出所でどころ)” の例文
すでにお延の方をあきらめなければならないとすると、津田は自分に必要な知識の出所でどころを、小林に向って求めるよりほかに仕方がなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今や、事件の焦点は脱脂綿の出所でどころにあつめられた。みどりの用意していた綿の外に、どこからか星尾が持って来た毒物の附着した綿があるのである。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
必死の訴えを、途中で折られたので、わしの呼吸は肋骨あばらのうちで、出所でどころを失ったようにあえぎ廻った。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういうふうな神妙な聴衆に接してみると、道庵とても、脱線の虫の出所でどころを失ってしまいます。いやでも、やはり神妙な講演ぶりをつづけなければならないことです。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その女が花に負けて、一時の融通に質屋へ預けてあったのを、今度厭気がさして、質ので売るのだということを、小原は繰り返して、出所でどころの正しいことを証明した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
運はさいの眼の出所でどころ分らぬ者にてお辰の叔父おじぶんなげのしち諢名あだな取りし蕩楽者どうらくもの、男はけれど根性図太くたれにも彼にもうとまれて大の字に寝たとて一坪には足らぬ小さき身を
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかるに武士道と三ツ並べた熟字は一般に用いられなかった。僕は度々この文字の出所でどころを尋ねられたけれども、実は始めて用いた時分には何の先例にもった訳ではなかった。
平民道 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
申候是全く不正の金子ゆゑ出所でどころさだかに云聞いひきけざる事にて手證てしようは見屆ず候へ共是等の儀共思ひあはすれば全く文右衞門百兩の盜賊に相違なしと存じ奉つり候依て右十三兩餘質物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
例のかつらに着眼して、その出所でどころがどうやら、浅草附近らしく思われたので、その辺の鬘師を探し廻った結果、千束町せんぞくちょう松居まついという鬘屋で、とうとうそれらしいのを捜し当てたのだが
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「田代屋一家の騒ぎは大した事ではないが、私にはその毒薬の出所でどころの方が心配だ」
此の金の出所でどころを調べておくれ、イエサ、未だ二十二や三になるものに、百両という大金を自由にされるような事は有るまい、お前へ店を預けて置くのに、またこれがどう云う融通をして
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これを職業にしていた者の出所でどころも、また習慣もおそらくは別であったろう。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
兇器の出所でどころ、買手、及びそれがその場に在った理由は明かにされた。
夢の殺人 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
はるかに高い出所でどころを有せなくてはならんのです。
けれどこの噂は出所でどころが分らずにしまった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
「投書の出所でどころはわからないか」
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いずれにしてもこの小切手の出所でどころについて、夫婦の間に夫婦らしい気脈が通じているという事実を、お秀に見せればそれで足りたのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
脱脂綿と毒物の出所でどころについて自白を迫ったのであったが、彼は中々思うようにしゃべらなかった。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
盜賊におとし未だ遣ひ殘りの金もあらばせしめてくれんと忽ちに惡意あくいおこし丁度此日質の流れを賣たる百兩と云金が見世にあるゆゑ是を取隱とりかくおき早々文右衞門の方へ行て金の出所でどころ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのお金の出所でどころを人から問われるようなことがありましても、七兵衛の手から出たということは、決しておっしゃらないように……それと、もう一つは、先日申し上げました通り
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
必定ひつじょう、領土がえが行われて、この坂本四郡は、やがて蘭丸へ下される思し召しであろうなどという風説の出所でどころも、軍令状の表に示された格下げの御意志を、みなが敏感に読みとって
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縫「左様でございましょうが、出所でどころが知れているものですから」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これまでは出所でどころい、時代のあるのが
あの力の出所でどころはとうてい分らない。しかしこの時は一度に出ないで、少しずつ、腕と腹と足へ煮染にじみ出すように来たから、自分でも、ちゃんと自覚していた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まぎれもなく、出所でどころのいぶかしい伊太利珊瑚イタリヤさんごを、四ツ目屋へ売りにきた頭巾ずきんの娘。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、それの出所でどころを確かめるキーは、どこにも見当らなかった。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
申立るゆゑ越前守殿コリヤ久兵衞其金子は市之丞より持參ぢさんなりと申ではないか今にも市之丞の在家ありかさへ知れなば金子の出所でどころたしかに知れるぞ汝が云所は無證據なり證據なき事は公儀かみに於ては御取上にはならず殊に又汝が内々ない/\詮議せんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは、一種異様なお金の出所でどころだ。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの投書の出所でどころを捜して制裁を加えるの、自分の雑誌で十分反駁はんばくをいたしますのと、善後策の了見でくだらない事をいろいろ言うが、そんな手数てかずをするならば
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兄妹きょうだいの間に「あの事」として通用する事件は、なるべく聴くまいと用心しても、月末つきずえの仕払や病院の入費の出所でどころに多大の利害を感じない訳に行かなかった津田は
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は自分の新たに受取ったものを洋服の内隠袋うちかくしから出して封筒のまま畳の上へ放り出した。黙ってそれを取り上げた細君は裏を見て、すぐその紙幣の出所でどころを知った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三沢はすべてこういう内幕うちまく出所でどころをみんな彼の看護婦に帰して、ことごとく彼女から聞いたように説明した。けれども自分は少しそこに疑わしい点を認めないでもなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分はその不安の出所でどころが兄にあるのか、または嫂と自分にあるか、ちょっと判断に苦しんだ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いやそうでないぞ。近頃だいぶ修飾しゃれるところをもって見ると。ことにさっきの巻煙草入の出所でどころなどははなはだ疑わしい。そう云えばこの煙草も何となく妙なにおいがするわい」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
芋をもってみずからおるものでなければ、謎の女に近づいてはならぬ。謎の女は金剛石ダイヤモンドのようなものである。いやに光る。そしてその光りの出所でどころが分らぬ。右から見ると左に光る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その切なさの余り、別に分別の出所でどころもないから監督と名のつく先生のところへ出向いたら、どうか助けてくれるだろうと思って、いやな人のうちへ大きな頭を下げにまかり越したのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この質問を掛けたものは、自分から一番近い所に坐っていたから、声の出所でどころ判然はっきり分った。浅黄色あさぎいろ手拭染てぬぐいじみた三尺帯を腰骨の上へ引き廻して、後向うしろむきの胡坐あぐらのまま、はすに顔だけこっちへ見せている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)