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憂欝
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ゆううつ
ふりがな文庫
“
憂欝
(
ゆううつ
)” の例文
母はさびしくわらった、千三はたまらなく苦しくなった、いままで胸の底におさえつけておいた
憂欝
(
ゆううつ
)
がむらむらと雲のごとくわいた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
という噂が、だんだん確からしさを帯びて来て、住民達の
憂欝
(
ゆううつ
)
と、焦燥と、自棄の中に街全体を
落
(
おち
)
つきのない騒然たるものにしていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
酒に弱い私は、じき真赤になって、すると私はいつも却って
憂欝
(
ゆううつ
)
になってしまうのだが、余り口も利かず、静子の顔ばかり眺めていた。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雪は、時々、彼等の
脛
(
すね
)
にまで達した。すべての者が
憂欝
(
ゆううつ
)
と不安に襲われていた。中隊長の顔には、焦慮の色が表われている。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
私は隠謀があばかれたもしくは野心がすっぱ抜かれた人のような心持で、腹立たしいそして不安な
憂欝
(
ゆううつ
)
の中を
彷徨
(
ほうこう
)
した。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
▼ もっと見る
一般の健康状態はさて
措
(
お
)
き、ある局部が不良なるために
卑屈
(
ひくつ
)
となり
引込
(
ひっこみ
)
勝ちとなり、
憂欝
(
ゆううつ
)
にに沈む傾向がありはせぬか。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
あるいは
憂欝
(
ゆううつ
)
となって、その日その日の思想にいちじるしい影響をおよぼすことなどはつねに人の知るとおりであるが、これらを見ても大脳の働きは
脳髄の進化
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
ヴォルフの歌はそれだけ技巧的で、
憂欝
(
ゆううつ
)
で、
素人耳
(
しろうとみみ
)
には、まことに始末の悪いものであるが、そこがまた、ヴォルフの良いと言われる点でもあるのだ。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
「そいつを聞かれると、大いに
憂欝
(
ゆううつ
)
になるのですがねエ」と大江山課長は禿かかった
前額
(
まえびたい
)
をツルリと撫であげた。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかし彼はまだ悲観する事を知らなかった。発育に伴なう彼の生気は、いくら抑え付けられても、下からむくむくと頭を
擡
(
もた
)
げた。彼は遂に
憂欝
(
ゆううつ
)
にならずに済んだ。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
南京藻
(
なんきんも
)
の浮かんだ大溝はいつも悪臭を放っていた。彼は
勿論
(
もちろん
)
こう言う町々に
憂欝
(
ゆううつ
)
を感ぜずにはいられなかった。しかし又、本所以外の町々は更に彼には不快だった。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
瞬間、
憂欝
(
ゆううつ
)
な気持ちがかぶさって来て、前にいる大師の顔を見るのが、気の毒な様に思われる。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
爾来
(
じらい
)
杉右衛門は
憂欝
(
ゆううつ
)
になった。自分の家の
囲炉裡
(
いろり
)
の側からめったに離れようとはしなかった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
村川は、ショパンのワルツを聴きながら、スッカリ
憂欝
(
ゆううつ
)
になってしまった。倭文子が、それほど京子を
憚
(
はばか
)
っている以上、自分がどれほど彼女を愛しても絶望に違いないと思った。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
元気
(
げんき
)
のなかった、
憂欝
(
ゆううつ
)
な
青木
(
あおき
)
の
葉
(
は
)
も
青
(
あお
)
い
空
(
そら
)
をながめるように、
頭
(
あたま
)
をもたげました。
赤
(
あか
)
い
実
(
み
)
までがいきいきして、ちょうど、さんごの
珠
(
たま
)
のように、つやつやしく
輝
(
かがや
)
いて
見
(
み
)
えたのです。
小さな草と太陽
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「そう。全く
憂欝
(
ゆううつ
)
になるわよ。男は四十からが盛りだからいいけれど、女はもう上ったりだわ。」と何のはずみだか肩を張って大きな息をしたのが、どうやら男には
溜息
(
ためいき
)
をついたように思われた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
貧しいがために人がその人格を無視されていることに対し、人並以上の
憤懣
(
ふんまん
)
を感ぜずには居られない私である。私はこうした雰囲気に包まれて、眼を開けて居られないほどの不快と
憂欝
(
ゆううつ
)
を味った。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
暗い
憂欝
(
ゆううつ
)
はかれの心を
閉
(
と
)
ざした。かれは自分の影法師がいかにも
哀
(
あわ
)
れに細長く垣根に屈折しているのを見ながらため息をはいた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
