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善美
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ぜんび
後世地上に
來るべき
善美なる
生活のこと、
自分をして一
分毎にも
壓制者の
殘忍、
愚鈍を
憤らしむる
所の、
窓の
鐵格子のことなどである。
(
否とよ。牢獄の闇にも、陽は
映したではないか。正大な天道の下には、この世ほど
潔く気高い所はなく、人間程
崇厳善美なものはないのだ)
君御用の
品なれば
費用は
構はず
急ぎ
造りて
參らすべしと
命じてより
七日を
經て
出來しけるを、
御居室の
縁に
舁据ゑたるが、
善美を
盡して、
眼を
驚かすばかりなりけり。
然らば
善美とは
何であるかと
反問するであらう。
夫は
食に
關して
述べた
所と
同工異曲で、
建築に
當てはめて
云へば、
善とは
科學的條件の
具足で
美とは
藝術的條件の
具足である。
以て
彌々明十日大坂表御出立明後十一日京都御着の思召なれば
其用意有べしと
認め送れり頃は享保十一丙午年六月十日の
早天に大坂
渡邊橋の旅館を出立す
其行列以前に倍して
行粧善美を
後世地上に
来るべき
善美なる
生活のこと、
自分をして一
分毎にも
圧制者の
残忍、
愚鈍を
憤らしむる
所の、
窓の
鉄格子のことなどである。
夫れよりは「
精々うまい
物を
適度に
食へ」と
云ふのが
最も
簡單で
要領を
得た
標語である。
建築殊に
住家でも、
正にこの
通りで、「
精々善美なる
建築を
造れ」と
云ふのが
最後の
結論である。