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おほをとこ
三十七
年の
正月二
日、
掘初として
余は
望玄二
子を
從へて
行つて
見ると、
這は
如何に、
掘りかけて
居た
穴の
附近に、
大男が六七
人居る。
然うして
枯萱を
刈つて
居る。
掛ければ三人は
只夢に夢見し心地にて
引立られつゝ行所に身の
丈六尺有餘の
大男黒羽二重の
小袖に黒八丈の羽織
朱鞘の
大小十手取繩を
腰に
提のさ/\と出來りしに小猿三吉は
腰を
裏長屋のあるじと
言ふのが
醫學生で、
内證で
怪い
脈を
取つたから、
白足袋を
用ゐる、その
薄汚れたのが、
片方、
然も
大男のだから
私の
足なんぞ
二つ
入る。
細君に
内證で、
左へ
穿いた——で
仲見世へ。
一人は
髮の二三
寸伸びた
頭を
剥き
出して、
足には
草履を
穿いてゐる。
今一人は
木の
皮で
編んだ
帽を
被つて、
足には
木履を
穿いてゐる。どちらも
痩せて
身すぼらしい
小男で、
豐干のやうな
大男ではない。