明るい快活な明智小五郎ではあったが、彼とても、探偵事件がうまく運ばぬ様な時には、
憂欝
(
ゆううつ
)
に沈み込むこともあるのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
朝から晴渡った日だったが、
孫
(
そん
)
軍曹は、
憂欝
(
ゆううつ
)
な顔をして、長剣を靴の
踵
(
かかと
)
で
蹴
(
け
)
りながら、鉱区を見廻っていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
彼は疲れて
憂欝
(
ゆううつ
)
になっていた。太陽が、地球を見棄ててどっかへとんで行っているような気がした。こんな状態がいつまでもつづけばきっと病気にかかるだろう。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
……その
憂欝
(
ゆううつ
)
からお心が
荒
(
すさ
)
み、継友様には再三家臣をお手討ちなされましたが、その中に、平塚刑部様という、御用人があり、生前に建てた庄内川近くの
別墅
(
やしき
)
へ、ひどく執着を持ち
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
だが、それに引きかえ、観客席のQX30は、
面
(
おもて
)
こそ作り笑いに
紛
(
まぎ
)
らせているが、胸の
裡
(
うち
)
は
鉛
(
なまり
)
を呑んだように
憂欝
(
ゆううつ
)
に
閉
(
と
)
ざされていた。そのわけは彼の手に握られたプログラムにあった。
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
たとえば或悲劇の芸術的価値を否定するのに、悲惨、不快、
憂欝
(
ゆううつ
)
等の非難を加える事と思えばよろしい。又この非難を逆に用い、幸福、愉快、軽妙等を欠いていると
罵
(
ののし
)
ってもかまいません。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、そんな
憂欝
(
ゆううつ
)
な顔をしていらっしゃるのね。お気の毒ですわ。アア、いいことがある。あたしね、先生の代理にお見舞に行って上げますわ。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
アメリカから一億
弗
(
ドル
)
……それも雲南のドルで八十億ドルにもなる
借款
(
しゃっかん
)
のかたに、この地方の
錫
(
すず
)
だの色々のものをとられるので、坑夫を集めるのに
大童
(
おおわらわ
)
だと云う話にひどく
憂欝
(
ゆううつ
)
にされた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
「しかしそれはぼくらの力でどうすることもできないことだ、しずかに運命を待とうじゃないか、きみの
憂欝
(
ゆううつ
)
な顔をかれらに見せてくれるなよ、かれらはきみをなにより信頼してるんだから」
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
如何に又グラウンドのポプラアは
憂欝
(
ゆううつ
)
な色に茂っていたであろう。信輔は其処に西洋歴史のデエトを、実験もせぬ化学の方程式を、欧米の一都市の住民の数を、——あらゆる無用の小智識を学んだ。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼の顔からは
憂欝
(
ゆううつ
)
が消え、新しく希望が現われたのである。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
慌
(
あわ
)
てて、仮装を中止して見たところで、今更ら何の
甲斐
(
かい
)
もなかった。夫婦の間には、いつの間にか妙な隔意を生じていた。細君はともすれば
憂欝
(
ゆううつ
)
になった。
一人二役
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ふたりは思い思いの
憂欝
(
ゆううつ
)
をいだいて家へ帰った、母は戸口に立ちどまって深い
溜
(
た
)
め
息
(
いき
)
をついた、かの
女
(
じょ
)
は
伯母
(
おば
)
のお
仙
(
せん
)
をおそれているのである、伯父は親切だが伯母はなにかにつけて
邪慳
(
じゃけん
)
である
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
彼の後ろの
襖
(
ふすま
)
が、けたたましく開け放されなかったら、そうして「お
祖父様
(
じいさま
)
ただいま。」という声とともに、柔らかい小さな手が、彼の頸へ抱きつかなかったら、彼はおそらくこの
憂欝
(
ゆううつ
)
な気分の中に
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
聞いてみると、南田が自殺の直前、虫歯の痛みをとめてもらいに来たのは事実で、しかし、歯の痛みだけでなく、何か非常に
憂欝
(
ゆううつ
)
な様子だったというのです。
妻に失恋した男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
年少時代の
憂欝
(
ゆううつ
)
は全宇宙に対する
驕慢
(
きょうまん
)
である。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わしはちょっと
憂欝
(
ゆううつ
)
になって、何気なく振向くと、そこへ、大輪の
薔薇
(
ばら
)
の花が咲き出した様に、瑠璃子が入って来た。それを見ると、わしの憂欝はどこへやら、けし飛んでしまった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“憂欝”の意味
《名詞》
憂欝(ゆううつ)
不安や心配で気がふさぐこと。
(出典:Wiktionary)
憂
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
欝
部首:⽊
25画
“憂欝”で始まる語句
憂欝病
憂欝症
憂欝性
憂欝狂
憂欝的