おも)” の例文
新字:
かれほとん脚力きやくりよくおよかぎはしつた。かれはおつぎがうしろつゞかぬことを顧慮こりよするいとまもなかつた。かれ主人しゆじんおもつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ひながらいましもなつかしき母君はゝぎみうわさでたるに、にしことどもおもおこして、愁然しゆうぜんたる日出雄少年ひでをせうねん頭髮かしらでつゝ
昨年の初夏此處を通つて初めて人懷かしいやうな思ひが胸に溢れて、軒竝の行燈が一々暖かい呼吸をしてゐるやうに覺えた其時のおもひが又胸に湧く。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
我母をおもひ、ドメニカをおもひ、フランチエスカの君をおもひ、我記憶の常に異ならざるを知りぬ。さればわが見る所のものは、必ず幻影に非ざるならん。我はもとの我なり。
大事と思ふ心も何時しか忘れて小夜衣の顏を見ぬ夜は千しうおもひにて種々しゆ/″\樣々さま/″\と事にかこつけ晝夜のわかちもなく通ひける實に若き者のおぼれ安きは此道にして如何なる才子さいしも忽ち身をほろぼし家産かさん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれ追ひ到りましし時に、待ちおもひて、歌ひたまひしく
おもへば琵琶のみづうみ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
少年せうねんよわひやうやく八さいこの悲境ひきようちて、回顧くわいこしてあのやさしかりし母君はゝぎみ姿すがたや、ネープルスでわかれた父君ちゝぎみことなどをおもうかべたときは、まあどんなにかなしかつたらう、いま
たのしみにくらし給へと種々いろ/\なだめつすかしついさめると雖もお光は更に思ひ止るべき所存しよぞんなければ猶押かへして頼みけるに清右衞門一ゑん取用ひ呉ざれば詮術せんすべなさに凄々すご/\と我が屋へこそ立戻たちもどれど熟々つく/″\思へばおもふ程無念悔しさ止難やみがたければ店請人たなうけにん清右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)