四谷見附よつやみつけ)” の例文
私は四谷見附よつやみつけを出てから迂曲うきょくした外濠のつつみの、丁度その曲角まがりかどになっている本村町ほんむらちょうの坂上に立って、次第に地勢の低くなり行くにつれ
爾時そのときであつた。あの四谷見附よつやみつけやぐらは、まどをはめたやうな兩眼りやうがんみひらいて、てんちうする、素裸すはだかかたちへんじた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二つ一緒だと、百円くらいには売れるかも知れない。外は、ひどい霧だった。四谷見附よつやみつけまで来たら、しらじらと夜が明けはじめた。省線に乗った。横浜。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのまま、この知人と別れて、同じ人混みをズンズンと四谷見附よつやみつけの方へ流れていったのだった。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あるやまの従兄の家には僕の血を分けた従姉いとこが一人僕を待ち暮らしているはずだった。僕はごみごみした町の中をやっと四谷見附よつやみつけの停留所へ出、満員の電車に乗ることにした。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
四月二日 吉右衛門四谷見附よつやみつけ新居句会。
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
矢筈草はちよつと見たる時その葉よもぎに似たり。覆盆子いちごの如くそのくきつるのやうに延びてはびこる。四谷見附よつやみつけより赤坂喰違あかさかくいちがいの土手に沢山あり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
が、くまでの激震げきしんに、四谷見附よつやみつけの、たかい、あの、頂邊てつぺんきてひとがあらうとはおもはれない。わたしたちは、くもそこで、てん摺半鐘すりばんつ、とおもつて戰慄せんりつした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
故々わざ/\ふまでもないが、さかうへ一方いつぱう二七にしちとほりで、一方いつぱうひろまち四谷見附よつやみつけける。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
半蔵門はんぞうもんを過ぎて四谷見附よつやみつけに来かかる時まで、矢田はさすがにおとなしく、連れではないような風をして口もきかずにいたが、君江が春代を残して一人車から降りかけるのを見るや否や
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ほとんど、五分ごふん六分ろつぷんきに搖返ゆりかへ地震ぢしんおそれ、またけ、はかなく燒出やけだされた人々ひと/″\などが、おもひおもひに、急難きふなん危厄きやくげのびた、四谷見附よつやみつけそと、新公園しんこうゑん内外うちそと幾千萬いくせんまん群集ぐんしふ
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うらは、すぐ四谷見附よつやみつけやぐら見透みとほすのだが、とほひろいあたりは、まぶしいのと、樹木じゆもく薄霧うすぎりかゝつたのにまぎれて、およそ、どのくらゐまでぶか、すか、そのほどははかられない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)