板橋いたばし)” の例文
合せしからは浮々うか/\江戸におち付ては居るまじ翌日あすくらきより起出おきいでて其の方は品川の方より段々だん/\に尋ぬべし我は千ぢゆ板橋いたばしなど出口々々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おつぎは二ちやうばかり上流じやうりう板橋いたばしわたつてつて、やうやくのことでえだげてそのはりをとつた。さうしてまた與吉よきちぼうけてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昭和通しょうわどおりに二つ並んで建ちかかっている大ビルディングの鉄骨構造をねらったピントの中へ板橋いたばしあたりから来たかと思う駄馬だばが顔を出したり
カメラをさげて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
小石川こいしかわ白山はくさん神社の坂を下りて登った処は本郷で、その辺を白山うえといいます。今残っている高崎屋の傍から曲って来て、板橋いたばしへ行く道になります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
東山道とうさんどうとも言い、木曾街道六十九つぎとも言った駅路の一部がここだ。この道は東は板橋いたばしを経て江戸に続き、西は大津おおつを経て京都にまで続いて行っている。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから白山通はくさんどおりへ出まして、駕籠かごを雇い板橋いたばしへ一泊して、翌日出立しゅったつを致そうと思いますと、秋雨あきさめ大降おおぶりに降り出してまいって、出立をいたす事が出来ませんから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
軒挑灯のきちょうちんを連ねし仲之町の茶屋もその洒脱しゃだつなる筆致のもとにはおのずから品川板橋いたばし等の光景と選ぶ所なし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
頃日このごろく——當時たうじ唯一ゆいつ交通機關かうつうきくわん江戸えど三度さんどとなへた加賀藩かがはん飛脚ひきやく規定さだめは、高岡たかをか富山とやまとまり親不知おやしらず五智ごち高田たかだ長野ながの碓氷峠うすひたうげえて、松井田まつゐだ高崎たかさき江戸えど板橋いたばしまで下街道しもかいだう
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お定は以前板橋いたばしで勤め奉公をしていた者で、かの石原の松蔵の情婦であった。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
千住せんじゅだの板橋いたばしだのと、遠くから来ているものもある。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
急ぐほどに日ならずして板橋いたばしの宿に着にけり然るに吾助江戸は始てなれば何れが本郷にや西も東も分らぬ故小倉にてきゝたる通り本郷二丁目にて呉服商賣ごふくしやうばい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貧しい本所ほんじよの一此処こゝきて板橋いたばしのかゝつた川向かはむかうには野草のぐさおほはれた土手どてを越して、亀井戸村かめゐどむらはたけ木立こだちとが美しい田園の春景色はるげしきをひろげて見せた。蘿月らげつは踏みとゞまつて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
江戸の中心地まで二里と聞いただけでも、三人が踏みしめて行く草鞋わらじの先は軽かった。道中記のたよりになるのも板橋いたばしまでで、巣鴨すがも立場たてばから先は江戸の絵図にでもよるほかはない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
板橋いたばし欄干らんかん俯向うつむいて尺八ひとよぎり一人ひとりた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)