最惜いとをし)” の例文
ふまでもく、面影おもかげ姿すがたは、古城こじやう天守てんしゆとりこつた、最惜いとをしつまのまゝ、と豁然くわつぜんとしてさとると同時どうじに、うでにはをのちからこもつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
満枝は荒尾の立てる脚下あしもとしとね推付おしつけて、に還さじとあるじにも劣らず最惜いとをしむ様なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
養ふ事をつとの世に在し時よりもあつかりしかば姑女の思ひけるはよめいまだ年若くしてやもめとなり一人の子供もなきに久敷ひさしく我に事へて孝行成は嬉けれどもかくて年寄ば頼む方もなくならんこそ最惜いとをしけれ孝行なる嫁の志操こゝろざし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しか労力らうりよく仕払しはらふべき、報酬はうしうりやう莫大ばくだいなるにくるしんで、生命いのちにもへて最惜いとをし恋人こひびとかりうばふて、交換かうくわんすべき条件でうけんつる人質ひとじちたに相違さうゐない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
忍び書殘かきのこし參らせ候さてたう御屋敷の殿樣とのさま親子おやこの御なか兎角とかくしく去年夏中より藤五郎樣御事座敷牢ざしきらう住居すまひにて召上りものもろくろく進ぜられざる程の仕合しあはせ御最惜いとをしき事申ばかりも御座なく又御弟子おとゝこ藤三郎樣も殿樣奧樣の御にくしみ深くいまだ御幼少えうせうの御身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大目玉おほめだまで、天守てんしゆにらんで、ト其処そこられてござるげな、最惜いとをしい、魔界まかい業苦がうくに、なが頭髪かみのけ一筋ひとすぢづゝ、一刻いつこく生血いきちらすだ、奥様おくさま苦脳くなうわすれずに、くまでれさ、たふれたら介抱かいはうすべい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)