夕立ゆふだち)” の例文
下谷したや團子坂だんござか出店でみせなり。なつ屋根やねうへはしらて、むしろきてきやくせうず。時々とき/″\夕立ゆふだち蕎麥そばさらはる、とおまけをはねば不思議ふしぎにならず。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
王子わうじ街道かいだう横切よこぎつて、いよ/\深大寺じんだいじちかつたのが、午後ごゞの五ぎ。夕立ゆふだちでもるか、そらは一ぱいくもつてた。
おくりける或日兩國邊よりかへ途中とちうにはか夕立ゆふだち降來ふりきたはたゝがみ夥多敷おびたゞしく鳴渡なりわたれども雨具あまぐなければ馬喰町の馬場のわき出格子でがうしの有る家を幸ひに軒下のきした立停たちどまり我がたくも早二三町なれども歸ることかなはあめぬれて居るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夕立ゆふだち出會であつたときの樹陰位こかげぐらゐやくつとめるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さかんなるかな炎暑えんしよいろ蜘蛛くもまぼろしは、かへつ鄙下ひなさが蚊帳かやしのぎ、青簾あをすだれなかなる黒猫くろねこも、兒女じぢよ掌中しやうちうのものならず、ひげ蚊柱かばしら號令がうれいして、夕立ゆふだちくもばむとす。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白菊しらぎくころ大屋根おほやねて、棟瓦むねがはらをひらりとまたいで、たかく、たかく、くもしろきが、かすかうごいて、瑠璃色るりいろ澄渡すみわたつたそらあふときは、あの、夕立ゆふだち思出おもひだす……そして
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)