ふたつ)” の例文
また顏の下よりはかゝる鳥ににつかしきふたつの大いなる翼いでたり、げにかく大いなるものをば我未だ海の帆にも見ず 四六—四八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「又左どの。——御辺と筑州とは、若年からの、ふたつなき別懇べっこん。戦いかくなるからは、この匠作に義理遠慮ははやり申さぬ。御分別よろしくあれや」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まア!」と言って妻は真蒼まっさおになった。自分は狼狽あわてふたつの抽斗をき放って中を一々あらためたけれど無いものは無い。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
やがて洗ッて持ッて来る、茶を入れる、サアそれからが今日聞いて来た歌曲のうわさで、母子おやこふたつの口が結ばる暇なし。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
神の作物たる聖書と天然、このふたつを学びて初めて神を知り得、また益々ますます深く彼を知り得るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
突きコリヤ歩かれぬとわめくを車夫二人手を取り跡押あとおしせし車夫の女房ふたつ提灯てうちんを左右の手に持ち瀧のほとりに指上げたり瀧は高きにあらねど昨日きのふ今日けふの雨に水勢を増しさながら大河を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
さてお話はふたつに分れまして、水司又市は恋の遺恨で中根善之進を討って立退たちのきました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分も拝借をしておりましたし、まだふたつばかり据えてありました陶器やきものの床几しょうぎを進めると、悪く辞退もしないでしずかに腰をかけたんですが、もみじの中にその姿で、いかにも品がい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前が自分で欺されたのかくば吾々を欺して居るのだ必ず其ふたつひとつだ巡
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
時にたまたま天の神ありて突然にわかに棄老の王宮にくだり、国王ならびに諸臣にむかひて、手に持てるふたつへびを殿上に置き、見よ見よなんじら、汝らこの蛇のいづれかにしていづれかなるを別ち得るや
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
喫しおわりし時お登和嬢がふたつの小皿を持て出で来りぬ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
殘りの二者ふたり之を見て齊しくさけびて、あゝアーニエルよ、かくも變るか、見よ汝ははやふたつにも一にもあらずといふ 六七—六九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
◯次にまたエホバはふたつの動物を挙げてヨブに教うる所があった(十五節以下)。まずずるは河馬である(十五節より二十四節まで)。次に出ずるは鰐である(四十一章全部)。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
このふたつえらぶ上に就いて更に又苦しんだけれど、いずれとも決心することが出来ない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
世評は何といおうと、謙信自身にとっては、絶対な道とふたつなき戦法を以てしたことは快戦だったにちがいない。要するに、彼の国防も、彼の進撃も、帰するところの信念はひとつ
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これふたつの小さき焔のこゝにおかるゝをみしによりてなり、又ほかひとつ之と相圖を合せしありしも距離あはひ大なれば我等よく認むるをえざりき 四—六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ここの上杉殿では、御一家みなで可愛がって下さいますし、琵琶の道に入っては、都でふたつとなきお師にお教えいただいておりまする。道についた以上、覚一はきっと名人になってみせます。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また知るべし、ふたつ區劃しきりすぢなかばにてきだより下にある者は、己が功徳によりてかしこに坐するにあらず 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
右なるは、聖なる寺院の古の父、このづべき花のふたつかぎをクリストよりゆだねられし者なり 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その長き鬚には白き毛まじり、ふたつのふさをなして胸に垂れし髮に似たり 三四—三六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)