十年じふねん)” の例文
おやおやとの許嫁いひなづけでも、十年じふねんちか雙方さうはう不沙汰ぶさたると、一寸ちよつと樣子やうすわかかねる。いはん叔父をぢをひとで腰掛こしかけた團子屋だんごやであるから、本郷ほんがうんで藤村ふぢむら買物かひものをするやうなわけにはゆかぬ。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をんなせまいもの、つとつては一時いつとき十年じふねんのやうにおもはれるであらうを、おまへおこたりをわしせゐられてうらまれてもとくかぬことよる格別かくべつようし、はやつていてるがよからう
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その叔父をぢ十年じふねんばかりまへ、七十一で故人こじんになつたが、ほその以前いぜん……こめりやう六升ろくしようでさへ、なかさわがしいとつた、諸物價しよぶつかやすとき月末げつまつ豆府屋とうふやはらひ七圓なゝゑんした。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし上手じやうず名曲めいきよくいたとおなじに、十年じふねん十五年じふごねんいまわすれないからである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「むきがに。」「殼附からつき。」などと銀座ぎんざのはちまきうまがるどころか、ヤタいちでも越前蟹ゑちぜんがに大蟹おほがに)をあつらへる……わづか十年じふねんばかりまへまでは、曾席くわいせきぜんうや/\しくはかまつきで罷出まかりでたのを、いまかられば、うそのやうだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)