入道にゅうどう)” の例文
で伊那丸も、さまざまな疑惑ぎわくに胸をつつまれながら、ひとみをそらして、こんどはきっと、入道にゅうどうの顔をにらみつけた。——梅雪ばいせつもまけずに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
可愛らしい鼓村は、大きな、入道にゅうどうのような体で恐縮し、間違えると子供が石盤せきばんの字を消すように、箏のいとの上をてのひらき消すようにする。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ちょうにん、ちょうにん、ちょうじゅうろう、まんまる入道にゅうどう、ひら入道にゅうどう、せいたか入道にゅうどう、へいがのこ、いっちょうぎりの、ちょうぎりの。」
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
よく見ると、そいつの頭は、タコ入道にゅうどうのように、でっかくて、かみの毛なんか、一本もはえていません。その顔に、ギョロッとした、まんまるな目が、二つついているのです。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三歳の頃に描いた襖画ふすまえが今でも川越の家に残ってるそうだが、どんな田舎の百姓家にしろ、襖画を描くというはヘマムシ入道にゅうどうや「へへののもへじ」の凸坊でこぼうの自由画でなかった事は想像される。
そのそばには、いつものたこ入道にゅうどうが、ひげのはえたくちけて、さもちほこるようにわらいながら、あかしたしている。またからも一筋ひとすじいとのようにいて、少年しょうねん死骸しがい見下みおろしている。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
この方は大事なお客様、わたしがお送りして、今お帰し申すところ——それより、奥に、釣竿をかついだ変な入道にゅうどうが飛び出して、先生と斬り合いになろうとしています。皆さん、早く行ってみて下さい。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いやさ、入道にゅうどう道三の一族ででもあらうかと言ふ事ぢや。」
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
入道にゅうどうの形に沈んでゆくのに眺め入った。
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
「おお、入道にゅうどうよ。ようぞ見えられた」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
秋風や壁のへマムシヨ入道にゅうどう
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おい。へまむし入道にゅうどう
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
つやつやしい入道にゅうどうあたまながら、よろいはずした腹巻だけの華美な武将いでたちで、こがね作りの太刀を横におき
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとそのときはるかしもほうからたこの入道にゅうどうが八本足ほんあしでにょろにょろ出てきて、おそるおそる
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
清盛は晩年に出家して入道にゅうどうとなっている。一般の先入主では、平太へいた清盛だの、大弐だいに清盛だの、参議清盛などと時代別に呼ばれるよりも浄海入道じょうかいにゅうどうのほうが通りがいい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとうとほうは、「まんまる入道にゅうどう、ひら入道にゅうどう、せいたか入道にゅうどう、へいがのこ、いっちょうぎりの、ちょうぎりの。」をやっているうちに、くたびれてしまって、おとうさんも小言こごとをいうのが
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして今、二人の髪の端だけを切らせ、筑前のと添えて、お位牌いはいの前に供えて参ったが、おかげでこの暑さにも、頭だけは涼しくなった。はははは。入道にゅうどうとは涼しいものよな
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとどうでしょう、中を目のくらむような金銀きんぎんさんごとおもいのほか小僧こぞうだの、ひと小僧こぞうだの、がま入道にゅうどうだの、いろいろなおけがにょろにょろ、にょろにょろして
舌切りすずめ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「む……」入道にゅうどうはじッと郷士ごうしおもてをみつめて、しばらくその大胆だいたんりにあきれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まんまる入道にゅうどう、ひら入道にゅうどう、せいたか入道にゅうどう、へいがのこ、いっちょうぎりの、ちょうぎりの、ちょうのちょうのちょうぎりの、あの山の、この山の、そのまたこうのあの山えて、この山えて
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「やがては、入道にゅうどうして、山林の一庵にでもこもりたい気でおられるのではないか」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高時のことばに、彼が、はっと進みかけると、二階堂にかいどう出羽でわ入道にゅうどう道蘊どううん
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
脇屋ノ二郎義助以下、大館宗氏、堀口貞満、同行義、岩松経家、里見義胤さとみよしたね、江田行義、篠塚伊賀守、瓜生保うりゅうたもつ綿打わたうち入道にゅうどう義昭ぎしょう、世良田兵庫助、田中氏政、山名忠家、額田為綱ぬかだためつな、等、等、等……
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どれ」と、入道にゅうどうはそれを受けとり、馬上で扇面せんめんの文字を読みはんじて——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて江田行義、篠塚伊賀守、綿打わたうち入道にゅうどう義昭ぎしょうらの三隊が、川へ先陣を切ってゆくと、がぜん、対岸から猛烈な弓鳴ゆなりがおこった。およそ相手が渡渉としょうして来そうな浅瀬は敵もよく見ていたのである。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)