと思われるときは「とげとげ」という擬態語で修飾される。
(出典:Wikipedia)
棘
漢検1級
部首:⽊
12画
“棘”を含む語句
荊棘
棘々
棘立
荊与棘塞路
棘然
枳棘
荊棘何無情
棘皮
空棘魚
棘蛇
空棘魚科
苛棘
茅棘
草棘
荊棘中
荊棘何妬情
荊棘路
鉤棘
頑石叢棘
𦮯棘
...