宣旨せんじ)” の例文
にわかな宣旨せんじ帰洛きらくのことの決まったのはうれしいことではあったが、明石あかしの浦を捨てて出ねばならぬことは相当に源氏を苦しませた。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それがしかも、尊氏誅伐ちゅうばつ宣旨せんじを南朝から申しうけて、公然と、義父直義ただよしあだともとなえているのである。小癪こしゃくとも何とも言いようはない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに宣旨せんじが二つ下ったとして、それを役人が取り違えて鎮西へ遣わさるべき宣旨を坂東へ下し、坂東へ遣わさるべき宣旨を
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とうとう宣旨せんじを下して、直接右大臣家に働きかけたのである。こう事が公けになっては、公卿達も黙っていられない。
○さて時平が毒奏どくそうはやくあたりて、同月廿五日左降さがう宣旨せんじ下りて右□臣のしよくけづり、従二位はもとのごとく太宰権帥だざいごんのそつとし(文官)筑紫つくし左遷させんに定め玉へり。
十七の時にはもう国司の宣旨せんじが下った。ところが筑紫へ赴任する前に、ある日前栽せんざいで花を見ていると、内裏だいりを拝みに来た四国の田舎人たちが築地ついじの外で議論するのが聞こえた。
宣旨せんじを御請けしないことに致しましょう、但し天下は皆王土であり、愚僧も王民の一人である上は、もしお召しの宣旨が数度に及んだら、二度まではお断り申上げるけれども
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
八大竜王はちだいりゅうおう鳴渡なりわたりて、稲妻いなずまひらめきしに、諸人しょにん目を驚かし、三日の洪水を流し、国土安穏あんおんなりければ、さてこそ静のまいに示現ありけるとて、日本一と宣旨せんじたまわりけると、うけたまわそうろう。——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宣旨せんじと申しながらこの事こそ力及びはべらね、隣国進み襲うを闘わずば存命すべからずと申しはべりければ、大王ひそかに后を呼んで、我れ国王として合戦を好まば多くの人死せんとす
高倉たかくらみや宣旨せんじ木曾きそきたせきひがしに普ねく渡りて、源氏興復こうふくの氣運漸く迫れる頃、入道は上下萬民の望みにそむき、愈〻都を攝津の福原にうつし、天下の亂れ、國土の騷ぎをつゆ顧みざるは
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
一旦事あれば鼠糞そふん梁上りやうじやうよりちてだに消魂の種となる、自ら口惜しと思へどせんなし、源氏征討の宣旨せんじかうむりて、遥々はる/″\富士川迄押し寄せたる七万余騎の大軍が、水鳥の羽音に一矢いつしも射らで逃げ帰るとは
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
外は失礼だと思って、女房たちの計らいで南の端の座敷の席が設けられた。女房の宣旨せんじが応接に出て取り次ぐ言葉を待っていた。
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
頼朝追討よりともついとう宣旨せんじは、もう朝議で決定していた。義経の手に下るばかりになっている。ここでも、彼の心を少しでも知ってくれる者は一人もなかった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○さて時平が毒奏どくそうはやくあたりて、同月廿五日左降さがう宣旨せんじ下りて右□臣のしよくけづり、従二位はもとのごとく太宰権帥だざいごんのそつとし(文官)筑紫つくし左遷させんに定め玉へり。
その年は喪中のため即位の行事も取やめになったが、暮の二十四日、東の御方、建春門院けんしゅんもんいんの腹になる、後白河院の皇子に親王の宣旨せんじがあり、明けて、年号が変って仁安にんあんとなった。
二つの御座おましが上に設けられてあって、主人の院の御座が下がって作られてあったのを、宣旨せんじがあってお直させになった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この持明院統じみょういんとうきみは、さきに尊氏へたいして、尊氏がうた宣旨せんじを降下し、錦の旗をも与えていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更衣が宮中から輦車れんしゃで出てよい御許可の宣旨せんじを役人へお下しになったりあそばされても、また病室へお帰りになると今行くということをお許しにならない。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
小野維幹、紀淑人などは、いくたび宣旨せんじをいただいて、純友一類の海賊征討に、瀬戸内海を南下して行ったか知れないが、都人はただの一度も、凱旋軍を見たことはない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明石のような田舎に相当な乳母めのとがありえようとは思われないので、父帝の女房をしていた宣旨せんじという女の娘で父は宮内卿くないきょう宰相だった人であったが、母にも死に別れ
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あずまの方に久しくはべりて、ひたすら武士もののふの道にたずさわりつつ、征東将軍の宣旨せんじなど下されしも、思いのほかなるように覚えてはべりし——と仰せられて、お詠みになった歌
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帝の御愛寵あいちょうを裏切って情人を持った点をお憎みになったのであるが、赦免の宣旨せんじが出て宮中へまたはいることになっても、尚侍の心は源氏の恋しさに満たされていた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
宣旨せんじ一枚の料紙で足るようなおごりに酔っていた風であった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御禊ごけいの日に供奉ぐぶする大臣は定員のほかに特に宣旨せんじがあって源氏の右大将をも加えられた。物見車で出ようとする人たちは、その日を楽しみに思い晴れがましくも思っていた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)