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事變
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じへん
片手で、
尚ほつよく、しかと
婦人の
手を
取つたまゝ、その
上、
腰で
椅子を
摺寄せて、
正面をしやんと
切つて、
曰く
此時、
神色自若たりき、としてあるのは、
英雄が
事變に
處して、
然るよりも
二
本目を
吸ひつけた
時、
彼は
不安の
念を
禁じ
得ないのであつた。……
不思議な
伴侶である。
姿に
色を
凝らした、
朦朧とした
女の
抱合つた
影は、
汽車に
事變のあるべき
前兆ではないのであらうか。
海上に
起る千
差萬別の
事變をば一も
見遁すまじき
筈の
其見張番は
今や
何をか
爲すと
見廻はすと、
此時右舷の
當番水夫は
木像の
如く
船首の
方に
向つたまゝ、
今の
微な
砲聲は
耳にも
入らぬ
樣子