家居いへゐ)” の例文
家居いへゐの作りさま他所にかはれり、その事は下にいふべし)しばしこゝにやすらひて立出しに、これよりまづ猿飛橋さるとびばしを見玉へとて案内あないさきへ立てゆく。
入口の方から番傘がのぞいて、お勝手の方から柄杓ひしやく俎板まないたが覗いてゐる世帶、淺ましくも凄まじい家居いへゐですが、八五郎にのしかゝるやうに啖呵たんかを浴びせてゐる女は見事でした。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
ひととせ下谷したやのほとりに仮初かりそめ家居いへゐして、商人あきびとといふ名も恥かしき、ただいさゝかの物とりならべて朝夕あさゆふのたつきとせし頃、軒端のきばひさしあれたれども、月さすたよりとなるにはあらで
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
出口でぐちやなぎ振向ふりむいてると、もなく、くるまは、御神燈ごしんとうのきけた、格子かうしづくりの家居いへゐならんだなかを、常磐樹ときはぎかげいて、さつべにながしたやうな式臺しきだいいた。明山閣めいざんかくである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
み冬づく丘の家居いへゐに立つけぶり湯氣おほけれやあたたかく見ゆ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
新しき家居いへゐかど桜花はな咲けどを暗み提灯ちやうちんつけてでけり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
唐国からくにに名を残しける人よりもゆくへ知られぬ家居いへゐをやせん
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鰐淵が家居いへゐは全く形を失へるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
隱して云ふに左らばと此宿このしゆくに泊る梅花道人茶店に待てありしが一つになり見ぬ事とて早足の自慢大げさなり脇に羽の生えた跡もなけれどさて宿にりて見れば家名いへなは忘れしが家居いへゐ廣く清らかにて隣りに大きな櫛店くしみせもあり宿しゆく中第一の大家とは知られぬ湯に入り名物の櫛を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
こゝを以て家居いへゐつくりはさら也、万事よろづのこと雪をふせぐをもつはらとし、ざいつひやしちからつくす事紙筆しひつしるしがたし。農家のうかはことさら夏の初より秋の末までに五こくをもをさむるゆゑ、雪中にいねかる事あり。
み冬づく丘の家居いへゐに立つけぶり湯気おほけれやあたたかく見ゆ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春のなかばにいたれば小雨ふる日あり、此時にいたれば晴天はもとより、雨にも風にも去年より積雪つもりたるゆきしだい/\にきゆるなり。されども家居いへゐなどはいぬゐに(北東の間)あたる方はきゆる事おそし。
春のなかばにいたれば小雨ふる日あり、此時にいたれば晴天はもとより、雨にも風にも去年より積雪つもりたるゆきしだい/\にきゆるなり。されども家居いへゐなどはいぬゐに(北東の間)あたる方はきゆる事おそし。
(少しの雪は土をかけ又は灰をかくればはやくきゆ)そも/\去年冬のはじめより雪のふらざる日もそらくもりてこゝろよはれたるそらを見るはまれにて、雪に家居いへゐ降埋ふりうづめられ手もとさへいとくらし。