-
トップ
>
-
最惜
>
-
いとをし
言ふまでも
無く、
其の
面影、
其の
姿は、
古城の
天守の
囚と
成つた、
最惜い
妻を
其のまゝ、と
豁然として
悟ると
同時に、
腕には
斧を
取る
力が
籠つて
満枝は荒尾の立てる
脚下に
褥を
推付けて、
実に還さじと
主にも劣らず
最惜む様なり。
養ふ事
夫の世に在し時よりも
厚かりしかば姑女の思ひけるは
嫁は
未年若くして
鰥となり一人の子供もなきに
久敷我に事へて孝行成は嬉けれども
斯て年寄ば頼む方もなくならんこそ
最惜けれ孝行なる嫁の
志操を
然も
其の
労力に
仕払ふべき、
報酬の
量の
莫大なるに
苦んで、
生命にも
代へて
最惜む
恋人を
仮に
奪ふて、
交換すべき
条件に
充つる
人質と
為たに
相違ない。
忍び
書殘し參らせ候
扨當御屋敷の
殿樣御
親子の御
中兎角惡しく去年夏中より藤五郎樣御事
座敷牢御
住居にて召上りものもろくろく進ぜられざる程の
仕合せ御
最惜き事申ばかりも御座なく又御
弟子藤三郎樣も殿樣奧樣の御
惡しみ深く
未だ御
幼少の御身を
大目玉で、
天守を
睨んで、ト
其処に
囚られてござるげな、
最惜い、
魔界の
業苦に、
長い
頭髪一筋づゝ、
一刻に
生血を
垂らすだ、
奥様の
苦脳を
忘れずに、
飽くまで
行れさ、
倒れたら
介抱すべい。