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大口
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おほぐち
ニヤ/\と
両の
頬を
暗くして、あの
三日月形の
大口を、
食反らして
結んだまゝ、
口元をひく/\と
舌の
赤う
飜るまで、
蠢めかせた
笑ひ
方で
盜むなどと云
卑劣の
武士にあらず是にても疑ひは
晴ぬかと云ふに久兵衞は
大口開て
打笑ひイヤサ
盜人たけ/″\しいとは
貴殿の事なり此品々を
先に
大口の
言込有りし貸付の
緩々急に取引迫りて、彼は
些の猶予も無く、自ら
野州塩原なる
畑下と云へる
温泉場に出向き、
其処に
清琴楼と呼べる湯宿に就きて
慓輕なる
武村兵曹は
大口開いてカラ/\と
笑ひ
肩を
聳て、
前脚をスクと
立てて、
耳が
其の
圓天井へ
屆くかとして、
嚇と
大口を
開けて、まがみは
遠く
黒板に
呼吸を
吐いた——
取れまいと云つゝ
故意と見せびらかし
併し
盜人の
隙はあれども
守人に
隙はなしとか云なりと
大口開て打笑ひ
其胴卷を
慳貪なる
男の
方形に
開く
大口なり
カチ/\と
歯の
鳴る
時、
鰐かと
思ふ
大口を
赫と
開いて、
上頤を
嘗める
舌が
赤い。
はてさて
迷惑な、こりや
目の
前で
黄色蛇の
旨煮か、
腹籠の
猿の
蒸焼か、
災難が
軽うても、
赤蛙の
干物を
大口にしやぶるであらうと、
潜と
見て
居ると、
片手に
椀を
持ちながら
掴出したのは
老沢庵。