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晦冥
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かいめい
ふりがな文庫
“
晦冥
(
かいめい
)” の例文
昭和十六年一月十四日閣議決定の発表に「
肇国
(
ちょうこく
)
の精神に反し、皇国の主権を
晦冥
(
かいめい
)
ならしむる
虞
(
おそれ
)
あるが如き国家連合理論等は之を許さず」
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
我々は生れてこの方、まだこれほどまでに凄絶な音響も、またこれほどまでに
晦冥
(
かいめい
)
を極めた海洋の凄まじさにも接したことがなかった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
極北の神秘「
冥路の国
(
セル・ミク・シュア
)
」は実在せり! エ・ツーカ・シューは死体のまま橇を駆り、
晦冥
(
かいめい
)
の吹雪をつき氷の
涯
(
はて
)
へと呑まれたのだ。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その夜の靄は南岸の三江地方だけでなく、江北一帯もまったく深い
晦冥
(
かいめい
)
につつまれて、陣々の
篝火
(
かがりび
)
すらおぼろなほどだったから
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天地は荒唐
晦冥
(
かいめい
)
の中に
繽紛
(
ひんぷん
)
と天華
乱墜
(
らんつい
)
するような光景なり行動なりになってこそ、いまのわたくしの気分に相応わしくあり
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
やがては峰も谷も、すすきも尾花も一様に夜霧に
蔽
(
おお
)
われて、人も駕籠もその中に没入して、五十丁峠は
晦冥
(
かいめい
)
の色に塗りつぶされてしまいました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
まさに天地
晦冥
(
かいめい
)
の大景観であったにちがいない。原子爆弾の水底爆発など、これと比べては、玩具のようなものである。
黒い月の世界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
一時に
濛々
(
もうもう
)
と、凍えた煙を噴きあげて空間を
晦冥
(
かいめい
)
に包んでしまった。刺すような冷気が、衣類の織りめから千本の鋭いきっ
尖
(
さき
)
となって肌につき刺さった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「すなわち
高天原
(
たかまのはら
)
皆暗く、
葦原中国
(
あしはらのなかつくに
)
ことごとに
闇
(
くら
)
し」というのも、噴煙降灰による天地
晦冥
(
かいめい
)
の状を思わせる。
神話と地球物理学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
まず懐疑の暗雲に閉じこめられて天地
晦冥
(
かいめい
)
の間に時々光明の閃光に接し、その光明次第に増すと反比例して暗雲徐々として去り、
遂
(
つい
)
に全光明に接するに至るのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
すると、にわかに鳴動が起こり、壺が地中から舞い上り、同時に天地は
晦冥
(
かいめい
)
となった。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いまは大方に
快癒
(
かいゆ
)
、
鬱散
(
うっさん
)
のそとあるきも出来候との事、御安心下され
度
(
たく
)
候趣、さて、ここに一昨夕、大夕立これあり、孫八老、
其
(
そ
)
の
砌
(
みぎり
)
某所墓地近くを通りかかり候折から、天地
晦冥
(
かいめい
)
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
衣川合戦の前の日に天地
晦冥
(
かいめい
)
にして人の顔黄に見え、北上川逆流して大蛇が現出したなどという点まで一つであるのに、談話の骨子ともいうべき部分が、他の『清悦物語』とは異なっている。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
電車の行く先もって天地
晦冥
(
かいめい
)
、ガラガラピシャン! と、今にも顔の上へ落下してくるかと、安き心地もなく電車の中で首を
竦
(
すく
)
めていた。
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そのうちに、時ならぬ雷鳴が、
因幡
(
いなば
)
から
伯耆
(
ほうき
)
ざかいの山岳を
晦冥
(
かいめい
)
にして鳴りはためいた。山国のいかずちは、都のそれと一つにも思えない。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
越
(
こ
)
し方のことを考えても
縹眇
(
ひょうびょう
)
とした無限の中に融け、行く末のことはいよ/\思い定められぬ
晦冥
(
かいめい
)
の中に
暈
(
ぼ
)
けております。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
