人間業にんげんわざ)” の例文
「どうも人間業にんげんわざでは癒るまいよ。それがために世間のことは一向わからぬ、近藤や土方は無事でいるか、芹沢との折合いはどうじゃ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おう、いつぞやは、眼ざましいお働き、人間業にんげんわざとも思われなかった。しかも、さしたるお怪我もなかったそうな。……祝着しゅうちゃくの至りです」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ、折角せっかくの抜け道を発見しながらも、人間業にんげんわざでは到底これを登り切ることはできないのか。いや、何事も慌ててはいけない!
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とも角、何はいても私は室長に馬鹿にされるのがつらかつた。どうかして、とて人間業にんげんわざでは出来ないことをしても、取り入つて可愛がられたかつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
今度こんどのことは、このくにがあってから、はじめてのことだ。人間業にんげんわざでは、どうすることもできないことだ。」
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
峠から見る、霧の下だの、やみ浪打際なみうちぎわ、ぼうとあかりうつところだの、かように山の腹を向うへ越したの裏などで、聞きますのは、おかしく人間業にんげんわざでないようだ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この驚くべき天才の奔騰ほんとうは、五十一曲の歌劇の創作となった。これこそ人間業にんげんわざ以上の仕事である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
兄の蘿月らげつに依頼しては見たものゝ矢張やつぱり安心が出来できない。なにも昔の道楽者だうらくものだからとわけではない。長吉ちやうきちこゝろざしを立てさせるのは到底たうてい人間業にんげんわざではおよばぬ事、神仏かみほとけの力に頼らねばならぬと思ひ出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けれどその影の敏捷びんせふなる、とても人間業にんげんわざとは思はれぬばかりに、走寄る自分のそでの下をすり抜けて、電光いなづまの如く傍の森の中に身をかくして了つた。跡には石油をそゝいだ材料に火が移つてさかんに燃え出した。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「さあ、それが分かれば、みんな分かるんだが、何者の仕業か見当がつかない。しかし人間業にんげんわざとは思われないね」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大雨を降らすも、炎日のつづくも、すべて自然の現象で、人間業にんげんわざで左右されるものではない。汝ら諸民の上に立つ武将たり市尹しいんたりしながら、なんたる醜状か。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「医者なんという者はあてにならねえ、人の病気なんぞは人間業にんげんわざなおせるものでえ」と言って、自分で自分を軽蔑けいべつしたようなことを言うから変り者にされてしまいます。
「これは災難さいなんというものだ。人間業にんげんわざでは、どうすることもできないことだ。」
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
御神輿おみこしきたいはうき、めぐりたいはうへめぐる。ほとん人間業にんげんわざではない。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私も少しは槍の心得があるが、人間業にんげんわざでそんなことは出来るものでない
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
兄の蘿月に依頼しては見たもののやっぱり安心が出来ない。なにも昔の道楽者だからという訳ではない。長吉に志を立てさせるのは到底人間業にんげんわざではおよばぬ事、神仏かみほとけの力に頼らねばならぬと思い出した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
見ると、驚いたことに例の二人の怪人が、機関車の前に立って後へ押しかえしているのです。なんという恐ろしい力でしょう。それは到底とうてい人間業にんげんわざとは思われません。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そんな人間業にんげんわざでない力が出るのかも知れないが、とにかく、その飛び出しそうな武者修行の眼が自分の方を見つめて這い進んで来たので、又八は腰がすくんでしまった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「心配することはない、ずいぶん世間には足のはやい奴があるものだ、人間業にんげんわざとは思えないほどに迅い奴があるものだ、そういう奴が、よく山道の夜歩きなぞをしたがる」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは、まったく人間業にんげんわざとはおもわれないほど上手じょうずでありました。
海と少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
岩の上を走っていって、竹蜻蛉たけとんぼのようにきりきり廻った。と、その姿が急に見えなくなった。これは児玉法学士が見たのですから間違いなしです。これも人間業にんげんわざではありません
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それは近頃お勇ましいお申し出でござるが、御覧の通り、あれは人間業にんげんわざでない奴、うっかり近づくよりは遠巻きに致して疲れを待つ方が得策でござる、捨てておかっしゃい」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まさか城内の者が深夜あのような異装を作って徘徊いたすはずもなし、そうかと申して、要害無双ようがいむそうなこの千代田城のあの幾重いくえほりや石垣や諸門を越えて入り込むことは人間業にんげんわざではできないことじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間業にんげんわざでこの火を防ぐはあの護摩壇の法力ほうりきあるばかりだと、そこへ気がついた各村の総代は、打揃って裸になって水垢離みずごりをとって、かの護摩壇の修験者へ行って鎮火の御祈祷を頼むと、修験者は
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは人間業にんげんわざとはおもわれない。一体彼は何者であろうか。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これが人間業にんげんわざかとおどろかれるような巨城きょじょう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)