大事おおごと)” の例文
「来たら、いうちょいておくれ——今日は、おれに取っての大事おおごとが起るかも知れん日じゃけ、気をつけといてくれ。——ちゅうて」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「これ、袂糞たもとぐそでも付けさんしょ」とお種は気をんで、「折角せっかく今日は髪まで結って、皆な面白く遊ぼうという日だに、指なぞを切っては大事おおごとだぞや」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これはなかなか大事おおごとでございます、マドロスさんとやらを奪い出したのは、この土地の村人の仕業しわざではございません。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうでないと大事おおごとになるから……それに早瀬の御主人もやはりそうらしいって、見るに見かねて、さし出がましいけれどもッて言っていらっしゃいましたよ。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「おい、子供こども、あっちへいってやれ、門燈もんとうをこわすと大事おおごとだ。ここはひとのとおるみちで、ボールをげてあそ場所ばしょでない。こんど、へいにあたるとゆるさないぞ。」
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんな大事おおごとになるようなら、矢張りっと虫を殺していれば宜かったと今更後悔しても取返しがつかない。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いや、どうも、近来にない大事おおごとがおっぱじまってしまって……。実は、藤堂和泉守さまの御息女の加代姫さまというのが、駕籠舁、中間こきまぜて束にして六人。
「マア此事件も大事おおごとにならずに済み相ですネ、犯人が、手拭が自宅の物だと自白はして居るし……」
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
「ああ、中洲の清元の。なるほどこいつあ大望だ、親の敵より大事おおごとに違えねえ、しかし飛んだ気になったぜ、愛、おめえありゃあ不可いけねえや、まるで組合が違ってらあ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「私も牧野さんに頼まれたから、一度は引き受けて見たようなものの、万一ばれた日にゃ大事おおごとだと、無事に神戸こうべへ上がるまでにゃ、随分これでも気をみましたぜ。」
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これは私としましては随分予定狂いの大事おおごとではありますが、といって何とも方法のない勢いとなって来ているので、到頭意を決してあとの片双の揮毫に着手することにした。
「ありゃ、あたしそっくりでね、毒はないんですよ。意地が悪いっていうよりゃ、気がかないってほうですし、それに、大事おおごとをしでかそうったって、ああ尻が重くっちゃ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
友達だった娘が行くことにきまったなどと、さも嬉しそうに誇らしげに告げると、二人は妙に後れちゃあ大事おおごとだという心持になって、こっそり納屋の蔭や、畑の隅で相談する。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「すりゃ大事おおごと、また宝暦のてつをふむことになろうも知れぬ……」右少将は色をかえた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「十日ばかり、ぱっとしない日が続いたねえ。お洗濯がたまって、大事おおごとだよ。」
俺に云わせれば君一人のために平安の都全体が鳴動するかもしれぬほどの大事おおごとはらんでいる。……それほどの一大事が、今、刻々と近付いて来つつある。何だか俺にはそんな気さえして来た。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
会話はぷつんと途切とぎれてしまった。帳場は二度の会見でこの野蛮人をどう取扱わねばならぬかを飲み込んだと思った。面と向ってらちのあく奴ではない。うっかり女房にでも愛想を見せれば大事おおごとになる。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いくら江戸時代でも、これだけ一度に死罪を出すのは大事おおごとです。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
長「大事おおごとですね、あなたが出て来たから、こんな事になります」
聯合組の内輪同士というても、請負師仲間には野心のある人が居るけ、油断がならん。組が解散にでもなったら、大きな大事おおごとじゃ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「これからが大事おおごとだ。真暗まっくらでかいもくわからん、いったい、紅葉山はドレで、西丸はどっちの方だ?」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「だッたの、なんのとおっしゃって、熱海中ひっくりかえるような大事おおごと、今にも十国峠が、崩れて来るか、湯の海になるかという、えらい事でござりました。貴女様あなたさま夫人おくさまは。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なるほど、そんなことでもありましょうか、こりゃ、いかにも大事おおごとだ。……でも、阿古十郎さん、あなた、あの都鳥を見ただけで、どうして、それだけのことを洞察みぬきました」
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「これがまた難物だテ。気でも違えられた日には大事おおごとだからネ。まあソロソロと耳に入れた。その為にああして長く伊東に置いて、なるべく是方こっちの話は聞かせないようにしたよ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
丁原の養子で、呂布りょふという人間です。五原郡ごげんぐん(内蒙古・五原市)の生れで、あざな奉先ほうせん、弓馬の達者で天下無双と聞えています。あんな奴にかまったら大事おおごとですよ。避けるにくはなし。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
打ち合わせて置かなかったから、新太郎君が長唄か何かの積りでいると大事おおごとだ。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
訴えられでも仕様ものなら大事おおごとになる危い金まで使って、村長に成ろうとか何とか騒ぎたてて、揚句のはてに来たものは前よりも多い借金の証文と悪口であるだけでもむしゃくしゃするのに
お久美さんと其の周囲 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
主人「それが間違うと大事おおごとになるぞよ」
大事おおごとにならなければいいが。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さあ、大事おおごと
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今度のこと、玉井さんやあんただちにとっても、大事おおごとじゃったことはようわかっとるが、……これが、おれの方にも、こたえた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
しかし、お角は、この騒ぎは、甲府の一蓮寺の時のように、大事おおごとにはならないと見て取りました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「直ぐ側の電車や自動車が一町も先に見えたりすると大事おおごとでございますよ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もとより一室ひとまを借受けて、逗留とうりゅうをしておったが、かほどのなやみ大事おおごとじゃ、血も大分だいぶんに出さねばならぬ、ことに子供、手をおろすには体に精分をつけてからと、まず一日に三ツずつ鶏卵たまごを飲まして
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なるほど、お米様やわっしが、三位卿様に見つかっては、その場合よろしくないとおっしゃいますので、ごもっともです、あのお公卿くげ様からまた殿様へでもしゃべられた日には大事おおごとですからね」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど、それは大事おおごとだな」
川波 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「しかしそれは危険ですよ。苦痛は矢張り不快感のところに価値があるんです。中性だったら例えば怪我をした場合、腕が一本取れても気がつきますまい。痛いから大事おおごとにならなくて済むのです」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あの調子ではまた何かにぶつかって大事おおごとき起さねばよいが
「何しろ大事おおごとになったもんです」と、もったいをつけた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そいつあ、大事おおごとだ。ど、どうしよう」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そいつはなかなか大事おおごとだった……」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そ、そいつア大事おおごとだ!」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)