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其先
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そのさき
細君は
立て
切つた
障子を
半分ばかり
開けて、
敷居の
外へ
長い
物指を
出して、
其先で
近の
字を
縁側へ
書いて
見せて
襖を
開放した
茶の
間から、
其先の四
畳半の
壁際に
真新しい
総桐の
箪笥が一
棹見える。
尋ねて
見い、と
眞先に
促進めたも
戀なれば、
智慧を
借したも
戀、
目を
借したも
戀、
予は
舵取ではないけれども、
此樣な
貨を
得ようためなら、千
里萬
里の
荒海の、
其先の
濱へでも
冐險しよう。
逃れたのは嬉しいが、
扨其先に
種々の困難が
横わっていた。
路は
屡々記す通りの
難所である、
加之も
細雨ふる
暗夜である。
不知案内の女が暗夜に
此の難所を越えて、
恙なく里へ出られるであろうか。
『
其先は、それ』と
帽子屋が
續けて、『こんな
風だ、—— ...
文庫の
中から
洩れた、
手紙や
書付類が、
其所いらに
遠慮なく
散らばつてゐる
中に、
比較的長い一
通がわざ/\二
尺許廣げられて、
其先が
紙屑の
如く
丸めてあつた。
さうして
其中へ
細長い
針の
樣なものを
刺し
通しては、
其先を
嗅いでゐたが、
仕舞に
糸程な
筋を
引き
出して、
神經が
是丈取れましたと
云ひながら、それを
宗助に
見せて
呉れた。