お角へ沙汰をすれば、あの女は一議に及ばずここへやって来る。お絹と
面
(
かお
)
を合わせるようなことにでもなれば、この根岸の天地が
晦冥
(
かいめい
)
の
巷
(
ちまた
)
になる。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし気が付くと、どうやらこれが
眉唾
(
まゆつば
)
のもののようにも思われてくる。「大地軸孔」のしたの
晦冥
(
かいめい
)
国の女なんて、どうもこりゃ芝居がすぎるようだ。
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
天地
晦冥
(
かいめい
)
。よろぼい上るもの二三人石段に
這
(
は
)
いかかる。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
黄河は
逆巻
(
さかま
)
き、大山は崩れ、ふたたび天地
開闢
(
かいびゃく
)
前の
晦冥
(
かいめい
)
がきたかと思われた。袁紹は
甲
(
よろい
)
を着るいとまもなく、
単衣帛髪
(
たんいきんはつ
)
のまま馬に飛び乗って逃げた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と思わず
嘆声
(
たんせい
)
を挙げてやや
晦冥
(
かいめい
)
になりかけて来た水上三尺の辺を
喰
(
く
)
い付きそうな表情で見つめた。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
天地
晦冥
(
かいめい
)
して雷電
轟
(
とどろ
)
き風雨
怒
(
いか
)
る。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
勝つと見えれば崩れ、敗れたかと見れば突出し、いずれの旗色がよいのやら、ややしばらくは
晦冥
(
かいめい
)
の
修羅
(
しゅら
)
だった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども煙が止まったと同時に降り出した雪には何かしら善兆らしい感じが受取られた。
晦冥
(
かいめい
)
の天地にはじめて純白の色を見出すのも人々には嬉しかった。たくさん村の人が表を往来し出した。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして依然、大波天にみなぎり、乱雲のあいだからほのかな月光さえさして、一瞬は晃々と冴え、一瞬は青白い
晦冥
(
かいめい
)
となり、悽愴の気、刻々とみちていた。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世阿弥
(
よあみ
)
の消息をつきとめ、阿波の密境を探ろうとする中心力を失ってしまい、すべてはもとの
晦冥
(
かいめい
)
に帰って、遂に、俵一八郎や常木
鴻山
(
こうざん
)
なども、あのまま
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
で、魏の士気はいやがうえにも振い、江北江東の天、ために
晦冥
(
かいめい
)
、戦気紅日を
蔽
(
おお
)
い、殺気地軸をゆるがした。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昼ながら天地は
晦冥
(
かいめい
)
となり、耳に聞えるのは何か、眼に見えるのは何か、一瞬は分らなくさえなって、前にも出ず、後にも
退
(
ひ
)
かず、ただ槍先ばかりそろえて
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
口に
魔符
(
まふ
)
を噛み、髪をさばき、
印
(
いん
)
をむすんでなにやら呪文を唱えている容子だったが、それと共に烈風は益〻つのって、
晦冥
(
かいめい
)
な天地に、人の形や魔の形をした赤、青
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ドドドドドド……ッ——と
地震
(
ない
)
のような
轟音
(
ごうおん
)
は、その一
瞬
(
しゅん
)
に、あたりを
晦冥
(
かいめい
)
にしてしまった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
木の間を縫い、芝地の崖を
踏
(
ふ
)
み
辷
(
すべ
)
りしながら、いちどに敵の幕屋へ攻めかかってゆく人影の上へ、時折、青白い
雷光
(
いなずま
)
がひらめいて、白い雨、暗い風、まったく
晦冥
(
かいめい
)
な天地とはなった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのため、ちょうど官符をうけた諸地の地殻が、幾回となく、
地震
(
なえ
)
のように鳴動した。天地いちめん、ふしぎな微蛍光をおびた
晦冥
(
かいめい
)
につつまれ、雪かとまごう降灰が、幾日となく降りつづいた。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天地は灰色の
晦冥
(
かいめい
)
につつまれていた。
日本名婦伝:大楠公夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
晦
漢検準1級
部首:⽇
11画
冥
常用漢字
中学
部首:⼍
10画
“晦冥”で始まる語句
晦冥国
晦冥濛々
晦冥陰慘