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御一所
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ごいつしよ
「
恐入りました。
何うぞ
此方へ。
貴方、
御一所に、
後生ですから。……
背後から
追掛けて
來るやうで
成らないんですもの。」
剛さんは
如何なすつたでせう、
今夜はお帰りの日取なんだが、今頃までお帰りないのは、
大方此の雨でお泊りのでせう、お一人なら雨や雪に
頓着なさる
男ぢやないけれど、お友達と
御一所では
『それでは
其所いらまで
御一所に
歩るきませう。』
殊に
此頃の
夜は
長し、
東京を
出る
時から
一晩の
泊が
気になつてならない
位、
差支へがなくば
御僧と
御一所に。
お
懐しい。
私は
貴下が
七歳の
年紀、お
傍に
居たお
友達……
過世の
縁で、
恋しう
成り、いつまでも/\、
御一所にと
思ふ
心が、
我知らず
形に
出て、
都の
如月に
雪の
降る
晩。
(
厭?
仕様がありませんね、それぢや
御一所に
召しあがれ。
貴僧御免を
蒙りますよ。)
奇なる
哉、
更に
一時間いくらと
言ふ……
三保の
天女の
羽衣ならねど、
身にお
寶のかゝる
其の
姉さんが、
世話になつた
禮かた/″\、
親類へ
用たしもしたいから、お
差支へなくば
御一所に
『
御一所では
無かつたのでございますか。』