大枚たいまい)” の例文
いつだったかも、主人の金をられたお手代が、橋から飛ぼうとしているのを見て、大枚たいまい百両をつかましてやったようなお人だ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ただし願わくはスラリと大枚たいまいな高慢税を出してたのしみたい。廷珸や正賓のような者に誰しも関係したくは思うまい。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
追うように、金蓮を裏口から帰してしまうと、婆はさっそく、西門慶せいもんけいから当座の大枚たいまい銀子ぎんすを褒美に受けとった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どう致しまして。お嬢様、へえ、どうも御無沙汰を致しました、先日はまた大枚たいまいの頂戴物を致しまして」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
数多い応募原稿のうちで、一番長いのが千四百九十五語で、その作者は原稿料大枚たいまい五十仙を貰つた。
(この折半という所に値打がある。相手方も大枚たいまいのお金を支出するのだ)二度目からは同じ相手方を選ぶとも、新らしいくじいて見るとも、そこは各自の自由である。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一議いちぎおよばず、旦那だんな以爲然もつてしかりとしたが、何分なにぶん大枚たいまい代物しろものであるから、分別ふんべつ隨一ずゐいち手代てだいが、使つかひうけたまはる。と旦那だんな十分じふぶんねんれて、途中とちうよくをつけて、他人たにんにはゆびもさゝせるな。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大枚たいまい三百両の支度金したくきんまで投げ出して、いよいよ明日の晩は、お君を伊賀井家に乗込ませるときまった——昨夜ゆうべになって、肝心かんじんのお君は自分の家の裏口で、植木屋の女房のお滝は
わたしたちは平土間へはいって、上等のかべすを註文したので、観劇料と飲食料とを一切締めて二人分一円十六銭、出方でかた大枚たいまい二十銭の祝儀をやったのを合わせても一円三十六銭に過ぎない。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今頃いまごろはおおかた、どこぞお大名屋敷だいみょうやしきのおうまやで、きな勝負しょうぶをしてでござんしょうが、ふみ御覧ごらんなすった若旦那わかだんなが、まッことあたしからのおねがいとおおもいなされて、大枚たいまいのおたからをおくださいましたら
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
時次郎 大枚たいまい一両をくれるとよ。こんないい口は外にはねえ。
沓掛時次郎 三幕十場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「御奇特なことです。だれだれさんは、もうこの通り大枚たいまいの寄進につかれて居ります」
盗難 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「殺してたまるもんか、大枚たいまいのお金子かねだあね、なあお婆さん。おほほほほほ。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ましてこれが三両や五両ではない、この時代において大枚たいまい百両の金をひとから欺して取ろうなどとは、彼として思いもつかないことであった。栄之丞はたって辞退してその金を受取らなかった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
へへへへ。それはもう、二十両とか、三十金とかいう、大枚たいまいのお支度金を
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われ当世の道理はしらねど此様このような気に入らぬ金受取る事大嫌だいきらいなり、珠運様への百両はたしかに返したれど其人そのひとに礼もせぬ子爵からこの親爺おやじ大枚たいまいの礼もらう煎豆いりまめをまばらの歯でえと云わるゝより有難迷惑
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)