大黒屋だいこくや)” の例文
なかがらすの障子しようじのうちには今樣いまやう按察あぜち後室こうしつ珠數じゆずをつまぐつて、かぶりの若紫わかむらさき立出たちいづるやとおもはるゝ、その一ツかまへが大黒屋だいこくやりようなり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どこの田舍ゐなかにもあるやうに、とうさんのむらでも家毎いへごと屋號やがうがありました。大黒屋だいこくや俵屋たはらや八幡屋やはたや和泉屋いづみや笹屋さゝや、それから扇屋あふぎやといふやうに。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
山の手の深い堀井戸の水を浴びようとかいうので、夏は水道の水の生温なまぬるきをかこつ下町の女たち二、三人づれで目黒の大黒屋だいこくやへ遊びに行く途中であった。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大黒屋だいこくやの番頭正次郎しょうじろうさんが殺されて、今日細川様へ納める五千両の大金が、けむのように消えてしまいましたぜ」
参考までに、うなぎ屋としての一流の店を挙げると、小満津こまつ竹葉亭ちくようてい大黒屋だいこくやなどがある。現代的なものに風流風雅を取り入れた、感じのよい店といえよう。
鰻の話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
とうさんのおうちんでくのもあれば、おとなり大黒屋だいこくやんでくのもあれば、そのまた一けんいておとなり八幡屋やはたやはうんでくのもあります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まれていでくるわかどむかうふより番頭新造ばんとうしんぞのおつまちてはなしながらるをれば、まがひも大黒屋だいこくや美登利みどりなれどもまこと頓馬とんまひつるごと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うつして夷歌いかによみつゞけぬるもそのかみ大黒屋だいこくやときこえしたかどのには母の六十の賀のむしろをひらきし事ありしも又天明てんめいのむかしなればせきぐちの紙のすきかへし目白の滝のいとのくりことになんありける
とうさんのおうちはうからますと、大黒屋だいこくや一段いちだんたか石垣いしがきうへにありまして、その石垣いしがきのすぐしたのところまでとうさんのおうち桑畠くはばたけつゞいてましたから
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
女子衆達をんなしゆたちにあと/\までうらやまれしも必竟ひつきやうあねさまの威光いくわうぞかし、寮住居りようずまいひと留守居るすいはしたりともあね大黒屋だいこくや大卷おほまき長吉風情ちやうきちふぜいけをるべきにもあらず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大黒屋だいこくやとか、八幡屋やわたやとか、その他いろいろな屋号のついた家々のこけむしたお墓が並んだわきを通って、すぎの枯れ葉の落ちているしめった土をふんで行くだけでも
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今三年の後に見たしと廓がへりの若者は申き、大黒屋だいこくや美登利みどりとて生國しやうこくは紀州、言葉のいさゝかなまれるも可愛く、第一は切れ離れよき氣象を喜ばぬ人なし、子供に似合ぬ銀貨入れの重きも道理
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今三年ののちに見たしとくるわがへりの若者は申き、大黒屋だいこくや美登利みどりとて生国せうこくは紀州、言葉のいささかなまれるも可愛かわゆく、第一は切れ離れよき気象を喜ばぬ人なし、子供に似合ぬ銀貨入れの重きも道理
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)